13.感謝の気持ちは自身の幸福に繋がりますのよ
六月
新緑が眩しく、気温も徐々に上昇し、初夏らしい景色が広がるこの季節、エミリーティアの誕生月でもある
ロワニーズ王国内貴族は“節目”と呼ばれる人生で大きな区切りとなる年を盛大に祝う風習がある
3歳、7歳
子息の成長として重要な年で、健やかな成長を願う
15歳
正式に社交界へ参加できる門出の年
一人前の女性としてお披露目される
18歳
成人の儀式
人生の大きな変化点であり、大人の仲間入りを果たす
60歳以降
長寿を祝い、以降は10の倍数を節目とする
エミリーティアは今月18歳を迎える
「両殿下より宮中の会場を使用する旨を言伝されましたが、わたくし近親者のみで”ささやか“な宴を希望しておりますの」
「エミリーティア嬢の意向に是非を問うわけではありませんが、理由を伺ってもよろしいでしょうか?」
ブルプロは首を傾げ問いかけてきた
「両親と一緒に祝いたい、簡潔に答えればこの一言に尽きますわね」
周知の通り、エミリーティアは親元から離れ王宮で暮らしていた
学園入学に伴い家族と過ごすことが許可されたが、ユリウスと婚姻するまでの短い時間である
両陛下の計らいで毎年誕生日会は開かれていたが、普通と規模が異なる
両親とは挨拶程度、招待者の対応で終わってしまう
余談ではあるが、昨年は色々とあり辞退した
「私は良いと思うよ」
ユリウスにも思うところがあるだろう
成人という門出を婚約者として盛大に祝いたい気持ちはある
だが、エミリーティアの意向に反してまで優先すべきことではない
「他国では誕生日を“両親に感謝する日”だと聞いたことがあります」
「なるほど、出生の祝いが誕生日であるならば、同時に両親へ感謝を伝える日でもあるということですね」
深く納得する様子のブルプロにエミリーティアは「それと…」と言葉を続けた
「母に懐妊の予兆が現れましたの」
まだ内緒ですよ?と微笑むエミリーティアに二人は目を見開いた
※
「季節の変わり目で風邪を拗らせたのだと思ってましたが、まさか本当に懐妊するとは…」
エミリーティアに「念の為に」と指摘され主治医を呼んだ
「初産でもあるまいて。月の物が遅れ、吐き気の症状が続けば素人でも気付くじゃろう」
今だに信じられない様子のシンシアに主治医は呆れ顔で答えた
「嬢ちゃんに気付かされるなんてのー」
「ティアを身籠ったのは18年前ですわよ?」
「家族総出で妊活に励んでいたクセに何を言い訳しとるんじゃか」
だってぇー、と情けない声を上げるシンシアに、付き添っていたジョージが優しく声をかけた
「シア、まだ早いけど君に感謝を。ありがとう」
「旦那様…元気なお子を産んでみせますわ!」
感極まるシンシアをジョージは優しく抱きしめた
※
「名前を考えなくてはなりませんわね」
胎児の性別が判明するのはまだ先だが、名を考えておいて損はない
ふっとエミリーティアは自身の名前はどうやって決められたのか興味が湧いた
「沢山ある候補の中から最終的に二つに絞り、顔を見てから決めようとシアと決めていたんだ」
「女の子だと診断されてましたからね」
「だが、元気な産声を上げ誕生した我が子と対面した時、名を決めかねてしまってね」
「どちらの名前も貴女に似合ってたのよ」
当時を思い出したのか、シンシアは口元を隠しながら笑い、ジョージは困った様子で頭をかいた
「旦那様は“二つ付ければ解決する”と仰せになりまして、一同驚いた記憶がございます」
そばに控えていた執事が遠い目で答えた
「つまりどういう事かしら?」
「候補は二つ、“エミリー”と“ティア”だったのですよ。お嬢様」
「まさかわたくしの名が二人分だなんて…お父様、お母様、わたくしに素敵な名を授けて頂きありがとうございます」
興味半分で名前の由来を知ったエミリーティアは輝くような笑顔を家族へと向けた




