ー入学式、授紋の儀ー
539年春 王都ルミナスに到着したクローバーたちは国内最大の士官学校『ルミナ学院』に入学した。
入学式は学院中央の大講堂で行われた。
高い天井には光を象ったステンドグラスが輝き、床には無数の紋章が円環を描くように刻まれている。
学院長の老司教が壇に立ち、重々しく宣言した。
「――これより、今年度の新入生に“学院紋”の授与を行う。」
新入生たちは緊張した面持ちで壇へ呼ばれる。
学院紋とは、入学後の成績や試験によって授けられる“光の資格”。
七つの紋が存在し、与えられる紋によって将来の階級や運命がほぼ決まる。
『太陽紋』
『蒼月紋』
『白百合紋』
『双翼紋』
『剣星紋』
『灯火紋』
そして稀に現れる 異端紋・四葉紋
クローバーは胸がざわつくのを感じた。
この“異端紋”が、自分の運命を狂わせることになるのだろうか。
ーー授紋の儀
一人ずつ壇へ呼ばれ、胸元に光の札を当てられる。
光が形を取り、その者の紋となる。
まずリリアの番が来た。
「リリア・ハートレイ」
光の札が触れた瞬間、まばゆい金色の光が大講堂全体に広がった。
他の生徒とは明らかに異なる、圧倒的な輝き。
光はひとつの形を描き、胸に――
太陽紋
が浮かび上がった。
百年に一人の奇跡とされる最高位の紋。
国王の近衛騎士や大司教に匹敵する才覚と運命を示す。
大講堂はざわめきに包まれた。
嫉妬、畏怖、尊敬――あらゆる視線がリリアに注がれる。
クローバーは小さく息を呑んだ。
「リリア……すげぇよ……」
次にクローバーの名が呼ばれる。
「クローバー・アシュレイ」
胸元に光の札が触れると――
白い光が走ったかと思うと、すぐに暗い影のように変化し、揺らめく光が胸に宿る。
ざわ……ざわざわ……
学生たちのざわめきが広がった。
浮かび上がった紋は――
四葉の紋(異端紋)
その色は暗く、光とは正反対の印象を放っていた。
老司教の眉がひそむ。
「……禁紋……」
異端紋――学院史でも極めて稀に現れる紋。
神の光とは性質を異にする者に授けられるとされ、
学院においては忌避される存在となる。
クローバーは胸の紋を見つめ、息が詰まる思いだった。
周囲の視線が、自分を中心に集まっているのが分かる。
式後、クローバーは石階段に一人座り込んだ。
胸の四葉紋はまだ微かに黒く輝く。
その隣にリリアが来て、笑顔で手を握った。
「クローバー、あなたは異端じゃない。あの時、村を守ろうとした心――それこそが本当の光よ」
しかし学院の空気は重く、禁紋の影は強烈だった。
これからの日々は孤独と戦いの連続になるだろう。
それでもクローバーは小さく拳を握りしめた。
四葉の紋に宿る異端の力ごと、自分の手で運命を切り開いてみせる。
こうして、クローバーの学院生活は、
希望と孤独、光と影が交錯する日々として幕を開けた。




