五
「――ん」
セリッサは両手を首に回し、羽織った白いマントからプラチナブロンドの髪を外へ出すと軽く頭を振った。
布に髪が擦れる微かな音を背中に感じつつ、さっと服をなびかせ静かに瞳を開く。
「…………」
その開いた瞳には朝の白い光に照らされた部屋が入ってきた。
開け放った窓から緩やかに吹いてくる少し冷たい爽やかな風を一度だけスッと胸に送り込み――そして、セリッサは部屋を見渡した。
部屋は綺麗に整頓されている。というより、多少殺風景ともいえる内装になっていた。寮に入って数日しか経っていないというのもあるが、もともとそれほど荷物があったわけではない。必要最低限の日用品と服、あとは数冊の本とお気に入りの小物を数点。それだけで十分だった。
魔法少女であれば学園の在籍が絶対だとしても、家に戻ることまで禁止されているわけではない。許可さえおりれば家での一拍も許されているのだ。その為、必要な物はいつでも取りに帰ることができ、寮に全てを持ってくる必要はなかった。
とはいえ、
(他の人に比べたら、少し寂しすぎるかも)
セリッサ自身もそう思わなくもなかった。自分の荷物が少なかったことも確かにそうなのだが、もう一人の同居人の荷物は見た目で分かるほど更に少なく、寮に初めて入った時と見える風景は全く変わっていなかった。
アルカンシエル魔法少女学園の寮部屋。基本は二人部屋で、左右にベッドと机、そして、小さなタンスが備え付けられていた。いたってシンプルな部屋だが、魔法少女でいる限りは住む部屋なのである程度の模様替えは許されていた。二つあるベッドを二段ベッドに代え部屋のスペースを広く取っている部屋や、書斎のように書棚が並んでいる部屋もある。花や植物に溢れた部屋もあれば、ぬいぐるみに溢れた部屋など、住む人間によって部屋の色も変わっていた。ただし、当然ながらその費用は自分たちで出さなければならず、学生の間に変える人間はほとんどいなかった。とはいっても、「ほとんど」という言葉通り、時折、寮の部屋が決まってすぐに模様替えする新入生もいないではなかったのだが。
洗面と浴場は共同になっており、食事も食堂でとることになっていた。それは、教職員や現役の魔法少女も変わらず、学生と同じように生活をしている。
普通の学園に比べれば人数が少なく、普通の学園よりも一緒に居る時間が長い魔法少女学園の共同生活。その為、学園が一つの家で家族のような連帯感があった。現に、先輩たちを「先輩」とは言わず「姉」と呼ぶ生徒もいた。
その家庭の中に、今からセリッサたちは新しい娘として加わる。
(家庭……)
セリッサは内心で呟き、思わず笑ってしまった。確かに、自分にとっては家庭で娘といってもおかしくはない。
母が学園長であり、小さいときからアルカンシエル学園に通っていた。アルカンシエル学園にいる魔法少女で知らない人間はいないし、先代の白銀の聖女でもある前学園長には孫のように接して貰い、セリッサ自身も祖母のように慕っていた。セリッサにとっては、まさに第二の家庭だった。
それに――
「…………」
セリッサはルームメイトへと視線を向け、すぐに俯いてしまった。
なんだか変な感じがする。夢のような……というと、ルームメイトは大げさだと笑うだろう。だが、セリッサにとっては夢のような感じがしていた。
ルームメイト――シェオル・ハデス。
彼女は同じように正装に身を包むと、着慣れない居心地の悪さがあるのか感覚を掴むようにマントを一度なびかせた。




