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第一級称号《従魔帝》を与えられし最強賢者  作者: 結城辰也
第一章 従魔帝の承継者編
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第四話 一軒家の宿

 僕達はだれからも見送られることもなく旅に出た。


 仲間は僕を含めて二名だ。一人目は魔法使いのノエル。二人目は今はないけど魔剣使いのジークだ。


 ちなみに僕はと言うと魔法は使えない。でもそれでも諦めない心を持ち続けたい。どちらかと言えば短剣使いか。もしくは従魔帝の力を利用した手拳使いだろうな。


 ただこの力が僕になにを齎すかなんて今は分からない。今に言えることはジークの魔剣を砕いた力があると言えた。余りに多用し過ぎると周りから白い眼で見られそうだから気をつけないといけなかった。


 それにしても――。


「ねぇ! セイン!」


 僕が更なる深みに入ろうとしていたら横にいたノエルが急に話し掛けてきた。すかさず返答を――。


「まずはこの大陸の王国を目指しましょ。そこに――」

「エルドール王国だな、そこには確か大きな書庫があることで有名らしいが」


 ノエルを遮りジークさんが言ってきた。さすがに三人同時に横並びはきついのかジークさんは後方にいた。なんだか距離も感じる。いちよう念のために言うと僕は距離をおいているのではなく礼節を忘れていないだけだ。そもそも最年少はどう見ても僕とノエルだ。最年長であるジークさんに呼び捨ては失礼だと思う。


「そう! ジークの言うとおり! そこにいけば謎が分かるかも知れない!?」


 ノエルはジークさんを呼び捨てにしながら賛同していた。ほんの少しだけだけど呼び捨てに反応しそうだった。だけどなんとか冷静になりエルドール王国の書庫についてかなりの興味が出てきていた。だからここは――。


「そこにはどうやったら行けるのかな?」


 僕はノエルだけではなくジークさんにも訊いて見た。これから向かう先はエルドール王国になりそうだった。初めての王国なのに気分が高揚するのはなぜなんだろう。緊張どころか好奇心が湧いてくるから不思議だ。重厚感なんて言葉は今の僕にはなかった。


「行き方ねぇ。あー分かんないや。ごめ――」

「おほん! 僭越ながら言わせて貰おう! まずお前達が住んでいた村は山林に囲まれている。つまり峠を越えなければならない。洞窟と言いたいが残念ながらここにはエルドール王国の手は行き届いていないらしい。ここにきて分かったことだがこの先の峠は道すらなかった。大変な苦労をして辿り着いた訳だがまさかこの俺がお前達の仲間になるなんて――」

「ちょっと! ジークゥ!? 逸れてるし長いよ、話が」


 ものすごい長いと思ったのは僕もだ。ただ言えることはこの先の峠には道がないと言うこと。つまりジークさんの案内がなければ越すことは不可能だと言うことだ。


「済まない。だが安心してくれ。木に結ばれた赤い紐を頼りにすれば越えられるはずだ」


 賢いな。何度も行き来してのことだろうからジークさんには頭が上がらないな。間違いを知ってこその正しい道順だろうからどれだけの労力を有したのか計り知れないな。


「ジークゥ~。有難う。機転が利いて助かるぅ~」


 本当に。


「だが気をつけろ。ここを目指しているのはなにも俺だけではないと言うことを」


 そうか。ジークさんは元単独派だから仲間になったけど次の人もそうとは限らないのか。気をつけないとな。


「峠の前に広い空間があり確か謎の一軒家があったな。だれも住んでいなかったがな。俺はそこで休んでからきた訳だ」


 なるほど。きっとそこは宿にしてもいいように村の人達が造ったのかも知れないな、詳細は分からないけど。


「んじゃあとりあえず今日はそこを目指しましょう」


 一晩過ごすにはうってつけだ。村では無理だけどそこなら休めそうだ。だからここは――。


「そうだね! 目指そう! そこまで案内してくれるかな? ジークさん!」

「……呼び捨てで構わない。それと大丈夫だ。そこまでは確か一本道だったはず」

「ジークの言うとおりだとしたら急いだ方が良さそう。なんだか嫌な予感がするから」

「嫌な予感は俺もしている。すでに辿り着いている可能性もあるからな。とにかくここは走ろう」


 僕を除いて二人は嫌な予感がしたらしい。そう言えばよくよく遡れば僕達を狙っているのはなにもジークだけじゃない。と言うことはこの先にすでにいる可能性もある訳か。なによりも――。


「なによりも俺が付けた赤い紐のせいで峠越えは楽だろうからな。必ずしも良い状態とは言えんな、これは」


 確かにそうだ。だとしたら今後はどんな敵が現れるのだろう。多勢に無勢も有り得るのかな。


「それ以上に嫌な予感がしてる。感じない? 私だけかな?」


 駄目だ。僕は鈍感過ぎて言われないと分からない。ジークはどうなんだろうか。


「ああ。分かるぞ。奴らは非情だ。勝つ為ならきっと赤い紐を取り外すだろうな」


 逃げられないようにするためなのかな。だとしたらなんて非情なんだ。もしそうなら僕達は峠を越えられるのだろうか。それは峠に入ってみないと分からない。


「急ごう。一本道なら途中で出くわす可能性もあるから気をつけて行きましょう」


 ノエルの言うとおりだ。ここは――。


「行こう! 二人とも!」


 こんなところで迷っていてはエルドール王国まで辿り着けない。目指すは一軒家の宿だけどそこまでにだれかと遭遇しなければいい。もし遭遇したら戦う羽目になるだろうけど負ける気はない。ただ未知数な力を持つ僕と遠距離魔法が得意なノエルと違って今のジークは戦えない。だから僕とノエルでジークを護らないといけない。心して掛からないといけないと僕は意を決する思いだ。


 二人は僕に対してノエルはうんと言いジークはおうと言っていた。初めてだった、息の合った会話ができたのは。これからも息の合った会話ができたらいいなと思う。そう思っていた僕と二人は峠前にある一軒家の宿を急ぎながら目指した。いずれだれかと会い戦うことになっても僕達は負けない。そして必ず元の村に帰ってくるんだ。そう。全ては皆と平穏に暮らすために。

2024/3/21 16:00に間違いを正しました。

いや~。これは酷い。自分でもドン引きですね、間違えるなんて。

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