出会い
彼女と初めて会ったのは俺がまだ小学生のとき。
父親と2人で買い物をしているときに出会った。
「菜々穂…?」
楽しく俺と話していた父親が彼女をみて驚いた顔で呟いた。
父親の呟きを聞いた彼女はゆっくりと振り返り、父親と同じように驚いた顔を見せ笑った。
「久し振りですね、長塚さん。」
「…ああ、元気か?」
少し笑顔になって父親が言う。
彼女は寂しそうに笑いうなずいた。
なんとなく、置いてきぼりにされた気がして、俺は父親の手を引っ張った。それに気付いた父親
は俺を前に出し、彼女に紹介する。
「俺の息子、ハルキ。」
そのときの彼女の顔はいまだに忘れられない。
驚いたような、嬉しいような、寂しいような…
そんな複雑な表情だった。
彼女はしゃがみ目線を俺に合わして笑顔を見せた。
「初めまして、ハルキ君。」
そう言って優しく俺の頭をなでた。
「こんにちは…」
優しく微笑む彼女。
母親とは違う良い匂いがして俺は顔が赤くなる
彼女はもう一度微笑み、立ち上がり父親に笑ってさよならと言う。
父親は引き止めようとしたのか、口を開いたがなにも言わずにおれを見た。
「帰るか。」
ちょっと寂しそうな顔をみせ、父親は俺に言った。俺は何も言わずにうなずき、手をつないだまま、俺たちは母親のまつ家に帰った。
その後も父親と何度かその店に行ったが、彼女と会うことはなかった。
俺の記憶はどんどん薄れていったが、何故か店に行くと漠然と彼女を思い出していた。