〜雨曇〜梅雨の雨に出会った君は神様だったりするのだろうか。(雨曇読んでなくても大丈夫!)
直すところあったら遠慮なく教えていただけると助かります(*・ω・)*_ _)ペコリ
雨曇読んでなくても大丈夫な作品です!!
良かったら評価、いいね、コメントよろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ
励みになります!!
雨だ。土砂降りの雨。そんな事を気にしていられないほどに、切羽詰まった私は家に向かって爆走している。
テンションダダ下がりだよー傘も持ってきてないから、もうほんと最悪。
「もー!天気予報のあほー!」
晴れって言ってたのに!晴れって言ってたのに!!!!
なんだよ。今日が唯一の晴れ間ですって!洗濯物を干すなら今日しか無いって!今日を逃せば毎日雷雨が降るって!
普通にらいうじゃん!
今日干してきた服も絶対ビッチャビチャだよー!
もう間に合わないのはわかってる。けど走る。咲良は走る。
服が濡れて寒いし、早く帰って洗濯し直さないと明日着る服がない。
毎日毎日雨ばっか降りやがって!……こんなんだから梅雨は嫌いだ。いや、天気予報が全部悪い!!もうあのチャンネルの天気予報なんて信じてやんない。
水たまりを踏んで跳ねた水が冷たくて靴も靴下も濡れて重たいー。
どうせ絶望的な状況なんだ。諦めちゃおっかなぁ。
どこかに休憩できる所ないかな。
ああ、この先にバスの停留所があったっけ。
ベタだけどイケメンと出会っちゃったり?
「イケメンー!」
ふふっ、心なしか足が軽くなったような気がしなくもないわね。
「うわっぷ!!!!」
通りがかった車が踏んだ水たまりから水が跳ねた。遊園地のアトラクションのようにザブーンと、おかげで余すところなくずぶ濡れ。
というか、イケメンが私になんて見向きする訳ないじゃない。
あーもう終わった。
「……もうダメ、疲れた。私ここで力尽きるの」
アスファルトに膝をついて忌々しく灰色な空を見上げる。ああ、雨粒が目に入って痛い。
くそったれな人生だった……。父さんと母さんは2人で旅行三昧で家にはろくに帰って来ない。
炊事洗濯ゴミ出しから遠足の支度まで何でも1人でこなしてきた。
なんだよぅラブラブしたいから世界を旅して来るって。せめて私も連れてけよー。
というか働かないで旅してばっか。どこからそんなお金が沸いてくるのか。
悔しくてスカートの裾を握る手に力が篭もる。
イケメンと恋くらいはしたかったよー!!!
いや、水がかかったくらいじゃ死なないんだけどね。寒いけど。
あまりにも自分の姿が無様で面白かったから悲劇のヒロインを演じてみたかっただけ。
さて、そろそろ立ち上がろっか、無意味だし。イケメン居るかもだし。
立ち上がろうと地面に手を着く、目線はアスファルト。あれ?雨やんだ?
いや、私の周りだけだ。
「そんなところで遊んでたら、風邪ひくよ」
イケメンとは程遠い幼いけどどこか落ち着いた感じの声。
上を見上げてみたら葉っぱを思い浮かべるような緑色の傘が雨と私を遮っていた。
差し出してるのは、緑色の瞳にプックリ頬っぺ、頭に着けてるカエルの髪飾りが可愛らしい女の子が緑色のカッパを着て立っていた。
「遊んでたわけじゃないよ。本当だよ」
遊んでたけど、隠してしまう素直じゃない私に女の子は表情1つ変えない。
「取り敢えず濡れてるから、この傘持って、あそこいこ」
女の子が指さした先には私が目指していた停留所があった。
目と鼻の先じゃん。悲撃のヒロインごっこしてる暇があったらちゃんと前を見るんだった。
女の子が渡してくれた傘をさして、停留所へと歩く。
あ、お礼言うの忘れてた。まあでも、こんな土砂降りの中で言っても聞こえないか。
「ありがとう。命の恩人ちゃん」
停留所について座るよりも先に開口一番、頭を下げてお礼を言った。
「大袈裟だよ」
女の子は本当大したこと無さそうに軽く手を振ると、持っていた傘を畳んで席に掛けた。
それから2人で座席に腰を掛けて、数十秒。無言が続いている。
気まずい。なにか話さないと間が持たない。
「可愛い顔してるね。この辺の子?」
気まずいついでに私の口から出た言葉は、ナンパのような言葉だった。
見た感じ中学生くらいの身なりだけど、見た事無いなあ。服も緑のカッパを着ている。カエルが好きなのかな。
「この辺の子と聞かれたらこの辺の子なのかな。あとね、可愛いって言ったけどボク、男だからね」
そう言って女の子は頬を膨らませた。
は?
