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「じゃあ、それも嘘だというんですか?」

「…………」


 予想していた通り指を刺し指摘するシェオルに、分かってはいてもティスは動揺を隠すことができず黙ってしまった。


「間違いなく本物ですよ。魔法少女なら、誰でも分かるはずです」


 そうなのだ――そもそも最初から疑う必要がない証拠は確かにあった。ただ、信じることができなかった。いや、これはティスだけが悪いのではなく、誰が聞いても信用はしないだろう。


「……確かに本物ね」


 心の中で嘆息し、ティスは見ないようにしていた『モノ』に視線を向け、その一つを手に取った。


「これは、どうやって手に入れたの?」


 手に持ち、シェオルの前に掲げる『モノ』。それは――


「……『魔女の水晶』」


 陽の光を反射し煌いている、掌よりも少し大きい綺麗に精製された黒耀の水晶にセリッサは小さく呟いた。


 魔女の水晶――『魔女の小遣い(ソルシエール・チップ)』などとも揶揄されるこの水晶は魔女の従僕の元となるものだった。

 魔女の娘たちは魔女の使徒を創造し、魔女の使徒は魔女の水晶を創る。そして、創られた水晶は満月の夜に世界へとばら撒かれ、人間の体内に入りこんでいくと言われていた。

 もちろん通説であって、実際に魔女の使徒に確かめたわけではない。いやそれ以前に、そもそも魔女の娘に会ったことがある人間すらいないのだが、少なくとも魔女の水晶があり、それが魔女の従僕を現出していることだけは確かだった。

 人の中へと入り込んだ魔女の水晶は人間のあらゆる感情を吸い取っていき、やがて魔女の従僕と現出する。どうやって体内に入り、どの時点で魔女の従僕を現出されるかは今だ不明だが、水晶が感情を吸い込んでいるということだけは証明されていた。

 感情を吸い込まれ、魔女の従僕を現出させた人間はどうなるか――

 どうにもならなかった。感情には形がなく、容量も制限もない為、水晶に吸い取られても人間自身には何の変化も起こらなかった。

『だからこそ』厄介なのだ。元より感情を無くすことなどはできないが、魔女の従僕の脅威はあるものの直接の命の危険が伴わなければ人間は注意をすることはしない。自身を律しなければ命をとられるとなれば誰もが必死になるだろうが、そういうことはないのだ。更に、魔女を憎むことさえ魔女の従僕の現出を促進させるといわれていた。

 魔女だから当然なのだろうが、意地の悪いやり方だと思わざるを得ない。人の心の性質を良く知り、その隙間に入るやり方を把握している。


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