蓮とピンパの出会い
蓮はいつになくウキウキしていた遠くなったピンパの背中をじっと見つめながら、腕を組むとふと思いに耽った。
ピンパとの付き合いはかなり古く、出会ったのはまだ大学生の頃だった。
蓮は日系人とアメリカのハーフで、今こそ二重の堀深いはっきりとした顔立ちだが、小さい頃は日系人である母に似て奥二重で女性的な顔立ちだったため周りとは似ても似つかなく浮いていて目立っていた。
中学から始めたバスケットボールの影響もあって背が高校になってから急激に伸び始めたのだが、小さい頃は背が女子と変わらないくらいでほっそりして目が悪く黒ぶち眼鏡を掛けていたせいで余計に気弱そうでひ弱そうに見え、周りは金髪碧眼色白に対し、黄色い肌に黒々とした髪色と目のせいでよく仲間外れにされた。
成長過程で背が伸びると同時に顔も伸び二重になって男らしい顔付きになったのだが、成長しなければもっと日本人顔だったと思われる。
ただ仲間外れにされたのは、見た目だけの問題ではなく、家柄も関係していて、子供心に自分達とは異質だとそう思われていたのだろうと今では思う。
腐れ縁である匡は、家柄の関係で小さい頃からの仲である。現在は直属の上司であるが、昔は敬遠の仲であった。それは匡も複雑な家庭環境であって、母親が日本人、父親がアメリカ人で、父親はアメリカでも指折り数えるくらいの大富豪であるからだ。
犬猿の仲というのは、小さい頃は背が匡の方が高く家柄が格上であったし、口数少ないくせに、生意気で一匹狼みたいなところがあって大人ぶったところがあり、更に度胸があってやんちゃなところもあって、まるで小猿のようであったからだ。
今とは別人とも言っていいほど、冷戦沈着でビジネスシーン以外は他人の前では物静かだ。ただ、それも色々とあって、身に付いた処世術にすぎない。
ピンパのことを思い出していたはずなのに匡の思い出に切り替わって、腐れ縁だなぁとしみじみ思いつつもまたピンパの思い出に浸る。
大学にもなると共通の友人を介して犬猿の仲だった匡とも仲良くなり、同じ大学に通っていた。お互い一人っ子であり、跡継ぎという立場があって同じ経済学科だった。本来は、蓮の方が三つ歳上のため別の学年になるのだが、頭が良かった匡は飛び級して同じクラスにいた。
そして、ピンパに初めに気づいたのは、匡であった。
「何、あれ?」
ここはアメリカである、日本語も学んでいてペラペラだったが日常会話は二人とも英語である。英語で、匡は机を付きながらつまらなそうな顔をしてぼんやり教室の窓から外を眺めてぼそりと小さな声で言った。
「何って、何が?」
授業中である、大きな声は出せないのでお互い控えめである。匡は教室の中間くらいの窓際の端っこにいつも座りその隣が蓮で、なんだかんだと一緒にいたのである。
この二人はある種有名で、家柄もあって近寄りがたいと教員さえも一目置く存在であった。
目の前の巨大スクリーンに、教員がタッチペンで書くと言っても昔みたいに黒板にチョークではないので音など大して出ないのである、教員がマイクで話していない時は静かなもので、小声であっても何か喋ってるなというのは分かってしまう。だが、先ほど述べたように一目置かれていて、二人の会話は聞こえないものとして授業は進んでいた。
匡が指差す方に顔を向けた蓮は、匡の方に寄り掛かって窓の外を見た。
「ピンク頭??」
「そう。不釣り合いな、ピンクイエローモンキー」
「...お前も俺もある種、ルーツはイエローモンキーだろ?」
「まぁ...何にしてもあんなのは、ここでは珍しいって、話」
「...確かに」
ここ大学はアメリカいや、世界でも有名な大学で、世界各国から学びにくるため日本人が特段珍しいわけではない。
