報告書の向こう
「物好きもいたものだね」
そうため息と共に吐き出す言葉の先には今朝持ち上がってきた報告書があった。ムラがあり、触り心地もヤスリのような紙に綴られる上品な文字列を見つめ、これを書いたであろう当人を頭に浮かべて苦笑する。上品な文字だが言葉選びが刺々しいというか、荒々しいというか、彼女に対する胸中が丸わかりで面白い。彼の経験上、彼女の性格は今までにないケースなのだろう。
報告書に書かれた彼女の起こした行動の数々を見ていれば「変人」「奇行」「特殊」という言葉が浮かんでくる。
彼を通してみる彼女の姿にいささか興味が湧いてくるというもの。機会があればぜひ話をしてみたい。
「残念だ」
真っ白の紙に素早くペンを走らせて、それを巻いて伝書鳥に飲み込ませる。鳥は窓から飛び立ち暗闇に溶ける。空に消えた。