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孤独の果て  作者: 伽藍堂
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18.真実

 フェリアは祈るような気持ちで戦闘を見守りながら、隔離結界の発動準備を進めていた。

 通常、隔離結界は戦闘中に使う様な代物ではない。内部と外部の攻撃的な干渉、望まぬ者の出入り等を双方向に遮断するために、相手の攻撃を防ぐことは出来るが、こちらからの攻撃も届かないからだ。

 つまり、たとえ発動したとて戦況は何も動かず、ただいたずらに時間を消費するだけの魔法なのである。発動自体にも分単位で時間がかかるために、緊急回避のような手段にも使えない。

 まあせいぜいが時間稼ぎが必要な時など、状況や目的によっては使えなくもない、という程度だろう。

 それでも、ウェインが言ったからには必ず意味がある。

 決めたのだ、最後まで彼を信じて、あがくことを。


 残りの仲間は放心したように、ただ戦闘を眺めている。

 全く希望を抱けない圧倒的な相手の実力に加え、僅かに残っていたプライドすら打ち砕かれて、全てを諦めてしまっている。

 状況は、どうしようもないほどに絶望的だ。それでも、自分は諦めない。

 少なくともウェインがあがいている間は、何があっても諦めるものか。


 決意を新たにしながら、隔離結界の準備が完了に向かう。その僅か数秒前にウェインが魔族から大きく距離を取り、更にこちらに向かって地をける。


ードンピシャ!


 それはまさしく、フェリアの発動タイミングに合わせて効果範囲に入るのに、最適なタイミングだった。

 相変わらずの戦況把握能力に感嘆しながら、隔離結界を発動する。

 だが、その瞬間予想外の展開に、何が起こったのかを一瞬把握できなかった。


 ウェインがこちらに向かう途中で、いきなり急制動をかけたのだ。

 しかし、フェリアの魔法は止められない。結果、フェリアたち5人だけを囲むように、隔離結果が発動する。


「どういう……こと……?」

「すまんな。」


 呆然とつぶやくフェリアに対してそう短く謝って、魔族に振り返るウェイン。だが、それでどうしようというのだ。この隔離結界は、何か策があったのでは無いのか。

 これでは、単にあちらとこちらを遮断しただけで、状況はさして変わらない。いや、むしろ悪化しているではないか。


「どうした?何やらこそこそ画策していたかと思えば、引きこもるだけか?しかも小僧、貴様が入れぬでは意味がないではないか?」

「なに、予定通りだ。俺が本気を出すために、あいつらの安全が確保されている必要があっただけだからな。」

「クックック、これだけ圧倒的な差を見せつけられて、今まで本気でなかっただと?この状況で強がりを言えるとは、大したタマだ。その精神力だけは、褒めてやる。」

「大した口をきくじゃあないか、たかが雑兵の分際で。」

「……何だと?」


 そのウェインの言葉に、初めて魔族が保っていた余裕が揺らぐ。

 ウェインの言葉からするに、最初からこの状況を作り出すつもりだったのだろう。あるいは、ウェインの言う切り札が、この状況でしか使用できないのかもしれない。

 しかしもはや、この戦闘にフェリア達は全く関与できなくなってしまった。後は、本当に見ている事だけしかできない。

 隔離結界は、その性質上一度発動したら後から各種条件を変更することが出来ないし、任意に解除も出来ない。つまり、今回は10分間維持することを定義して発動した為に、10分を経過することでしか解除されないのだ。

 それは、術者のフェリアであってもどうすることも出来ない。また、たとえこの中でフェリアの身に何があろうと、極論命を絶とうと無意味である。

 そもそもが人類の各都市を防御することを目的に、恒常的に展開し続けることを念頭に置いて開発された魔法なのだ。そんな魔法が術者による維持を必要とするようでは、危なくて仕方がない。

 

「上級魔族だと?笑わせる。そんな自分たちでも普段使わないような概念を使って、人間相手に粋がっている時点で小物感に溢れてるぞ?こちらに越境してきたのも、大方日頃こき使われている鬱憤を晴らしに来たといった所じゃないのか?」

「貴様……!」

「この程度で平静を失っている時点で、格が知れるというものだ。自分が魔族の上位に属すると言いたいなら、せめてバロンでもいいから貴族位を得てからにしてくれよ、なあ?

どうせお前には、一生無理だろうが。」

「ク…クク……どうやら、こちらの事情に思っていた以上に詳しいようだな、小僧。」


ー何?一体、ウェインは何を言っているの……?


 ウェインの発する言葉が何を意味しているのか、フェリアには全く分からない。

 魔族という存在については、まだまだ多くが研究中であり、判明していること自体が少ないと言ってもいい。

 だがしかし、目の前の存在は一般には全く知られていないレベルの存在である。ウェインが言うこちらで知られている魔族の最上位種が、相手からすれば小動物レベル、というのは間違いなく本当だと言えるほど、理不尽な存在としてまざまざと力を見せられた。

 その存在をして、ただの雑兵にしか過ぎない、というのはあまりに信じがたい。一体、魔族という存在はどれほどまでに強大なのか。

 ただ、ウェインの言葉によって魔族の雰囲気ががらりと変わった。

 これまで見せていた余裕は消え失せ、代わりに支配するのは強い怒り。おそらく、ウェインの言葉は真実を突いているのだろう。少なくとも、口からのでまかせではありえない。

 向こうからすれば取るに足らない存在であるはずの、人間に言われて聞き流せないのだ。むしろ、相手にとっては触れられたくない真実であったという方がしっくりくる。

 だが仮にウェインの言葉通りだったとして、何故わざわざ挑発をするのかがフェリアには理解できない。

 たとえそれが真実だったとしても、相手の圧倒的な実力は変わらないはずだ。


「だが、啖呵を切る相手を間違えたな、これで終わりだ小僧。跡形もなく消し飛ばしてくれる。」

「やってみろよ、三流。」


 それが、最後の引き金だった。

 憤怒の形相をした魔族に、急激に魔力の高まりを感じる。この戦闘で、初めて能動的に魔法を使おうとしているのだ。

 それは、これまで見た経験のあるどんな大魔法をも凌駕する圧倒的な魔力量である。

 下手をすれば、絶大な防御力を持つこの隔離結界ですら、直接向けられれば防げないかもしれないと思わせる。


「死ね!小僧!」


 やがて完成した魔法を放つ。それを、ウェインは眺めているだけだ。

 そして、轟音。


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