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第一級称号《従魔帝》を与えられし最強賢者  作者: 結城辰也
第一章 従魔帝の承継者編
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第二話 ノエルと共に

 衝撃だった、外に出るや鎮火し終えた村だったから。


 そうだったと思いつつ図書館を目指した。その結果は――。


 うん。燃え尽きたみたいだ。これじゃ調べようがない。どうしよう。


 僕が燃え果てた図書館を見ながら顎下に右手を添え考え事をしていた。本当にまずい、これは。


「セイン!? 無事だったのね!?」


 横から声がした。この感じからしてノエルだと確信した。なぜか嬉しい気持ちになり右手を戻し全身を左に向けた。


 やはりノエルだった。目が合うと立ち止まり手を振ってきた。僕は恥ずかしいと感じ相手にしなかった。本当は同じ動きでありたいけど無理だと感じ取り恐縮してしまう。


 それなのにノエルは怒った表情にはならずむしろ僕と同じ感情を有したのか微笑みながら走ってきた。面と向かって普通の声量でも会話できる距離まで近付いてき静かに立ち止まった。息切れはしていないのでここは僕からではなくノエルに喋らすことにした。


「魔法がなかったら鎮火に三日以上は掛かっただろうって」


 微笑みは消え急に塞ぎ込むノエル。表情は頭と共に下がっていた。なにか投げ掛けなければと感じ話し掛けようとしたけどノエルの方が先に顔を上げ真顔で僕を見つめてきた。


「でもね! それって言いかえれば早くに鎮火したってことだよね!? 魔法は便利だったんだね!」


 こう言う時に魔法は凄く便利だと感じる、ただ使用者によっては悪知恵が働くだろうけど。それにしても。


「図書館がぁっ! 大事な情報源がぁっ! なくなったぁっ! どうしよう!?」


 こんな燃え尽きた図書館からでは情報は得られない。改めて図書館を見てもこれからどうすればいいのかが分からない。本当にまずいんですけど。


「情報? セインはなにを調べようとしていたの?」


 ノエル。あ! そう言えば――。確かノエルのお祖父ちゃんは物知りだったはず。図書館の虫と言われたほどだから今後の道筋を教えてくれるかもしれない。だからここは。


「今すぐにノエルのお祖父ちゃんに会いたいんだけど!? どこにいるのかな!?」


 必死にならないと旅支度すらも出来ない。今日中には旅の為に村から出ないといけないのにこれじゃあな。あ。ノエルが一瞬だけ何事かと考えるように首を傾げていたけど止めたみたいだ。


「えーとお祖父ちゃんは火事の影響で今は家の前で呆然としていたわ。こんなのお祖父ちゃんからしても初めてだったみたいね」


 ノエルの家前か。ここはこちらから出向かないと心配事が増えるだけのような。だからここは。


「ちょっと会いに行ってくる!」


 確かノエルのお祖父ちゃんは杖を突いていたな。元は高貴な魔導師だったみたいでその名残が杖として表れていた。ノエルの家は僕でも分かる。行かないと。


「あ!? 待って!? 私を措いていかないで!?」


 どうやらノエルは後をついてきているようだ。だとしたらこのままついて来てもらおう。もしかしたら仲間になってくれるかも知れない。


 そう感じ取った僕とノエルはお祖父ちゃんに会うべく家へと急いだ。確かな記憶によればノエルのお祖父ちゃんは健康だったはずだ。耳は遠くなく会話は普通に出来たはずだ。ここは急ごう。


ーーーーー


 確かにノエルのお祖父ちゃんは家の前で立ち尽くしていた。杖の宝石がついている方を両手で握り尖った側を地面に突かせていた。今も鋭い眼光を放っていそうな雰囲気はさすがとしか言いようがなかった。


 ノエルのお祖父ちゃんの傍まで行き立ち止まると僕に気付いたのか杖と共に全身をこちらに向けてきた。うん。この感じからして冷静さはありそうだった。良かった。最後の希望なんだ。失いたくはない。


「セインか。……うぅむ? ノエルもか」


 遅れてノエルが僕の横に陣取った。どうやら会話に参加せずに聴きに徹するようだった。だから僕は――。


「ガッズ爺さん! 訊きたいことが!」


 今になって思い出しノエルのお祖父ちゃんをガッズ爺さんと呼んだ。なんだか鬼気迫る感じで言ってしまっていたけど気にすることはなかった。


「遂にこの時がきよったわい。感じるぞ。セインや。お前さんの禍々しい魔紋の力を」


 勢いに蹴落とされることなくガッズ爺さんは言い放った。僕の魔紋? この魔紋になんの力が? 分からないけど流されないように気をつけないといけない。


「ええと!? お祖父ちゃんもなの!?」


 どうやらガッズ爺さんだけではなくノエルも感じ取れていたらしかった。そんなに僕の魔紋に力があるなんて不思議だ。あ。いや。村長が言うに最強格の力らしいから隠し切れないのかも知れない。


「危険じゃよ、その力は。とにかくじゃ。世界の敵となったのはお前さんじゃ。紫炎の魔紋はのう。かの従魔帝が保持していたと言われておるのじゃがまさか結界の半減期にくるとはのう」


 従魔帝? ああ。駄目だ。知らない言葉がまた増えていく。ただ言える事はその従魔帝が紫炎の魔紋を手にしていたのか。それがどうして僕なんかに。


「ごほん! 良いか、二人とも。これからセインとノエルは共に旅をするのじゃ」


 ノエルと共に旅をか。これから危険な目に遭うかも知れないのにガッズ爺さんはなにを言っているんだ。この僕がノエルを守り切ることが出来るのだろうか。分からない。


「良いかの! セインはノエルを守り! ノエルはセインを守る! けっして途絶えさせてはならん! この繋がりは運命を超えておるのじゃ! 逃れることなど出来んよ! 絶対にじゃ!」


 ここまできたら守らないといけない。ノエルが共にすること自体は反対じゃない。だからここは――。


「僕の背中……預けてもいいかな? ノエル?」


 嫌な感じはしていないのかノエルは凄く勝ち誇った表情をしていた。それを見た僕はこれなら背中を任せられると感じ取った。最後まで言わせないと分からないけど。


「当たり前でしょ! なんだか分からないけどね! 私の大切な家族が旅をするのに孤立させないっての! よろしくね! セイン!」


 頼もしい。これから僕とノエルにどんな旅路が待っているのだろう。それはきっと過酷には違いないのだろうけど凄く有意義な気がした。男としてノエルを守ることが出来ればいいけどこの魔紋の力がどう出るかは今の僕には理解出来ない。初めての魔紋に浮かれている余裕はないし嬉しいもない。ただ言えるのは僕は生きたい。生きて帰って皆と一緒に平穏に暮らしたい。その夢を叶える為に僕は今を生きる。だってそれは僕だけが叶えさせることの出来る唯一の生き方なのだから。

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