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9.多少欠けても宝石ですわ

ことわざ『腐っても鯛』です


ムーラン共和国

ロワニーズ王国の南海に位置する小大陸で複数の民族が居住する多民族国家、比較的生まれて新しい国である


国家元首を持たず、最高決定権を大部分の国民が有しており有権者の投票によって代理人を選出する民主共和制国家である


爵位制度はないが、国民により選出された議員が大きな権力を持っていた


自らの懐事情を優先し有権者である国民の生活を蔑ろに

する横暴な政策に一部国民からは不満が募り武力闘争も止むなしという段階まで進んでいた


ムーラン共和国セドリック州から今期初当選した若き議員チャベル・ドンゴも不満を募らせる一人だった


「何か対策を考えなくては、折角一つにまとまった民族がムーラン共和国から離散してしまう」

「国とは民があって成立する。民が豊かになれば自ずと国も栄える」


「ロディは ロワニーズ王国出身だったね。王国は君主制国家だが民衆は不満がないのかな?」

「全く無いとは言い切れないが、私が知りうる限りでは不平不満は聞かなかった」


「そうか…お貴族様なんて俺たちからすれば雲の上だ。特に王様に逆らえば物理的に首が飛ぶ印象なんだが」


「ははは、確かに王の逆鱗に触れれば例え実子であっても容赦なく処罰を下す。但し暴君では無い。君主制ではあるが、貴族院に所属する当主達が議案をまとめ最終決定を陛下が行う。建国以来理不尽な王命が発令された事はない」


ロディは部屋の壁のシミを見つめながら饒舌に話した


ロディと名乗る青年はニヵ月前裏路地で倒れているところをチャベルに保護された

発見当時、原因不明の高熱を発症しており未知の感染症も疑われたが三日経過すると熱は引いていた


青年の意識も戻り話せる様になったのは更に三日後であった


青年は『ロディ』と名乗り、旅人であると告げた

出身はロワニーズ王国であるが見聞を広める為に出国し、着の身着のまま旅を続けていると語った


原因不明の高熱は“後天性疾患”であり感染症とは無関係だと笑って答えた


チャベルは青年の“次の目的地”が決まるまで一緒に暮らす事を提案し、家賃の代わりに話し相手になって欲しいと交渉した


結果、今現在も居候としてロディは住んでいる


「もしロディがこの国の代表だったとしたら、現状をどう打開する?」


チャベルはロディからの客観的意見を求めた


「そうだな…まずは現政府を解体し、新政府を立ち上げる」

「それでは結局同じ事を繰り返さないか?」


「そこで、新政府の議員は無報酬にし名誉職扱いとする」

「なるほど、しかし無給にすると議員の質が低下し国の決定機関としての役割が全う出来ないのでは?」


「議会で政策を提案し採決された議員は結果に応じて臨時報酬を受け取ることが出来る。報酬の上限は決めないといけないな」


「つまり報酬が欲しければ国民の為の政策を考え実行し結果を出せと?」

「そうだ、アメとムチ作戦だ」



「殿下、ムーラン共和国で政権交代が起きましたわね」

「利権に固執する旧政府に対して国民の不満が爆発した形だよね」

「新代表のチャベル・ドンゴ氏の掲げた公約が民衆の心を鷲掴みにしたと父から聞いています」


恒例の〜以下省略


「私も父上から報告を受けたが、中々に斬新な内容だったよ」

「チャベル新代表には参謀的な役割を持つ方がお側にいるとか」

「よく知ってるねティア。新代表の腹心が公約の基礎を考えたらしいよ」


「議員の無給化、成果に応じての報酬、ユリウス王太子殿下以外にも前例のない考えを実行する強者が存在するとは…世界は広いですね」

「ん?ブルプロ君、それは褒めてるの?貶してるの?」


「殿下、チャベル新代表の腹心の方のお名前はご存知かしら?」

「あーー、うん。ロディ氏だったよね」

「ええ、ロワニーズ王国出身だそうですわよ」


へぇー、と視線を逸らし、眉間に薄く皺を寄せるユリウスに、エミリーティアは「全部ご存知のくせに」と心の中で呟いた


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