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第一級称号《従魔帝》を与えられし最強賢者  作者: 結城辰也
第一章 従魔帝の承継者編
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第七話 ヌシの気配

 フーゲンさんのお陰で退けることが出来た。


 いずれ再会したいけど後ろめたい感じもする。だって共闘どころの騒ぎにならなかったから。あの時に逃げることで精一杯だった僕がいけない。次からは気をつけたいしなによりも人を見捨てたくはない。たとえそれが赤の他人であっても。


「気にするな。フーゲンなら戦えるはずだ。いまさら無視出来るか、あいつのこと」


 気にしているのは僕だけじゃない。一番はジークだったに違いない。先頭を歩いているのがジークだから表情は分からないけどかなり口惜しがっていそうだった。


 それにしても今は山の中だ。


 迷子はまだなっていないはずだけどこのままジークに委ねていいのだろうか。なんせ村から出たことがない二人なので山について詳しくない。聴いたことがあるとしたら山には主がいて人を襲うのだとか。絶対に遭いたくない。困難になるだけは避けたいしなるべく早くにエルドール王国に辿り着きたい。


「ねぇ? ジーク? 印はどうなの?」


 ノエルが言う印は赤い紐のことか。確かに気になるな。


「印。……なくなっている。まずいな、これは」


 どうやらジークの嫌な予感が当たったようだ。山を越えるのに必要な目印がないのならどこを目指せばいいんだろうか。それに本当なら一軒家の宿で明日を迎えるはずだったのに。つくづく運がないと言えた。


「おい!」


 仲間じゃない声がした。急いで確認した。敵だったら危ないと感じ取りいつでも短剣が抜けるように身構えた。


「あー!? 待て待て! 俺は敵じゃない! 丸腰だ!」


 確かに武器を持っておらず装着もしていなかった。謎の小父さんはそう言いながら僕達と合流した。


「名はキコルだ! しがないただの木こりさ! ほら有っただろ? 一軒家が! この山に入る前に!」


 の割には斧を所持していない? 本当に木こりなのかな?


「疑わないでくれよ! 謎の不気味な連中が見えたから怖くて帰れなかったんだ! そしたら謎の兵士がこっちにくるもんだから慌てたよ!」


 それってゲルス隊長達のことなのかな。と言うことはこのキコルって人は危なくはないのかな。


「そうか。自由に宿泊が出来る一軒家かと思ったが所有者がいたとはな」


 少なからず武器になるような物は確認できないし危険視するほどの魔力も感じない。大丈夫そうかな。


「あ! 君達! 山を越えたくはないかい? 実はね? こう見えても薪を売りに越えることがあるんだ! 商売としてね!」


 害はなさそうだしここは委ねても良さそうだ。だったらここは――。


「だが断る!」


 ジークがなんてことを――。


「そんなこと言わないでくれよ。最近は魔物が出て越すのも一苦労なんだ。頼むよ」


 人助け自体はいいような気が――。


「私も……嫌な予感が」


 ノエルまで。駄目だ。このままだと進めない。


「二人とも! 僕達が置かれた状況を見て! このままだと越えられないよ?」


 もしキコルさんが嘘つきだったらかなり立場を失うけど頼る当てもない訳だし。


「セインがそこまで言うなら」


 ノエルは納得したと言うよりは僕に同情してくれた感じがする。後はジークだけだ。


「確かにセインの言うとおりだ。仕方あるまい。俺達をよろしく頼む。キコル殿」


 ジークの姿勢に感動する。普段から一礼をしているのならもっと感動する。意外に真摯なんだな。


「お! いいね! あーでも殿はいらないから! んじゃさっさと越えちゃおうか!」


 助かったと感じた。山のすぐそばに住んでいるのだからきっと腕も相当な物だと感じた。これ以上に旅仲間は増やしにくいけど一時的な仲間ならまだ大歓迎だ。だからここはさっさと山を越え――。


「静かに! ヌシの気配がする」


 キコルさんは鬼気迫る雰囲気だ。さっきまでの温情とは全く違う。なんか戦い慣れているような顔つきだった。こんな時にノエルの言ったことが脳裏を過ぎった。でもそれでも僕達はさっさと山を越えないといけないんだ。


「さっきの兵士がヌシを怒らせたのかも知れないね。どうする?」


 キコルさんもまたさっさと山を越えたいと言いたかったように感じた。でもそれでも僕はヌシと対峙しにいかないといけない。だって村への危険は少しでも減らしておきたいからだ。


「僕達を案内して! ヌシの元へ! 行こう! 皆で!」


 行かないとただでさえ危険が排除しきれていないのに。


「分かった。案内しよう。ここはついてきてくれ」


 キコルさんは反論がないことを同意と捉え案内しようと言ってくれた。なんだか嬉しい。案内役になってくれたキコルさんを先頭に僕達も走った。目的はヌシを静めることだ。それがもし出来なかったら殺すしかない。本当はそんなことにしたくはないし逆に危険になる可能性もある。でもそれでも前に進むためには相応の犠牲も必要なんだと僕は痛感し始めていた。

2,024/3/21 15:43に間違いを正しました。やばい、これは。

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