第二章 血の記憶、黒き炎の継承
王宮の図書館にこもった私は、数日かけて禁書の奥深くを調べていた。
グレイモンド家の系図、古代魔導書、そして──魔王の記録。
「ここだ……」
一冊の黒い革表紙の本を開く。
表題は『闇の血統:魔王の子孫たち』。
魔王ベルゼブはかつて人間の貴族女性と密かに契りを交わし、その娘をこの世に残した。
彼女の名は──クラウディア・シュナイダー。
だがその事実は封印され、歴史から抹消された。
「……そうだったのか」
私は震えた手でページをめくった。
そして、最後のページに一通の手紙が挟まれていることに気が付く。
我が娘よ。
お前がこの手紙を読むとき、お前の血が目覚めた証拠だ。
お前は闇の王女の血を引く者。
光の秩序に囚われるな。
お前の力は破壊ではなく、真の自由を求めるものだ。
父より。
「父……魔王ベルゼブ……?」
何故だか涙が零れた。
私は孤児だった前世。
家族も愛も知らなかった。
でもこの世界では──誰かが私を待っている。
その夜、私は初めて自分の魔力を解放した。
部屋の中央で黒い炎が渦巻き、天井まで届くほどの炎柱が立つ。
それは、光の魔法とは違う。
闇を操る力。
創造と破壊の根源。
「私は悪役令嬢じゃない。私は──王女だ」