ただそこにいた青年は、背は低めで百六十から百七十センチの間くらい、頭がどピンクで、猫背の痩せ型。ショッキングピンクの上下のジャージを着て、ミディアムくらいの髪の長さでメタリックなピンクのカチューシャで前髪を上げて、サングラスもフレームがピンクなのである。
そこまで近距離ではないのでここからでは全身までは見えないが、全身ピンクだろうと予想は付く。こんな格好は、いくらアメリカが自由で派手好きが多いとしてもあそこまでとんがった感じなのは珍しいし、ここら辺では見かけない。
何せ、ゆくゆくはどこかの社長、官僚になるというような人間が集まって勉学に励んでいるの場所なのだ。しかもこの学科は、大学の中でもトップクラスで偏差値が高く他の学科とは別棟になって大学の中でも一等地に立っている特別棟と呼ばれていた。大概大学生にもなると落ち着くもので、あんな感じに浮いた学生はいる訳もなく明らかに毛色違うと言っていい。
匡はある事をきっかけに日本人を少し毛嫌いするところが見受けられ、言動がこちらも今のご時世にしてはとんがった言い方だが分別はきちんとしているので蓮以外の人間に言うこともないのだが、物言いはこうであっても、珍しく興味があるような目をしていた。
授業が終わって、昼休み。同じ科目を取っているため、いつも行動パターンは一緒。
その日の午後は授業がないので、自然と帰る運びといつもならなっていた。迎えの車もすでに来ているし、いつも通り近くの行きつけの会員制高級レストランで昼を済ませる予定で、学食で食べることもない。
だがどうも気になって仕方ないらしく、匡はいつもの通りの道を真逆に歩き出した。
「どこ、行く気?」
「なんで、あんなクレイジーピンクが、校内を彷徨いているのか...気になる」
匡の後ろをお供のように歩いていた蓮に足を止めて振り返り、律儀に答えた。
「あーまー将来、ここの運営もする感じだから、警備はどうなってるのかって気になる?」
匡の家は、この大学の理事である。当然、いつもと違った行動をしているのだ、普通はそう思ってもおかしくはない。
「そこは特段関係、ない。警備が万全なのは、知っている。ただ、それを無断で潜り抜けて入れるとも思えないし、多分、誰かに招かれて入ってきたのだろうと思うから、そこがちょっと気になって」
「あぁ〜......まぁ、あんなクレイジーピンクがお友達に友達がいるとすれば、この大学では一人だけだろうな」
「だから、そこへ向かう」
「そ。じゃ、あんまり遅くならないように、ちゃっちゃと済ませよう」
なぜクレイジーピンクが入ってこれたかは予想出来ており、匡の向かっていた方向からもそれは伺えた。
蓮は自然にすっと匡の横に並ぶと、その並びが当然というようにまた二人は歩き出す。
着いた先は、森のような場所でその奥には年代物の大きな図書館があった。
そこに目的の人物二人、いると思ったのだ。クレイジーピンクはあくまで予測だが、もう一人はここの図書館司書なのだ。
世界のトップクラスに入るこの大学で、変人が紛れられるとすればここくらいのものである。と言っても、性格に難があるだけで頭脳明晰なのは他の教員と変わらない。
図書館敷地内にあるので、大学パスカードを持っていればいつでも入れる。蓮達はパスカードで中へ入り、フタッフルームと英語で書かれた部屋へと迷うことなく進んで三回ノックすると返事も待たずに入っていった。
「...ん?やぁ!タスク、レン!あーれ〜?どぉ〜うしたぁ?」
ゆったりとした独特な口調で話し掛けてきたのは、ここの司書である。
この背の高い男、百九十センチ以上はゆうに超えていて猫背ではあるが、普通にでかいと感じる。長いボサボサ頭の茶色の天然パーマを後ろで緩く束ね、何故か白衣を着て、紫色が入ったレンズの眼鏡をし、口から顎全体に髭があってもっさりした印象である。ただ目は垂れ目で緑色をしており、その目を見れば穏やかな印象を持つ。ただ遠目からだと、威圧感があり熊みたいなのは否めない。