「ウソでしょ!私より可愛いじゃん!!」
成長したら美人になりそうなのに!巫山戯てる!神様の遊びなのかしら。
「嘘じゃないよ。証拠は見せないけど」
証拠ってつまりあれでしょ?男性にしかついてない……見たくないと言えば嘘になるけど、見てしまうとこの子の性別を受け入れざるを得なくなる。
本人も見せないって言ってるから詮索しない方が得策だね。
そう、証拠を見なければこの子が女の子と思ったまま幸せに生きていける。
だって悔しいじゃん……。私なんてクラスでは目立たない。友達も居ない。家でも1人。
男の子に可愛さでも負けただなんて……もう嫌になっちゃう!
「ねえ」
「なに?」
「何食べたらそんな可愛い顔になるの?」
「秘密。引かれるから」
そんな……。可愛くなれる食べ物があるのなら是非知りたいんだけどなぁ。
仲良くなったら教えてくれたりしないかな。
「ひかないけどなー」
「ひくよ。絶対」
そんなに頑なになられると……秘訣は食べ物に秘訣があるのかもしれない。
「じゃあさ、仲良くなったら教えてね」
「仲良くなったら尚更言いたくないけどね」
いつか絶対に聞き出してやる。可愛いを得られるならどんなゲテモノでも私頑張るよ。
「そうだ。君は帰らなくていいの?お父さんお母さんが心配してないかな?」
久しぶりに先生以外の人と話したから、もう少し話していたい気持ちはある。
だけどこの子には傘もカッパもあるからここに留まる理由が無い。
「だってボクが帰ったら、寂しいんじゃない?」
子供に気を使わせてる!?
「お姉ちゃん1人は慣れてるから、気にせず帰っていいよ」
そうだ。今まで通りだから寂しくなんてない。
だから気にせず帰ってくれていいんだよ。
「じゃあ、なんで寂しそうな顔をしてるの?」
「そんな顔してない」
「素直じゃないね」
そんな無意識に顔に出てるのかな。自分の顔を手で触れてみる。勿論分からない。
「実は……君が寂しいんだったりして!」
「ふふ、今のところはそう言う事にしといてあげる」
ぐっ、大人の対応された!
「雨は嫌だねえ」
何となく話題が切れた私はポツリと呟いた。
「そうかな。ボクは好きだよ」
「変わってるね」
「失礼だね。咲良は」
あれ、私この子に名前教えたっけ。
というか私、この子の名前すら知らない。
「なんで私の名前知ってるの?」
「最初に名乗ってたよ」
「そうだっけ」
「そうだよ」
この子がそう言うのならそうなんだろう。
「じゃあ、君の名前は?なんて言うの?」
「内緒」
意地悪な奴。可愛いけど、こういう所は男の子っぽい。
「それよりほら、雨の音。聞いてると落ち着くよ?」
そんな事はない。雨が降れば洗濯物が濡れるし、買い物にも出たくなくなる。家に居てもジメジメ、髪も癖がつく。
「これだけ土砂降りだと屋根に当たって煩いだけだと思うけど。洗濯物も濡れるしやんなっちゃう」
なんなら声が少し聞こえづらい。
「主婦みたいだね。咲良には風情って物が分からないのかな」
「そりゃー家事も自分でしてるから濡れたら嫌にもなるよ」
「洗濯物溜めなければ急いでやる必要も無いんじゃない」
ぐっ!的を得ているから何も言い返せない。
「でも仕方ないじゃん!面倒なんだよー。学校もあるのに全部自分でしなきゃいけないんだよ?」
「そうかぁ、咲良は頑張ってるんだねえ」
こんな小さい子に少し褒められただけで嬉しくなるなんて。自分が小さい子供みたいに感じられて恥ずかしくなり、黙ってしまう。
黙ってしまった私を横目に男の子は前に向き直ると雨を眺めてボーッとしている。
男の子に習って私もパチャパチャと地面を跳ねる雨粒を眺める。
