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プレセント

一年がたった。

俺は高校受験をひかえ、それなりに忙しい毎日を送っていた。

クリスマスは例年通りに家で過ごす。

父さんは仕事で夜になったら母さんの作った手料理を家族で食べる。

そんな一日。


あれから一年、菜々穂さんの話題はでない。

俺も聞こうとはしなかった。


夕飯も食べ終わり、勉強をするからと言って俺は部屋に戻った。


しばらくたち部屋のドアがノックされた。


「ハルキ。」


返事をまたずに扉が開けられた。責めることもできたが俺はそれをしなかった。

入ってきた父さんの顔が覚悟を決めたものだったから。


「これ、クリスマスプレゼント。」


そう言って差し出されたのはカバーがかかった本だった。

新しくはない、むしろ古いその本を俺は受け取る。


「ありがとう。」


何も聞かない俺に父さんは少し安堵した表情を見せた。


「先に風呂入れ。あと、あんまり無理するなよ。」


俺は返事をし、父さんが部屋を出て行くのを眺めた。

扉が閉まり、俺は机に向かい父さんからもらった本を見た。

古くて、おせいじにもキレイとは言えない本。

でも大事にされていたのだとわかる。

父さんの顔でわかった。

この本が菜々穂さんにつながると。

俺はゆっくり本の表紙をめくった。

白紙の中表紙をめくり題名が現われる。


『セツナイキモチ』


目線を下にやるとある文字が俺の目に飛び込んだ。


一条ハルキ


俺は息をのんだ…


俺と同じ名前…

心臓が大きく跳ねるのを感じる。

次のページを震える手でゆっくりめくる。

するとそこには


『これを最初に見る愛しい君へ』


ワープロ文字なのにどこか優しくセツナイ気持ちがうかがえた。


一瞬俺の脳裏に一つの仮説があらわれた。


もしかしてこれを書いたのは父さんじゃないのか…?

父さんが菜々穂さんに送ったものなのではないか…


と。


俺は少し迷ったがページをめくり文字をたどった。



あいつは猫みたいだ。



そこには幼馴染みに恋をしている男の話が書かれていた。

幼稚園の頃に幼馴染みの女の子がいじめっこにクマの髪ゴムをとられたこと。

とりかえしたけどボロボロで、誕生日にクマの髪ゴムをあげたこと。

2人の誕生日が2日違いのことから真ん中をお互いの誕生日として祝うようになったこと。

毎年クマの何かをあげるために苦心したこと。

好きだと自覚したこと。

そして…


彼女が苦しい恋をしていることに気付いたこと。

男としてみられたいと想う気持ちと幼馴染みの位置を捨てれないことの葛藤。


ガキの俺がその感情を本当にわかるにはまだ時間がいった。

でもなんとなく寂しくセツナイ思いになった。


これが父さんからのメッセージだということを忘れ俺は本の中に引きずり込まれた。


『直接言えない俺をお前は怒るかな?


でも言わせて

俺の気持ちを』


俺は最後のページを見て、父さんがこの本を渡した理由がなんとなくわかった。


『俺はお前が好きだよ、菜々穂』


そのページにまあるいシミがあった。

ここに書かれている菜々穂は、俺の知っている菜々穂さんなんだと確信をもてた。

これは父さんが書いたものじゃない、つじつまが合わなすぎる。

じゃあ、この一条ハルキという人は誰だろう…?

こんな告白をしたのなら、今2人はどうなっているのだろう…?




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