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16.思い出は三者三様ですわ


王立ソワージュ学園

ロワニーズ王国首都に構える貴族子女が通う学園であり、15歳から入学可能、在学期間2年と短期ではあるが、文武両道、実力が伴えば例え平民でも入学可能である


今から約23年前、第一王子殿下が学園に入学した

当時、殿下には「婚約者候補」が二人選ばれていた


聡明な令嬢、ロザリー・ヒールベルグ公爵令嬢

明朗な令嬢、シンシア・グローネ侯爵令嬢


二人は幼少期より同じ王子妃教育を受け、血は繋がらぬともお互い姉妹の様に支え合っていた


宮中では殿下と三人仲睦まじい姿に両陛下は安堵していた


15歳という多感な時期

自立心が芽生え異性への関心が高まる、所謂「思春期」の到来である


ロザリーは殿下との距離を空けた

決して不仲になった訳ではない

今一度立ち止まり、殿下と自分を冷静に見つめ直してみようと考えた


ロザリーは聡明であるが故に、より深い理解を求めて新たな視点で物事を追求する癖があった


殿下も長い付き合いでロザリーの性格は理解は出来るが、納得は出来なかった


そんな拗れた二人の仲をシンシアは仲介し続けた

しかし心の距離が離れてしまった二人は会話が弾むこともなくお互いを深く理解出来ない状況に陥っていた


シンシアに当時の心境を聞くと「ロザリーは殿下に理想的な姿を期待しすぎなのよ!拗らせた恋人同士なんて犬も食わないわ!」とご立腹であった


二人の間はさらに疎遠となっていた

この時期、王子妃教育も終了しており正式に婚約者が決定後、次段階(王太子妃教育)が開始される予定であった


事態が動き始めたのは二年に進級した年だった

隣国リード公国よりミシェル・ジャントット公爵令息が短期留学で訪れた


学年は違えど、学園の案内役として指名されたロザリーは、ミシェルの知性と優しさに触れ「初恋」だと感じ、シンシアに相談した


「貴女は自分の理想像に彼を重ねて“求めていた答え”を得ようとしているだけよ。現実から目を逸らし続け無意識に重圧から逃げる言い訳を探している。殿下に真正面から向き合うことを拒否するのなら、候補を辞退なさい!」


流石のシンシアも堪忍袋が切れたのか、強い口調でロザリーを諭した



「王妃殿下はその後どうされたのですか?」

「情けない事に貴女のお母様であるシンシアに泣き付きましたのよ。まるで赤子の様に声をあげ嗚咽しましたの」


王妃は恥ずかしそうに肩をすくめた


「シンシアに後から聞きましたが、当時彼女には心から慕う方がいらっしゃったのよ。その方が貴女のお父様よ」


シンシアが両陛下の板挟みになり疲弊していた時、支えてくれたのは当時殿下の側近だった父ジョージだった


元々シンシアは王妃という立場に興味はなく、殿下とは「幼馴染の男の子」としてしか見ていなかった

いずれロザリーが王妃となるだろうと常々思っていた矢先の暴走

このままでは自分に白羽の矢が立ってしまう


「焦ったわぁーって豪快に笑っていたわ」

「お母様…」

淑女の仮面が剥がれてますわよ、と心の中で言葉を続けた


「さらに一つ下のフランシス王女がジャントット公爵令息に一目惚れされて当時の両陛下とちょっとした騒動が起こり、便乗する形で曖昧な状態なれど殿下と和解しましたのよ」


当時を懐かしむ王妃の姿に大切な人間関係を育む重要性をエミリーティアは感じ取った



「ロザリーは聡明と名高いけど中身は意気地なしの弱虫さんなのよ」

「シア…言い方」

「ジョージだって陛下に振り回されていたじゃない」


不機嫌を隠さず言い放つシンシアにエミリーティアは苦笑いを浮かべた


興味本位で王妃との話題を両親に振ったエミリーティア

初めはジョージとの馴れ初めなど穏やかな会話が続いたのだが、後半はロザリーへ向けた愚痴が多くなっていた


「お母様、これ以上は母体に障りますわ」


安定期も無事迎え、お腹もふっくらと丸く膨らみ始めていた

シンシアの体調も安定し、主治医による妊婦検査も異常なく、そろそろ胎動を感じられる時期である


「待ち遠しいですわね。でもお母様のお腹の中で元気に育ってから産まれてきてくださいな」


シンシアのお腹に手を当て、まだ見ぬ弟妹に優しく話しかけるエミリーティアであった


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