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私は秘密を持っている  作者: つっちーfrom千葉
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私は秘密を持っている 第八話


「そう、その通りなんです。これまでは自分の周りで何が起きても、落ち着きを保ってきたつもりでした。外見や立ち居振る舞いだけで判断するのであれば、私と一般人のそれとは、どこが違うというのでしょう。私に秘密を埋めた、とある要人からは、極力、牧場で草を食む、毛を刈られる直前の羊のように振る舞ってくれと命じられています。自分を執拗に追ってくる不審な影に過敏に反応することや、例え狂乱をきたしたとしても、自分の意思によって、秘密をかなぐり捨てて逃走するなどの想定外の行動は、いっさい許されていません。『君を完全に救ってやることは、もはや無理なんだ』誰に怪しまれても良いから、ただ、秘密を隠しきるために平凡で冷静にあれと。君が落ち着き払っていれば、誰も手を出せない。しかし、私が無数の報道陣に日々追われていることはご存じですよね? あのような状況のもとで、いったい誰がそんなことを遂行できるというのでしょう。しかし、『それなら、君の存在自体、必要はない』というセリフが飛んでくるのを、何よりも恐れていました。この世界において、無価値であることは、死と同義なのです。


 私は長年に渡って、言われたとおりに凡夫を演じてきました。『色々と噂はされているようだが、こうして追いかけてみた限りでは、あの人は要人などではなく、本当にただの一般人ではないのか?』そういう誤った憶測が、少しずつでも、この社会に浸透されていき、広まっていくことが、そのまま、私の手柄になるはずだったのです。つまり、尻尾にニンジンをぶら下げながら、多くの荒馬を引き連れながら、草原を逃げまわるラビット、そういう感じなんです。でも、今の状況を続けるのは、もはや限界を感じています。これ以上、無害の一般人を演じていくのは苦痛です。私の肉体は何があったって耐えてみせますが、秘密の方は、まるで駄々っ子のように大人しくせず、腹わたの階段を駆け上がり、『早く、外へ出せ』と、すでに喉元まで迫り上がって来ているのです。『危ないところでしたが、今日も窮地を脱しました』と寝室から無線連絡をして、その一日を無事に終われる状況では無くなってしまったわけです。あなた方の威圧的行為により、精神的に追い詰められ、ついには頬を殴られるに至り、私の中にじっと潜んでいた秘密は思いを定めたようです。『もう、全てを明かさずにはいられない』とね。


 私としても、ここに来て、ようやく決心がつきました。今までだって、大勢のマスコミに四六時中追い回され、海外の諜報機関にポストの中から尻の穴まで探られ、隣家の暇人でさえ、私の部屋の内部を窓の外から覗いてくる。二十四時間、私の一つひとつの行為が、意地汚い誰かによって見張られているわけですよ。あなた方が私と同じ立場だったなら、こんな異常な日々に耐えられますか? ドアを開いた瞬間にパッと目が合った新聞社のカメラマンに笑顔で挨拶出来ますか? 他人を威圧するのが仕事のあなた方にそんな性根の座ったことは出来ませんよね。本音を言ってしまえば、私だって早いところ、白旗を上げてしまいたい日々なんですよ。それでも、私は何年もの間、誰にも語らなかったし、秘密が不安を感知して、勝手に体外へと飛び出していくことも無かったのです。秘密の詳細を刻んだこの記憶は、私の気持ちが本当に追い詰められたときにしか思い出せない、特殊な記憶なんです。私は確かに、これまでにも、何度か今日と非常によく似た状況に陥り、暴漢に囲まれて脅され、殴られて蹴られて投げ飛ばされ、散々酷い目にあって、ほら、早く秘密をバラしてしまえと脅かされ、ついに、気持ちが負けてしまい、渋々に秘密を語ってしまったことがあるんです。


 ああ、今、思い返せば、密約を破って、秘密を撒き散らしてしまったその日々も、今日とまったく同じように、何をやっても、どこへ逃げても、まったく上手く行かなかった日なんです。ダメな日はダメ。結局は捕らえられてしまったわけです。人生は平等なスゴロクのはずですが、私だけはサイコロを何度振っても1、次もまた1! 『一応は前に進んでいるようだから、それでいいじゃないか』天からは雨粒とともにそんな言葉が降ってくる。冗談じゃない! 同期のみんなは、もうずっと先に行ってしまったではないか! そう、ただ己れの境遇をひがむだけの、卑屈なだけの負け犬だったのです。そう、まさに今説明したとおり、今日の、この今と同じ現象が、過去に何度も何度も起こっているんです。風に乗ってバラされたはずの秘密は、今も体内で笑っている。腕の悪い外科医の手術では除けなかった癌細胞のように。あなた方は不思議でしかないはずです。ただ、記憶さえ薄れてしまえば、つまり、過去の厄災を忘れてしまえば、また、同様の脅迫に遭っても、このようにすっとぼけていられるのです。評判の良い新作映画を見て、すっかり感動してハンカチを何枚も濡らした痴呆老人が、三日も経つと内容をすっかり忘れて、再び同じ映画館を『今回が初めてです』と真顔で訪れるように。今日と同じ局面を、最近数カ月の間だけでも、何度となく迎えているはずです。記憶にはまるで残っていません。ただ、数学的な論理がそう述べているのです。一億人のイナゴと化した、欲望の亡者たちが、私の秘密を執拗に狙うのならば、籠城した兵士たちによる懸命な応戦によって、どんなに振り払おうとも、そのうち数匹は心の臓にまで食らいつくものです。あの織田信長でさえ、裏切りを図った、数万の兵に囲まれては、勝つことは出来ませんでした。確率が正しいとするなら、過去何度も訪れたピンチにおいて、私がこの秘密を守り切れたわけがないのです。


