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孤独の果て  作者: 伽藍堂
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2.フェリア・アルジェント

 フェリアはアルジェント家という伯爵家の長女であり、現在王立魔法学院中東部の3年生である。アルジェントとは今はもう使われていない古い言葉で銀を意味し、その名が表すように瞳の色や神の色が銀色になることが多い。

 フェリアはその中でも特に鮮やかな銀髪を持っている。ノートシス王国では銀の髪を持つものは珍しいために、貴族であることを除いても注目を集めやすい。


「フェリアー、今度の探索カリキュラムの組み合わせどうだった?やっぱり全員総合職パーティー?」

「いいえ、一人近接職の人が入っているわよ。」

「うそ!?フェリアの成績なら、絶対に全員総合職だと思ったのに!?」


 クラスメイトの問いかけに応えると、驚きの声が帰ってくる。

 基本的に探索カリキュラムにおいて、ある程度分散させるとはいえ、成績優秀な者同士でパーティーが編成されることが多い。パーティー内に極端な実力差があると、大きな齟齬を生む理由になることがあるからだ。

 そして、成績上位者のほとんどは総合職が占める。ゆえに、上位のパーティーは総合職のみで構成されることが多い。

 だから、フェリアも目の前のクラスメイトが言う内容が、分からないではないのだが……


「ちなみに、近接職ってだれ?」

「ウェイン・ルートフォードさん。貴女も名前は知っているでしょ。」

「ああ、あの人か……でもなあ、いくら理論が凄いからって、結局は現場でどう動けるかでしょ?

いくら近接職として優秀でも、総合職に食い込むっておかしい気がするんだけどなあ。」


そう話すクラスメイトを、何とも言えずに、曖昧に受け流す。

ウェイン・ルートフォードが有名なのは、3年間を通して共通理論の成績が断トツでトップだったからだ。

なお、基本魔法実技の実力と理論は概ね比例すると言われているが、総合的な成績では上位に属さないウェインは数少ない、というか唯一の例外である。


 ウェインは共通理論と専門実技が断トツの首席ながら、共通実技については平凡な成績である(因みに専門実技は学院内での席次には加算されない)。

 だから、総合的な成績という意味では総合職には及ばないかもしれない。

 だが、これまでの学院内での成績はあくまでテストで測ったものでしかないし、それが実際の探索カリキュラムでの実力にそのまま反映されるわけでもない。

 そもそもウェインの探索における実力を知らずに論じれることではないし、総合職の自分たちがカリキュラムを突破できるだけの実力を持っているかも分からないのだ。

 ただ一つ分かることは、このクラスメイトは探索カリキュラムを突破するのに、相当に苦労するのだろうなということだけだ。


 確かに王立魔法学院は教育機関として最高峰であり、探索者を養成する機関でも間違いなくナンバー1ではある。

 だが、それでも現実の探索者との隔たりは相当なもので、その中での序列など50歩100歩である。

 実際フェリア自身は学院の中でもトップクラスの成績を修めているが、現役探索者のサポートの元参加した実戦訓練で、彼らとの差があまりに大きい事を思い知らされている。

 いくら総合職が成績上位意を占めているからといって、探索者と比すれば等しく未熟者であることに変わりはないのだと。


 それに、総合職、近接職、後衛職の3職はあくまで特性が違うだけであり、探索における実力の高低は職種では決まらない。

 確かに王立魔法学院の評価の仕組み上成績優秀者が総合職に固まっているが、自分たちが探索において近接職や後衛職の人間よりも優れていると考えるのはただの驕りだ。

 それぞれの職で求められる役割が違うし、もっと言えばその時々のパーティーの編成でも変化する。

 だからこそ、己に求められる役割をしっかり果たせるかどうかが重要であり、どの職種かというのはあくまでパーティーのバランスや基本戦術を考える為に考慮するものでしかない。

 一緒に活動してもらった探索者にも近接職や後衛職の人もいたが、その実力は本当に凄くて、尊敬することしきりであった。

 つまり、近接職や後衛職が実力で劣っていると思い込むのも、自分たち総合職は優秀だからすぐに突破できると思っていることも、害にこそなれ助けになどならない考え方なのだ。


 この探索カリキュラムは、学院で学んだことを真に理解していれば、十分に突破できると説明されている。互いの連携がしっかりしていれば、問題なくクリアできると。

 しかし、この連携というものが曲者なのだ。特に戦闘時の連携については相当に苦労することになるだろうし、探索者と一番差があるのもここだ。


 学院の中等部においては、戦闘時の連携について踏み込んだ内容は教わらない。ただ、連携の重要性が説かれるのみだ。

 そして殆どの人間は、そんなこと当然に理解していると思っている。仲間と協力し合うことなど当たり前だと。

 だから、学院の中等部で特に踏み込んで教わらないのは、そんな当たり前のことをわざわざやる意味が無いからだ、と思っている人間が多い。

 だが、それはとんでもない過ちだ。


 フェリアも最初はそこまで感じ取れていた訳ではないが、現時点ではこの連携についてが最大の悩みである。

 探索者が当たり前にやっていることが、自分ではどんなに気を付けても上手く実現できなかった。何とか改善しようと頑張っても、殆ど手ごたえを得ることが出来ずに現在に至っている。

 今回の探索カリキュラムは6人でパーティーを組むことになるが、それがそのまま6人分の実力が足し合わされるとは限らない。

 お互いに連携することが出来れば相乗効果が期待できるだろうが、逆に連携がう上手く行かなければ半分以下の力しか出せないかもしれない。


 何が連携力を高めることになるのか、未だにほとんど分かっていない。

 一緒に活動してもらった探索者にも聞いてみたが、そのことについて教えるのは学院より禁止されているらしい。

 どうやら、自分で気付け、ということのようである。

 それは学院も連携の重要性を把握しているということであり、このカリキュラムにおいても重視されるのはそこなのだろう。

 ただ、未だに理解できていないと言っても、お互いに敬意を払う気持ちを持っていなければ、連携するためのスタートラインにすら立てないだろう、という事位は流石に分かる。

 あの人は私より下、あの人は上、そんな意識で臨んだのでは、互いに協力して連携するなど出来るわけがない。

 余裕がある時はまだいいかもしれないが、困難にぶつかったときに如実に問題として表れるだろう。


 今回のパーティーにおいてはフェリアが成績最優秀者ということもあり、リーダーを任される事になっている。

 しかし、己の未熟さですらどうすることも出来ていないのに、皆をまとめる事などできるのだろうか、と今から不安である。

 それでも、その日はもう目の前だ。

 個人的な印象では準備不足も甚だしいのだが、かといって時間をかければ準備が整うのかと問われれば全くその目途も立たない。


 自分の考え過ぎ、取り越し苦労で終われば幸いだが、残念ながらそんな結果に終わる可能性は非常に低い。

 結局、ある程度はもう開き直って、この探索で何を突きつけられるかを受け止める位に考え、突破までは望まない方が良いのかもしれない。

 だが、そんな気持ちで臨んでは、ただでさえ突破の見込みが低いのに、更に可能性を狭めることになるのではないか、という気がしないでもない。

 結局、あれこれと悩みながら迷いの中、探索カリキュラムに臨むことになるフェリアであった。

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