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孤独の果て  作者: 伽藍堂
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20.事後処理

「終わった……の?」

「ああ、奴らは少々特殊な体のつくりをしていてな。魔結晶と呼ばれる物質を体内に宿し、これが生命の核となっている。まあ、俺たちにとっての心臓みたいなものだな。いかに強靭な生命力を持っていようと、こいつを貫かれればひとたまりもない。

もっとも、体内にあるといってもあまり単純な話じゃなくて、実際に攻撃する際には少々工夫がいるが。」


 隔離結界の持続時間が終了し、ようやく発したフェリアの問いかけに、そう説明するウェイン。

 一体彼は何を知っているというのか、どれほどの領域に至っているというのか。

 人と同等、あるいはそれ以上の知能を有し、あれほど馬鹿げた力を持った魔族の存在など、全く聞いたことが無い。それは、フェリアのように貴族であり、ある程度権力を持った家にすら知らされていない情報だ。

 考えられる可能性は二つ。自分たち人類ががまだきちんとした情報を共有出来ておらず限られた個人しか知らないか、あるいは最高レベルの機密情報で貴族といえどおいそれとは知ることのできない情報であるかだ。

 そのいずれにしても、先ほど振るった圧倒的な能力を含め、ウェインは明らかに学生ではないレベルの、いやAクラスの探索者ですら及びもつかないほどの領域にいることは間違いないだろう。


「さて、長居は無用だな。さっさと地上に戻ろう。」

「え……どうやって?」

「こいつを使う。」


 フェリアの問いにそう答えて、拾い上げた魔結晶と呼んだ物質を示す。


「こいつは奴らの生命の源であり、尋常ではない魔力量と、魔力親和性を有する物質だ。まあ言わば、俺たち人類が使用している魔力結晶の完全な上位版だな。

その性質は、こうして魔族が死んだ後に残された状態でも保たれている。奴らの命を支えている時ほどではないらしいがな。これを使えば、地上までの転移の魔法を構築するのはさほど難しくない。」


 それは非常に高度な魔法のはずだが、出来るのかとは問わない。先ほどの戦闘を考えれば、分かることだ。

 何より、フェリア達の心に巣食った恐怖が、疑問の口を開かせてくれない。

 何故あれほどの力があるのに隠していたのか、何故そこまでして王立魔法学院に通っていたのか。

 何故あそこまで追いこまれた状況に至るまで、その力を振るわなかったのか。

 もちろん、ある程度の想像はつく。だが本当にその通りなのかどうかは、本人に確かめなければ分からない。

 しかし、何度口を開こうとしても、言葉は出てこなかった。


「さて、それじゃ俺の周囲に集まってくれ。集団転移の魔法は、少々範囲が狭いんでな。」


 その言葉に、恐る恐るという様子で皆が歩み寄る。先ほどの戦闘を見ていれば無理もない。だが、エッダだけが相変わらず地面にへたり込んでいる。どうやら、腰が抜けてしまっているようだ。


「大丈夫か?」


 そう言って、手を貸そうとウェインが歩き出した途端。


「イヤァァ!!!来ないでぇぇーー!!!!」


 絶叫し、恐怖のあまりに頭を抱え、震えているエッダ。恐らくその感知能力により、先ほどの戦闘でウェインが何をしていたかを理解してしまったのだろう。

 確かに今はドレイン能力を全く使っていないが、もし自分たちが無防備な状態でそれが使われれば、いとも簡単に命が奪われるいうことを。


「ち、違うのよウェイン!これは、ちょっと混乱しているだけで……」

「いや、俺の方が迂闊だった。あんなものを見せた後じゃ、怯えるなという方が無理だ。すまんが、手を貸してやってくれ。」


 思わず代わりに弁解しようとしたフェリアを制し、そう声をかけられる。そして、その際に見せた少し淋しそうな顔に、ずきりと胸が痛む。

 だが、その正体が何であるかも分からず、ひとまずエッダに手を貸すために近寄る。

 果たしてもし自分が彼女だったら、命の恩人相手に悲鳴を上げずにいられただろうか、と自問しながら。


 やがて全員が集合し、ウェインが構築した転移の魔法で、実にあっさりと地上に戻る。そこは、いつもの見慣れた学院の前だった。


ー--


 卒業試験において消息を絶った第7パーティー、生還。

 その一報は即座に学院中枢に伝えられ、彼らを保護したのちに、何が起こったのかを確かめるための聞き取りが開始された。

 何しろ、探索中に突如姿を消し、5日以上何の手がかりも得られなかったのだ。

 最初はダンジョン内で全滅したかと思われた。難易度を考えれば非常に低い可能性ではあるが、無いとは言えなかったからだ。

 だが、調査に向かった者たちは、全滅したとしたら少しは残るはずの、遺留品を何一つ見つけられなかった。

 それどころか、最後のフロアには彼らが倒したと思われるダンジョンボスの死骸すらまだ残されていた。

 そこまでたどり着いたパーティーが、そのあとに壊滅するなどまず考えられない。たとえあったとしても、彼らの持ち物が何一つ無いことは説明がつかない。


 謎の失踪事件として扱い、件のダンジョンは一時封鎖。

 いずれ時機を見て、何かこれまでにない変化が起こった可能性が無いか、ベテランの探索者が探索する運びとなっていた。

 これまで長い期間変化がなく安定したダンジョンとはいえ、ダンジョンそのものの原理や成り立ちなどの多くは不明である。だからこそ、何かのきっかけで変質が起こる可能性も0ではない。

 その結論に至り、パーティーの関係者に知らせを出したのが昨日。状況としては消息不明だが、生前の可能性は限りなく低いとも伝えられた。

 しかし実際には、彼らは誰一人欠けることなく自力で帰還した。中には消耗が激しい者や、精神的にも不安定になっているものも見受けられたが、当初の想定から考えれば望外の結果であろう。


 しかし、彼らに何があったかを聞き取りする段になって、困惑することになる。彼らが何が起こったかを話すことに対して、条件を出したのだ。


 まず、最初に聞き取りをするのはウェイン・ルートフォードのみにする事とし、他の者はその情報をもとに聞き取りする事。

 ウェイン・ルートフォードへの聞き取りは学院長が行い、その他に誰も交えないこと。


 何故リーダーのフェリア・アルジェントではなく、ウェイン・ルートフォードなのか。何故学院の一カリキュラムの探索なのに、学院長がわざわざ聞き取りを行わなければならないのか。

 最初は説得を試みた教師陣だが、そこはウェインが頑として譲らなかった。リーダーのフェリアにしても、ウェインの判断を尊重するとして一切の口を閉ざしているし、他のメンバーも同様だ。

 困り果てた末、そこまで無茶な要求というわけでもないので、ひとまず学院長に打診。

 そして、学院長自らウェインに対して聞き取りが行われる事となった。

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