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孤独の果て  作者: 伽藍堂
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7.意外な事態

ーやるなあ


 探索を進めていく中で、ウェインは内心感心していた。対象はリーダーを務めているフェリアである。


 本探索において、最初から他のメンバーの戦闘時の動きについてはあまり期待していなかった。

 魔法を扱う腕は高くとも、戦闘、それも集団戦においてうまく運用できるかということは、全くの別問題だからだ。むしろ探索開始時のひと悶着で、評価を下方修正したくらいである。

 お互いに協力しようという意識をあそこまで持ち合わせていなければ、戦闘でも同様だろう事が予想された。

 まあ、リーダーを務めるフェリアが多少はマシかもしれない、という程度だろうと。


 実際に探索を開始して数戦してみれば、ほぼウェインの想定通りだった。

 フェリア以外の4人は、何も考えずにやみくもに攻撃するだけ。

 フェリアは一応ほかの4人と比べればある程度の基礎は出来ているものの、まだまだ自分の事のみに意識が行き過ぎている。

 幸い、ウェインは戦況の把握やコントロールが得意な方なので、それでも戦闘が成立するよう動くことは難しくない。

 相対する魔物の行動も単純な相手ばかりなので、これほどにひどい状況であっても、ウェインが気を付けてさえいればさして苦労なく仕留めることができる。

 だが、このカリキュラムの目的を考えれば、そうやってウェインの力だけで状況を成立させてしまうというのも、あまり良くないことは確かだ。

 その為に、今日の探索終了後にでも、まずは話が分かりそうなフェリアに伝えようと思っていたのだが。


 フェリアだけはある程度の戦闘をこなした段階で問題を感じ取ったようで、すぐに動きを改善してきたのだ。

 しかも、その改善速度が非常に速い。

 通常、自分が抱える問題点に自分で気付えるか、という事だけに限っても出来る人間はあまり多くない。他人に指摘されて初めて気付くという人間も多いし、中には指摘されてすら認めない人間もいるほどだ。

 これが、さらに自力で改善出来るかとなると更に数は減る。

 ましてや、フェリアほどのスピードとなると、極めて少ないと言ってよいだろう。

 それを実現するためには、まずは状況を見極める観察眼、冷静な判断力、優れた思考力や実行力、柔軟性など多くの能力を要求される。その上で、自分の動きを変えるための引き出しの多さも必要だ。

 探索開始直前の判断を聞いて非凡な人間であるとは感じたが、ここまでとは思いもしなかった。

 ウェイン自身は確かに彼らよりも数段高いレベルの実力を既に身に着けているが、能力が高いというよりは先に歩いているという要素が大きいと思っている。

 それ故に、フェリアの改善速度は心から賞賛に値すると感じたのだ。


 この数戦では更に高度な取り組みを開始しているし、まさかウェインのサポートまで考えて動くようになるとは思いもしなかった。

 例えば、仲間の攻撃に合わせた偏差射撃により魔物の動きを制限したり、ウェインからアタッカーへ魔物が注意がそれそうになった時に魔物の行動を妨害するための魔法を選択したりといった事だ。

 また、ウェインの動きを直接サポートしたり、他のメンバーの火力を補助したりといった行動も増えている。

 通常近接職とはいえ、自らへの魔法による補助は自前で行う。と言うか、自らに必要な補助魔法を自分で使えない人間は、どんな職種であれ戦闘に出られない。

 だがしかし、それでは他者への補助がまったく要らないか、といえば決してそんなことは無いのだ。

 状況によっては他者に補助を重ね掛けした方が有効なケースも多いし、近接職はただでさえ負担が大きいので、パーティーメンバーが補助をかけることは大きな意味がある。

 もちろんここにも様々な考え方がある。

 例えば近接職への補助を厚くするよりも、攻撃の手数を増やした方が戦闘時間が短縮され、結果的に負担が少なくなるという状況もあるだろう。

 だがしかし、今回のように1人で魔物を抑え5人がアタッカーというのは、火力役が過剰気味で攻撃機会の面で言ってもあまり効率が良い役割分担ではない。

 一応ウェインが成立させてはいるが、本来であれば一人くらいは補助メインに立ち回り、全体のバランスを取った方が効率が良いのだ。

 それをフェリアは一人で気付き、凄まじい速度で改善し続けている。

 試しにウェインがフェリアの動きを織り込んだ動きに変えてみれば、それに呼応するかのように更に動きが最適化されていく。

 それは、探索者として活動していく上で、最も大切にされている連携力そのものだ。


 魔物とは、相対する種類にもよるが、通常1対1で戦って勝てるような相手ではない。

 もちろん高レベルの探索者ともなればそれを実現させる者もいるが、現状においてはパーティーで対処に当たらなければならないケースが圧倒的に多い。

 だからこそ、相手が強力になればなるほど連携が重要になることは、当たり前に理解できるだろう。

 しかし、そのことを知識として理解するのと、実際の現場で行動に落とし込むのとでは、その難易度に天と地ほどの差がある。

 今回の探索は、最初は下手をすると失敗に終わるかもしれないとすら思っていたが、この分だとまず問題なく突破できるだろう。

 問題と言えば、残りの4人がこのことについてまったく理解できないまま合格してしまう可能性があることだが、まあそこまで心配しても仕方がない

 どうせ次の高等部のカリキュラムでいくらでも突きつけられる機会はあるので、早晩ぶつかることであるし。


 少なくとも、フェリアがリーダーのチームに配置となったことは、ウェインにとってこの上なく幸運だったといえる。

 だがしかし、それでも気を抜くことはないが。

 いくら難易度的に最も優しいダンジョンで、これ以上の難易度のダンジョンにも何度も潜っているとはいえ、僅かな油断が危機を招くことは珍しいことではないのだから。


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