確かに、雨が道路を跳ねるのを眺めていると心が落ち着く……かもしれない。
さらに耳を傾けると、弱くなってきた雨が屋根を打つ音も何となく心地が良い。
雨なんて嫌いと思ってたのは良さを知らなかっただけで、少し好きになれそうな気がする。
ちょろい?いや誰かと眺めてるから?1人だときっと鬱屈してしまうのかも。
落ち着いた時間を過ごしてたら段々眠くなってきた。
「くーっ」
小さく欠伸をかみ殺す。
「咲良眠いの?」
男の子が下から見上げるように、私を見ている。キョトンとした顔が可愛い。うん可愛い。
「少しー、ね。ほら、君に習って雨の音とか聞いてたら眠くなってきちゃった」
「あはは、眠たくなるよねえ。ボク。起きるまでここに居るから眠っても良いよ?」
初めて会った人の隣で寝るのも無防備過ぎる?でも、大人ならまだしも子供だからいっか。少しだけ。
「じゃあ、少しだけ」
あー、もう起きて居られないや、瞼が重たい。
壁に頭をもたげて、目を閉じる。
目を閉じたことで聴力のました耳には雨音が更に心地よく聞こえる。
「おやすみ咲良」
そう私に聞こえてきた声はとても優しくて、心地よかった。
――――――――――――
「起きて、咲良」
微睡みの中で、肩を叩かれている気がする。まだ寝ていたいんだけどな。
「さーくーらー」
声はさっきよりも大きい。というか近い。
「わっ!」
目を開けると、眼前には男の子の顔があって驚いてしまった。
私が声を上げると、男の子はさっと顔を下げた。
「咲良、もう少しで雨やむよ」
「本当だ。そろそろ帰れそうかな」
この分ならあと数分後には晴れそうだ。
ね、と同意してもらおうと隣を見ると、男の子が少し目を伏せていた。寂しい、のかな。
ボッチ同士、仲間の感情はよくわかる。
この子は見た目良いからボッチにはならなそうだけど、まあ、なんて言うか雰囲気がそれっぽい。
「やっぱもう少しここに居ようかな」
私がそう言うと、男の子の顔が一転してぱぁっと晴れた。可愛い。
「君がそうしたいならそうしたらいいよ。ボクももう少しここに居るからね」
「君が寂しそうだったからね」
「ボクは話し相手は居るから寂しくないよ」
「嘘だね。素直じゃない子は可愛くないぞ」
そんな私も色んな場面で損をしてる。だからこの発言は完全にブーメランである。
ただ、言わなきゃバレないので黙っとこ。
「男だから可愛くなくていいよ。でも、咲良は女の子だから素直になった方がいいよ」
率直に紛うことなき火の玉ストレートを受けて、思わず顔を顰める。
バレて……た、だと?
「そう言う、男だからとか女だからとかって考え方は古いんだぞー。ツイッターとかSNSで発信しよう物ならすぐ炎上しちゃうんだから」
「でも、寂しいんでしょ。素直に言ってみたらいい。ボクじゃないよ?お父さんお母さんに」
「知った口聞かないでよ。人の家庭の事情も知らない癖に、って言うか私の家の事なんて話してないでしょ。なんで知ってるわけ?」
「うーん。話しぶりから推測しただけだよ?でも、気を悪くさせてごめんね」
ぐぬぬ。こんな小さな子に頭下げて謝られたら、これ以上怒れない。
て言うか現時点で私と話しをしてくれるのこの子だけだし。
うう、今日たまたま出会った子しか話し相手が居ないなんて、寂しい。
「いいよ。唯一の友達だし」
「そっか、友達……か」
あれ、ボッチだから距離感掴めて無かった?1回喋ったから友達とかおこがましすぎた?友達料とか話にしか聞いた事ないけど、あれは都市伝説じゃなくて実際に存在するものだった?
それか怒ったから引かれた?あの日みたいに陰キャがキレたぞー!みたいな?
