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納税証明書

 病院で診察を終えた二人は、魔力操作による治療を受けるため、話ながら移動していた。

「アマナス君。さっきの証明書のことなんだけど……」

「こんな小さな村にも、ああいう制度ってあるんですね」

「まさにそこについて話があるんだけど、いいかな?」

 オーメンはいつもより引き締まった表情をしていた。それをみて、アマナスも表情を引き締める

「スタンプ制度は、国紋と家紋を混ぜた魔力の判を役所に提出し、認定されたものを心臓に打つことで、所属を明らかにする制度なのは知ってるよね?」

「はい。確認する時は、それにブラックライト(特殊な光)を当てることで、紋章が浮き上がるんですよね」

「そのスタンプ制度は、とある魔道具を参考にして作られたんだよ。」

「そうなんですか!?」

「うん。国民の管理なんて、魔道具を使わないと難しいんだよ。だから、この村の証明書制度にも、魔道具が関わっている可能性が高い。」

「!!」

 まさかと思い、彼は質問を投げ掛ける。

「その魔道具を集めるんですか!?」

「まさか。管理システムになっちゃってるのを奪うほど、節操無しじゃないよ。」

 それを聞いてアマナスは胸を撫で下ろす。

「でも、もし魔道具なら、どんなものかは知りたいんだよね」


 彼らは魔力操作の治療を受けた後、役所へと向かった。

「すみません。納税証明書についてお話を伺いたいのですが」

 オーメンが役所の窓口に持ちかける。

「かしこまりました。担当の者をお呼びしますので、お掛けになってお待ちください」

 二分ほど待つと、名前が呼ばれた。

「お待たせいたしました。納税証明書についてお話をお聞きしたいとのことですね」

「はい。スタンプ制度と似た制度があったので、気になりまして」

 役員が二人に説明する。

「そもそもスタンプ制度は、税の徴収、身分の保証、相続権の証明のための制度です。しかし、国紋を持たない団体や家紋の無いご家庭では、採用出来ません。そこで生まれたのが、納税証明書です」

「スタンプとは何が違うんですか?」

 アマナスが問う。

「納税証明書は、魔力を込めないと書け(魔力がインクの)ないペンを使って、書類に個人情報を記入していただきます。魔力の質は遺伝しますから、それが身分の保証や、相続権の証明になります」

「魔力を持たない人はどうするんですか?」

「血の判を書類に押していただきます。その血から個人情報を読み取ります。ただしこちらは、身元が確かな方の血判とご一緒でなければ、認められません」

「どうやって個人情報を読み取るんですか?」

「それは機密事項です」

 その一言でオーメンは落胆した。しかし確信した。そこか……。

「納税証明書をお作りするなら、つまり当村の住民になられるのなら、お見せすることも出来ますが?」

「じゃあお願――」

「いえ、私達は旅人ですので」

 アマナスが証明書を作ろうとした瞬間、オーメンがそれを遮った。

「お話ありがとうございました。行こう、アマナス君」

「えっ、でも」

「いいから」

 そういう彼女の目は曇っていた。


 役所をあとにしたアマナスはオーメンに質問した。

「魔道具に近付けるかもしれなかったのに、よかったんですか?」

「管理システムになっちゃってる物は、流石に集められないし、それなら別にいいかなって」

 どこか含みのある顔と声だった。

 やっぱり、この人は何かある。しかしやはり疑いたくない。アマナスはそう思い、口を噤んだ(つぐんだ)

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