第五章 反逆の旗、魔王の覚醒
フェリシア姫が「聖なる儀式」を行うという。
人々は祝福に満ちていたが、私はその儀式が魔王の封印を完全に断ち切り、私の力を吸収する儀式だと知っていた。
「止めないか、クラウディア?」
私はただ頷く。
ある日、アルトスが私を廊下で呼び止めた。
「貴女が何か知っているようだ。正直に話してくれ。なぜ、フェリシアの儀式を邪魔しようとする?」
「あなたは本当に彼女が正義だと信じてる?」
「……疑いはある。だが彼女の力は魔物を浄化する。民衆を救う」
「でも、その力の代償は? 彼女の“浄化”は、闇の力を持つ者を抹消している。それは差別じゃない?」
アルトスは押し黙る。
「魔王の血は悪じゃない。ただ違うだけ。光だけの世界は不完全だ」
「……貴女は……まさか魔王の娘なのか?」
私は彼の手を取った。
「信じられないなら、感じてみて」
自分の魔力をそっと彼の掌に流し込む。
黒い炎が彼の手を包み、しかし傷つけず、温かく光った。
「これは……痛みがない……?」
「闇は必ずしも破壊じゃない。守るための力でもある」
アルトスは深く息を吐く。
「……貴女を信じよう。でも勇者として、どうすればいい?」
「一緒に真実を暴こう」
その夜、私は舞踏会の最中、儀式の壇に立ち黒い炎を放った。
「この儀式は偽りの正義の儀式です!」
人々が騒然とする。
フェリシアは怒り、聖なる光を放った。
「クラウディア! お前は魔王の血を受け継ぎ、世界を滅ぼそうとしている!」
「違うわ。あなたこそ偽りの光で人々を支配しようとしている」
そして、私は叫ぶ。
「魔王の娘として宣言する! この世界の正義を私自身の手で作り直す!」