僕は君に伝えたい
ごめんね
自分勝手で。
ごめんね
邪魔をして。
ごめんね
痛い思いをさせて。
ごめんね
泣いたりして。
ごめんね
先に逝ってしまって。
ごめんね
大事なことを言葉にできなくて。
ごめんね
抱き締めることができなくて。
この『ごめんね』を僕の言葉にすると……。
ごめんね
散歩のとき君を引っ張って自分勝手に先に進んで。
ごめんね
君と遊びたくて勉強の邪魔をして。
ごめんね
君を引っ掻いて傷付けて。
ごめんね
大きな声で鳴いたりして。
ごめんね
君より短い生涯で。
ごめんね
君の言葉を喋れなくて。
ごめんね
君は抱き締めてくれるのに僕にはできなくて。
今、僕の目の前で心配そうに
目に涙を溜めて見ている君に伝えたいのに
僕にはもうそんな力さえ残っていない。
最後に一つだけ伝えたいのに……。
君は僕の顔に顔を近付けた。
君の涙は僕の顔に落ちてくる。
一雫。
二雫。
止まることはない。
僕が見る君の最後の顔は泣いてる顔じゃないんだ。
僕が見たいのは……。
僕は本当に最後の力を振り絞って立ち上がり
君の涙を拭って
『ありがとう』
と鳴いた。
君はその瞬間笑顔になって僕に言ったんだ。
『ありがとう』
って。
僕はその笑顔を見て覚めない眠りについた。
僕は犬。
君は人間。
僕達は全然違う生き物でも過ごしてきた日々は同じ。
また君に出逢えたらいいなぁと思いながら僕は眠る。