第三章 勇者との邂逅、そして対立
勇者たちの到着を機に、王宮は騒然となった。
フェリシア姫は歓迎され、王太子も彼女に求婚の意向を示す。
そして、当然のように私は「嫉妬深い悪役令嬢」として描かれた。
「クラウディア様、また姫の前で失礼な発言をなさったと聞きましたよ?」
王太子の側近が、冷ややかな目で私を咎める。
「失礼? 私はただ真実を言っただけです。フェリシア姫が魔導書を盗んだのは事実でしょう?」
「なにを……! 根も葉もない噂を!」
「噂じゃありません。私が魔力の痕跡で確かめたのです」
人々は呆然とする。
魔力感知──それは高位魔導士にしかできない技だからだ。
「クラウディア様が……そんな力を?」
その時、突然扉が開き銀の鎧を纏った青年が入ってくる。
勇者アルトス。
前世ではヒロインに恋する正義の戦士。
「貴女がクラウディア・シュナイダーか?」
彼の目は鋭く、警戒に満ちていた。
「なぜ魔力を使える? 貴女は魔術が使えないはずだろう?」
「それは、あなたたちが知っている“設定”の話」
私は微笑む。
「私は、設定を超えた存在です」
そして、掌から黒い炎を放っま。
アルトスは剣を構えるが、炎は彼に届かず空中で静かに消えた。
「私は誰も傷つけない。でも、正義のふりをした不正義には断固として抗う」
その場に重い沈黙が落ちた。