15.結婚までの数ヶ月 Side:パトリシア
「パトリシア、どうか俺との婚約を続けて欲しい」
卒業式でルーシャス様にそう願われた私がどうしてそれを断ることができるだろうか。
もちろん分不相応なのだろうと思う気持ちがないわけではない。
だけど講師陣が言ってくれたルーシャス様と私がお似合いだという言葉は私を力付けてくれた。
もしも少しでもそう見えるのならば、隣にいても良いのではないかとそう思ったのだ。
私は卒業した。
私とルーシャス様の婚約ももうすぐ一年経つ。
何度か婚約解消の申し入れをしてはいたが、実際にルーシャス様が解消に同意していたわけではなかったから、結婚の準備は変わりなく進んでいた。
もう数ヶ月で私たちは結婚することになる。
ルーシャス様の婚約者であるだけでも烏滸がましいと言うのに、私がルーシャス様の妻で良いのだろうか。
不安な気持ちになった時、私は卒業式でのルーシャス様の私への願うような眼差しを思い出す。
あんなに真摯に願ってくれたのだ。私はルーシャス様の妻として精一杯努力しよう。
そう思って残り短い婚約期間を私たちは過ごした。
そしておそらくは婚約者として参加する最後の夜会。
王家主催で行われた春を祝う夜会で、私は再び言われるのだ。
「あなたではルーシャス様には釣り合わない」と。