表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

9.過ぎた幸福 Side:パトリシア

 ルーシャス様との婚約を継続することになり、私とルーシャス様は色々なパーティーに出かける機会が増えた。


 ルーシャス様はその度に私にドレスやアクセサリーを贈ってくださり、私はその贈り物が映えるようにと侍女と試行錯誤しながら私の出来る最高の装いで、ルーシャス様の隣に立った。


 ルーシャス様はピアノの演奏をいつも私に捧げてくださって、私はそれに見合った私であろうと背筋を伸ばした。


 けれど、ある日聞いてしまった。

演奏を終えたルーシャス様を訪ねて、奏者の控え室を探していた時、ルーシャス様の次に演奏していた奏者たちが話していたのだ。

 「演奏もしないくせにルーシャス様にいつもピアノを捧げられるなんて。彼には釣り合わない」と。



 その通りだと思った。


 あんなに素晴らしい調べをルーシャス様はいつも私のために贈ってくださる。

 あれだけの演奏をするためにどれほどの努力がいるのか私は知っている。

 私もヴァイオリンを弾くからだ。


 もっとも私のヴァイオリンはルーシャス様のピアノと違って、誰かに演奏を願われるようなものではない。

 幼い頃には何度か演奏会に呼ばれはしたけれど、彼らの目当ては兄だ。

 今では世界中を演奏の為に呼ばれる兄のおまけで演奏する機会を得たに過ぎない。


 私は反省した。


 ルーシャス様のピアノは兄のヴァイオリンに劣るものではない。

 つまりルーシャス様は世界中に求められる演奏家なのだ。その演奏を毎回捧げてもらうのが私のような者でいいはずがない。


 けれど私が婚約者でいれば、きっと今後もルーシャス様は私に演奏を捧げるだろう。

 ルーシャス様が私のような平凡な女に演奏を捧げる理由は、私が彼の婚約者である。それだけなのだから。



 それならば私は彼との婚約を解消すべきだろう。

 私には過ぎた幸福だ。この幸福は世界が感受しなければならないものなのに。


 私はだからルーシャス様に願い出た。

 「私との婚約を解消してください」と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