「どうも、ジョン。ちょっと、気になることがあって。全身ピンクな日本人らしい子、ここにいるんじゃない?」
蓮達は扉の前で立ち止まった。その少し奥に大きなジョンが立っているのだ、その奥は当然見えない。ただそう言った匡は腕を組んだまま、表情も変えずじっと奥を見ている。
「あぁ!!彼の事だね!」
ジョンがピンと来たようで少し移動すると、ジョンの目の前にいたクレイジーピンクが座っていた。ジョンの巨体で、小さく縮こまって椅子の背もたれの方に跨って座っていて隠れていたようだ。
「その子、ここの子じゃないよね?」
匡の視線が視線がクレイジーピンクに止まると、ゆっくりとそう言ってからジョンの方へ視線を向ける。もちろん表情は全く変わらず、何を考えてるか読めない。
「あぁーいや〜、そうね〜。でもさぁ〜、怪しい子、じゃぁ〜ないんだよぉ〜。ちょっとっさ〜、僕が手が離せないからさぁあ〜?わざわざ、来てもらった、それだけなんだぁ〜」
「そう...まぁ、そうだろうとは思ったけど、ここの大学では不相応な格好だったから、仮にも教鞭の資格を持った者なら、事前にちゃんと指導すべきだったんじゃないかって思うのだけれど?」
「まぁ〜まぁ〜、それは言い忘れたと言うかぁ〜。何というかぁ〜。浮いちゃってるよねぇ〜、彼。守衛さんにさぁ〜、不審者扱いされて止められたって言ってたしぃ〜。まぁ、電話で事済んだけどねぇ〜。でもさぁ〜、彼、ついさっきこっちに着いたばっかしでさぁ〜ぁ。僕の家の鍵渡すにしてもさぁ〜、来てもらわないとどうにもこうにもねぇ〜」
「そう...つまり、今後同居人になる子ってことね」
「そうそう」
ジョンの間延びした話を顔色一つ変えずに聞き終えてから、匡は話の内容からそう予測して話した。
ただ、ジョンがやっと分かってもらったとにこやかな笑顔をしているのに対して、やれやれと言うように小さなため息を一つ漏らした。
それもそのはず、ジョンは本の虫で有名で、教員免許も持っているし、博士号も持っている、謂わば天才である。
IT関係ではかなり有名なのだが、教えると言うことが兎に角不向きで、人間と向き合うより本と向き合う方が楽で好きと言う変わり者。ただ大学側もジョンの才能は認めており、天才プログラマーとして確保しておきたいのもあって、こうしてある種図書館に閉じ込めているのである。
この図書館はジョンのためにあるようなもので、図書館には不釣り合いのパソコンルームがあり、別件の仕事が入るとそこに篭れるようになっている。しかも泊まれるようにベット付きと、ある種優遇されているのだ。
そんなもんで、ジョンは自分のマンションを持っているがほとんど帰らずに図書館に入り浸っているので、ジョンの言う手が離せないは、ただ単に外へ行くのが面倒で嫌だからと言うだけの理由なのは、蓮達は承知の上なのであった。
ちなみにシャワーはついておらず、ボサボサなのは風呂に入るのが週に三回くらいなのである。だから、蓮達はジョンに近寄らない。いくら部屋は清潔で換気ができていい清浄機がついていようと、本人に近づけはそれなりに臭うからだ。
「あー...すんません。今、そんな金なくて、一張羅がこれしかないんっすわ」
クレイジーピンクは座ったまま、ジョンと蓮達を見比べた後に申し訳なさそうな感じで頭を下げてそう言った。
それが蓮とピンパの初めての出会いだった。
それから匡がなぜか興味深々と言うのも、匡に対して物怖じしない態度が気に入ったらしかった。それもそのはず、大概は匡を敬遠するか媚びへつらう輩が殆どだったからだ。家族や蓮、数少ない友人を除けば、ピンパのような存在は、匡にとってはとても貴重だったのかもしれない。
蓮も知らないうちに、匡は初の出会いでちゃっかり連絡先の交換していた。
