滑稽な末路
昔。
ある一族の長が恐ろしい魔術を極め、人類の持つ最大の望みを叶えた。
始めの百年は人々は長を羨んだ。
次の百年に人々は長を称えた。
その次の百年に人々は長を語った。
さらに次の百年に人々は長を忘れ始めた。
何せ、四百年も経っていたからだ。
当時を生きる人は愚か、語られてきた話を覚えている者さえも少なくなってきた。
やがて、人々は長を忘れた。
そして、今。
人類が滅びて随分と経ち、星の上で一人の男が無感情にナイフを自分の胸に突き立てていた。
「死ねない。死ねない。死ねない」
そう呟き続けながら。
遥か昔に不死を得た長の末路を人々はもう知らず、知らない故に語ることもない。