14.君に花束を捧げる Side:ルーシャス
二度あることは三度ある。
三度目の婚約解消をパトリシアから提案された俺は、諸悪の根源を探そうと躍起になった。
しかし、心当たりはなかった。
演奏会ではパトリシアは幸せそうに演奏していたし、練習で音を合わせることもパトリシアは楽しんでいるように見えていた。
つまり俺から離れたところでパトリシアに何かを吹き込んだ奴がいるのだ。
可能性が高いのは王立学院内か。
しかし、学院を卒業した俺に内情を探ることは難しかった。
俺はパトリシアの交友範囲を探った。
だが、そもそもパトリシアと付き合いのある者はパトリシアに何かを吹き込むようなことはしない。
何か心当たりはないかと尋ねてはみたが、ある日急に落ち込み出して心配していると言われるばかり、つまり、パトリシアと親しい者がいない場で、パトリシアに何かを吹き込んだ奴がいると言うことだが、そうなるとどうやって探したものか。
これまでの経験から俺に好意があるものの仕業だと考えるのが妥当だろうと、俺へアプローチをかけてきた女を問い詰め、潰してはみたが、犯人ではないようで、なかなか本丸には辿り着かない。
そこで一旦犯人探しは保留として、侍女に最近のパトリシアの様子を聞いた。
パトリシアは最近は勉強に力を入れているらしい。俺の論文を読んだり、関連書籍を手配したり、講義についても以前よりも力を入れて学んでいると侍女は言う。
そこで俺は学院の講師陣に声をかけた。
必要な研究の手伝いをするからパトリシアが質問をしてきたら、さすがは俺の婚約者だ。お似合いだと言ってくれと頼み込んだ。
講師陣は俺の願いを聞いてくれた。
おかげで彼らの研究の手伝いに忙しく、犯人探しは頓挫したし、パトリシアの卒業試験は終わってしまった。
パトリシアは見事に首位に立った。
俺は卒業生代表として卒業式で挨拶するパトリシアの為にドレスを贈った。
パトリシアは着てくれるだろうか。
不安に思いながらも揃いで仕立てた服に袖を通すと、花束を手にしてパトリシアの卒業を祝いに学院へと出かける。
今日だけは卒業してしまった俺でも学院の中に入れるからな。
パトリシアは俺の贈ったドレスを着ていた。
俺はパトリシアに向けて花束を捧げた。