貧乏で健気で努力家な若者と言うのが、誰かを思わせたのか、珍しく匡は些細だが世話を焼いていて、食事を奢ると蓮の家によく連れてきたものだ。
蓮は、自立目的で大学の時から実家を出て一人暮らしだったのもある。匡は実家暮らしなので、自分の家に招くのは流石に難しいのは分かるが、正直蓮は初めは少し面倒であった。ただ、食事は全て匡持ちだったので、自炊していた手前自分で作る手間が省けて楽で文句も言えなかった。つまり、昼食も匡が奢っていたのだ。
ピンパは遠慮しないたちなので、そんな状態が続けば仲良くなるのは必然であった。それに、ピンパは見た目は今も変わらずこんなだが、根はとても真面目で英語も堪能で基本がポジティブで明るい性格で人懐こい性格で、蓮と同い年と言うのもあり話しやすかったのだろうと思う。
ピンパは十代の頃から日本で、アイドルをしていた。日本では有名な男性アイドル専門事務所に、本来はオーディションで受かると入れる激戦区な所らしいが、スカウトされてと言うのがきっかけだったらしい。もちろん普通にしていれば所謂可愛い系イケメンと言う感じである。ただそれだけでなくダンスを小さい頃からやっていて、子供ダンス大会では優勝するほどの腕前で、そこそこ子供にしては有名であったのもスカウトの要因だったらしい。
日本ではデビュー当時から人気なアイドルグループで、そのセンターとリーダーを任されていた。初めは順調で、それこそ看板アイドルだったらしい。
ただ、歳を重ねていくうちに、時代の流れ、つまりは世界の流れに対して日本は遅れている、そう感じたのだそうだ。
その認識は間違っておらず、AIシステムが盛んになってきた、ちょうどその時だったのである。
つまり、ピンパはかなり感が鋭いと言える。
ピンパはいつか、AIにアイドルも押されて行く時代が来る、根拠はなかったがそんな気がしてならなかったのだと言う。ただ、日本ではAIは導入されているもののさほど活発に活用されておらず、ピンパの懸念は、周りからバカにされたのだ。
それでもピンパはきちんとそれなりのレベルの高校を出て、ただアイドルをしているだけではなく、英語が得意だったのもあり経済も気にして、英字新聞のWEBサイトも欠かさず見ていたのもあって、懸念は消える所か不安が影を落とした。
人一倍努力家でもあったピンパは、センターでリーダーであると言う責任感から誰よりも歌にダンスに練習し、事務所の練習だけでは飽き足らず、プロレッスンも受けていたようだ。
体力トレーニングにしてもアスリート並みにこなしていて、側から見れば異常とまで思われたいたほどだったらしい。
懸念が消えないからこそ、それを打ち消すために自分を追い込んでいたのもあったようだ。
ただピンパは一人でアイドルデビューした訳でもなく、グループだった、と言うのが問題だった。
結局の所、ピンパのグループは確かに人気を博したが、若い子が次々にデビューすれば人気も徐々に落ちていったそうだ。それもそのはずで、ピンパ一人頑張って、あとは人気に調子づいて練習もそこそこで、色気付いて遊び回り他の芸能人や一般人とスキャンダルを起こすは、悪い奴らと仲良くなって違法なことに手を染めるなど、事務所も手を焼く程で、十人いたはずが問題を起こして辞めていき、最終的には五人しかいなくなっていたのだそうだ。
そうなってくるとグループとして再度上を目指すよりも解散して、個々の将来を心配して考え始めてきてしまうもの。ただ、ピンパは諦めたくなくて、もっと本気を出せと他のメンバーを叱咤しきつい練習を迫ったという。
それが元で、解散。
事務所も結局は何もしてくれず、嫌気が刺したピンパは事務所を辞めて今まで貯めに貯めたお金で、叔父の友達を頼って単身アメリカまで来たのであった。
ピンパは自分の才能はダンスにあると思っていて、そこを諦めたくなくアメリカに渡った訳であるが、伝もない状態でうまく行くはずもなかった。