うわ、嫌な記憶を引き摺り出しちゃった。
「嫌だった……かな?」
「ううん。嬉しいよ。ボクは立場上友達が出来にくいから」
何それ気になる。その後も語ってくれて構わないんだけど、言葉が途切れたって事は、この子の性質上この先は聞いても教えてくれないんだろうな。
「咲良。空、晴れそうだよ」
男の子が空を指さした。
目を向けると、すっかり小雨になった空、少し遠くでは灰色の雲の切れ間が出来ていて青空がちらほら見える。
太陽の光が綺麗だ。
「本当だ」
「雨があるから、晴れが引き立つともボクは思ってみたり」
「君の言う通りかも。私も見蕩れちゃったよ」
また、2人でじっと空を眺める。この子には良いことを教えて貰った。うん、雨も晴れも、曇りも好きかも。
「咲良は」
ふと、男の子が口を開いた。
「金髪の男の娘の話し知ってる?」
「男の子?知らないけど」
金髪の男の子?ニュースの事かな。
テレビ見ないからわかんないや。
「咲良と同じ学校だった気がするんだけど、ボクと同じくらいの身長の」
ああ、それなら聞いた事がある。確か4組に居る春日……悠太くんだ。
男の子なのにすんごい可愛いとかって、うちのクラスでも話題に上がっているのを聞いた。見た事は無いけど。
「お兄さんとか?」
「ううん。ボクと悠太は血縁関係にはないよ、ただ」
「ただ?」
「何か困った事があったら頼ってみると良いよ。あれの弟だからきっと相談に乗ってくれる」
「ほえー。お友達の弟さんなんだ?」
「友達じゃない。知り合い」
今までやたら冷静だったのに、少し表情を崩しながら否定してきた。
「その春日くんてどんな人なの?」
「素直じゃない。口が悪い。頭は悪くないけど猪突猛進。脆い。あと弱い」
酷い言われようだ。まるで見てきたような口ぶりだね。
「でも、熱い奴だよ。悠太は」
ふっと笑って男の子が言った。そんな表情も出来たんだ。可愛いんだけど、不覚にもキュンと来ちゃったんだけど。
「なんか君って私の事もそうだけど、春日くんの事にも詳しいんだね。て言うか全部知ってる。みたいな?」
うん、この子やっぱおかしい気がする。
「ボクは全部見てきたからね」
「ストーカーってやつ?」
こんな見た目の癖して犯罪に手を染めるような子だった?
「違う。けど、まあいいや。そろそろか。最後に咲良。ストーカーのボクから助言だけど、怒らないで聞いて両親に対して素直に話してみるといいよ。ボクが言いたいのはそれだけ」
男の子が勝手に話を進める。家の事を掘り返されて怒りたいけど私の頭の中は?だらけだ。
「ほら咲良。晴れたよ」
男の子が空を指さした。男の子から目を背けたくないのに、私の視線は自然と男の子から外れ空の方を見てしまう。
雨雲の無くなった空は青く、雲は白く、太陽が地面を照らしている。
待ち侘びた青い空の筈なのに、隣に居る男の子のせいで私の胸はザワついている。のに何故か心のどこかではスッキリしてる。
晴れた空がそうさせているのか。男の子の言葉がそうさせているのか私にも分からない。
男の子に、クレームを言ってやろうと男の子に向き直ったけど、居ない。
そこに居た筈の席には、濡れたカッパの後もない。傘も、あの子のいた痕跡の一切もない。
白昼夢?私統合失調症になっちゃった?
付近を見渡しても、足跡ひとつ無くなっていた。
「ありゃ、居なくなってる。名前も聞いてないのに」
諦めた私は家路に着くことにした。家に帰った私は、濡れた洗濯物をもう一度げんなりしながら取り込み洗濯機にかけた。その時、洗面所で鏡に映った自分を見て、それを見つけた。
「あ、髪飾り。あの子のやつ」
なんだ、白昼夢じゃなかったのか。良かった。あの子は確かに居たんだ。
てことはまた会えるのかな。
成長したらイケメンになりそうだよなぁ……ふふふ。
こりゃおねショタな展開を望んでいいのかな!?髪飾りもくれたわけだし!!
「ねえ、君の名前は何?」
答事のある訳ない質問を髪飾りに問い掛けた。
頭がおかしくなった訳じゃない。これがあると、あの子が傍にいるような気がするんだ。
――――吹雪――――――
1人のはずの我が家で、あの子の声が聞こえたような気がした。
その夜私は思い切って両親に電話してみた。
ストーカーと言うには優しすぎるあの子の言う事を試して見る事にしたんだ。なんていうか失敗しても元々1人だし、問題ないと思ってた。
でも、結果は違った。両親は現実が見えて無かっただけだった。
本当に、ラブラブしすぎて、それ以外見えて無かっただけ。
今までぽっぽとかれたんだ。しばらくは許せそうにないけど、私が寂しい、と言うと来週末には帰ってきてくれる事になった。
本当にあの子は何なんだろうか。神様だったり?
でも、本当。感謝しかない。ありがとう、吹雪。