九
「やっぱり、天才とかなるとちょっと違うのかなぁ」
――そう、『だからこそ』、ステルのルームメイトがレオネになったのも偶然ではないはずだった。
セリッサと同じように天才と呼ばれているステル。そんなステルのルームメイトとして一番上手くやれるとすれば、新入生メンバーの中でレオネ以外には考えられないだろう。そう考えていけば、他の新入生の組み合わせも成程と思わずにはいられない。
「天才、ですか」
レオネの呟きにセリッサもまた同じように呟いた。
「お、やっぱり気になりますか。同じ天才と謳われているセリッサ・フリンデルとしては」
「わたしは天才じゃありませんよ」
この言葉はいつも答えている言葉だったし、実際、セリッサは自分が天才だとは考えたこともなかった。
しかし、この否定の言葉の感情に少しだけ変化が出てきているのも確かだった。自分が天才だと思うようになってきたわけではない。天才というのなら、誰よりも強い天才が隣にいることを感じているからだった。
「またまたぁ。みんな噂してるよ、今年の新入生はすごいって。有名人揃いでさ」
そんなセリッサの気持ちを知ってか知らずか、レオネは手を頭の後ろに組んだままもう一人の同行者に目を向けた。
「シェオルを含めてね」
「わたしの『すごい』で『有名』は問題児としてでしょ」
「自分でいうか」
「ふふ」
冗談めかして、そして、おそらくは問題児だということも自覚して笑うシェオルに、すぐにツッコむレオネ。そんな二人にくすりと微笑みつつ、セリッサもシェオルに目を向けさっきの自分の話を続けるように小さく呟いた。
「シェオルさんは本当にすごいです。天才といわれるならシェオルさんのほうがよほど……」
「ありがと、セリッサ」
「ぁ……」
ぽんっと頭に手を置くシェオルに、セリッサは微かに声を上げると恥ずかしそうに俯いた。
本当に慣れないといけない――そう思うが、これだけはどうしても慣れそうになかった。
「いいなぁ、二人仲良くて」
「そんな……きっと、レオネもこれからステルさんと仲良くなれますよ。それに、まだ二日目じゃないですか」
「まあ、そうなんだけどね。二日目でいきなり親友ってのはさすがに無理だろうし」
新入生が寮に入り、実際に住むようになるのは宣誓式の前日からと決まっていた。荷物を運ぶことはできても、前日より以前に寮に住むことは禁止されている。他の学園に比べれば遅く、逆に不便のようにも感じるが、これには当然理由があった。魔法少女学園という特殊な環境上、前日にせざるを得なかったのだ。
前述の通り、魔法少女学園には魔法少女しかいない。その理由と同様、魔法少女に成れたとしても学生でなければ魔法少女とは認められず部外者とされた。つまり、魔法少女に成れても戦うことを禁止されている。そして、戦うことを禁止されている以上、学園に居させるわけはいかない。その為、新入生の入寮は宣誓式の前日とされていた。
そういう事情もあって、新入生の中では昨日初めて顔を合わせたという生徒もいた。レオネと、そのルームメイトのステルのように。
「でも、親友っていえば……」
昨日、初めてあった同居人――シェオルの言うところの相方の顔を思い浮かべながら、レオネはふと気付いたように呟き、隣を歩いている二人に顔を向けた。
「セリッサとシェオルって仲良いよね」
「え……そうですか?」
「うん、知り合ったばかりとは思えない。会ったの五日前なんでしょ?」
「あ、はい。そうですね……」
聞かれたくないことではなかったが、気付かれ質問されると咄嗟に答えることができずセリッサはまた言葉を濁らせた。