有名なプロのダンススクールへとお願いしにいっていたが、日本で活躍してたくらいのレベルでは相手にもされなかったらしい。門前払いであったが、それでも毎日毎日通い詰めては、ジョンのマンションで自主練を欠かさず行っていた。
ジョンのマンションの部屋はでかい割に、全くものがなく高級なハイテクなパソコンと周辺機器一式がでーんと置いてあって、その横にキングサイズのベットがあるだけなのである。本好きなら本棚がありそうだが、実質別荘みたいな図書館を与えられてからはそっちに全部寄贈してしまったのである。
部屋の掃除はまめにする方で、そうしないと穏やかに本が落ち着いて読めないかららしいのだが、あとは無頓着で料理もできないし、下手すれば一日どことか二日、最長三日も食べないこともある。当然ぶっ倒れたことがあって、食事付きの図書館を与えられたというのは有名な話であった。
そんな訳で本を沢山置くために購入された部屋は、本がなくなれば本棚も必要なくなって片付けられ、ただただ無駄に広い部屋。ダンスレッスンくらい全く問題く、ピンパにとってはおあつらえ向きだったのである。
蓮達もピンパと仲良くなると、ジョンはほぼ帰って来ないし二人はいても何も気にせず、ちょくちょくジョンの部屋に遊びに行っていた。
パソコンとベット以外ない部屋でピンパの練習が終わるのを待ってから、買ってきた食事を行儀悪いが地べたにおいて食べたり、年相応にはしゃいで色々話を沢山し、くつろいでそのまま寝てしまい寝泊まりもしていた。
何せ、蓮達はピンパのダンスに魅力された部分があって、ピンパのダンスを見ていたいという理由もあったからだった。
だからといって友達として普通に接するだけで、蓮達であればコネは充分あったがピンパに情けをかけることはせず、ピンパもそれを望まなかった。
それが一年以上続いた。
ピンパはバイトしながらダンスを続け、中規模だがダンス大会に出場して優勝した。そこでやっと目を掛けられるようになった。
当初のダンススクールではなく、メジャーな歌手のバックダンサーをしている有名人がたまたま大会の審査員が興味を持って声を掛けてくれ、その人の弟子になってメキメキとピンパは成長した。肉体改造トレーニング込みだったため、小さくとも数年後にはアメリカでも結構名が知れるほどになった。
それから長く弟子をしていたが、いい加減独立しろと言われたらしく独立したのだが、そこからは消息不明になっていた。と思えば、ミーチューブというアメリカ、今は世界中で人気の動画配信サービスで、トップ配信者となっていた。
それが今のピンパであり、素性を全く隠して、今も人気絶頂な、素人ダンサーと偽ったプロ配信者だ。
もちろん、蓮達の会社、つまりは匡の会社のごく一部の人間達は知っている。
何せピンパは、MDbsプロジェクトのメンバーであり、正社員なのだ。
だがそれも全く非公開であり、ピンパが有名なプロダンサーということも全て金の力で隠している。他にも、それぞれの業界のプロをプロジェクトメンバーとして迎えており、そのメンバーこそ、ChemWの創立メンバーであった。
勿論、神来匡は本名ではないし、蓮も同様である。MDbsメンバーは極秘とされて、蓮と匡以外は非公開となっているのである。だから、プロジェクトメンバーに、誰が関わっているかは全くもって知るものはメンバー以外にはいないのである。
また、ChemWのシステムがこれだけ優れているのは、ある人物のお陰でもある。
それは、あの時の変人天才プログラマーのジョン・ハーバーである。
ただ今もジョンは、図書館に住み続けているが、今も正式なプロジェクトメンバーの一人である。
蓮は思い出を振り返るのを止めると、ピンパが消えていった先を見続け、意味深にふっと笑った。