『秘密が悪の手により、何度も暴かれたことは自明なんです』


 ただ、奇妙に思えることもあります。奪われた瞬間のもっとも残酷な部分だけが、私の頭の中から、すっぽりと抜け落ちていることです。言うまでもありませんが、その部分とは、これまでの危機を自分がどのように乗り越えてきたのか。結局は脅しに屈して、国家を裏切り、秘密を洗いざらい語ってしまったはずなのですが……。そうだとすれば、私の過ちは極刑に値するはずです。非情な密約を自分の不覚から何度となく破っておいて、なぜ、今でもおめおめと生きていられるのかがわからないんです。私に秘密を埋め込んだ権力者たちは、一切の責任をとらせずに、今頃、何をしているのですか? ソファーにもたれかかって、ヴィンテージワインでも飲んでいるのですか? 今回のピンチだって、秘密の漏洩を本当に恐れているのなら、警官の護衛を一人くらいは、この場に寄越せばいいのに……。どうか、教えてください! あなた方はどう思われますか? 私は秘密を奪われるという失態を、何度も重ねながら、この通り、五体満足で今日も無事に生きているわけです。秘密を明かす前と同じような日常を淡々と過ごしているではないですか。それは、実際には、秘密は第三者によって奪われることはない。自分の体内において、今もしっかりと眠っていると、そう思い込んでいるということでしょうか。大金庫の中身は奪われても、外壁さえ残されていれば、それはそれで良い、というような。しかしですね、疑問となって残るのは、以前に脅迫や暴力行為によって、私から秘密を聞き出したはずの、幾人もの悪人たちは、その後どうなったというのでしょう? 彼らは地上でもっとも価値のあるモノを手に入れましたが、そういう人間が世界の最高権力者になったという話はついぞ聞きません。私から奪ったはずの、その秘密を握って、いったい、どこへ消えたのでしょう?」


 私はあまりの混乱により、敵味方の区別もつかなくなって、今にも自分を射殺しようとするギャングたちに向けてそう尋ねた。自分の人生を不幸に追いやろうとしているのは、何も秘密を追う輩だけとは限らないと気づいたからだ。


「つまり、おまえの他にも秘密を知っている人間が存在するってことなのか? おまえはすでに過去の暴力事件の中で秘密を奪われてしまった、ただの抜け殻だと……、秘密が一つしか無いと仮定するなら、自分ではなく、他の保持者の方を追えと言っているのか?」


 頭の悪そうなギャングたちは、私の丁寧な説明を耳にしながら、たったそれだけのことしか理解出来ていなかった。やっと五歳になったばかりの幼児に、無理むり算数を教えているような気分になった。私は仕方なく、さらに詳細な説明を加えることにした。


「いえいえ、そうではないんです。ひょっとするとですね、私は秘密を埋め込まれてからの毎日の中で、何度となく同じことを、繰り返しているのではないでしょうか? そのことに触れて、話しているんです。秘密とは常に誰もが狙うお宝であり、マスコミ各社はその詳細を知らないくせに、四六時中訳知り顔で報道をしている。しかも、もう何年にもわたって……、それに釣られて……、世間が注目してしまい……、皆が私のところに……。しかし、ああ、頭が痛い、気がおかしくなりそうだ……。つまり、うるさいマスコミ関係者から懸命に逃げ切り、自分が席を置く会社では、すり寄ってくる価値もない同僚たちを鼻で笑い、精神科では、日々育っていく黒い秘密に悩まされる日々を訴えて……、そして、帰り道において、ついに待ち伏せていたギャングたちに捕まってしまう。うう、頭に霧がかかって、記憶のコアがぶれてくる……。私が言いたいのは、この一連の出来事を、もうすでに何度も経験しているような気がするということです。いえ、確率で論ずるならば、今起きているような不幸が、ほぼ日常的に起こっていなければ、おかしいとさえ思えてきたのです。私を羨まない人間はこの世に存在しない、という定義から考えれば、です」


「だから、何だって言うんだ? 俺らの他にも、おまえを拉致して、秘密を暴き出した人間がすでに存在する。だから、この先でどう頑張っても、もう秘密自体には価値はないとでも言いたいのか? まあ、おまえが開き直って何を言おうが、秘密に価値があるかどうかは、俺たちが判断することだ」


「違います、私が先ほどから申し上げているのは、もう秘密は何度も漏れているということですよ。そこを理解して頂きたいのです。重大な秘密を独占していながら、世間を小馬鹿にしたような態度を長年にわたりとり続けて、頑なに黙秘を決め込めば、今日のような暴力沙汰に巻き込まれることは必然なのでしょう。無知で暴力的で野心的な裏組織が、いつになっても口を割ろうとしない強情なこの私から、秘密を奪い取るには、結局のところ、暴力沙汰に訴えるしかないわけです。そして、実際にあなた方は凶器を備えて、運命の鉄路に導かれるようにして、この場所に現れたわけです。誰かにその動きを秒単位まで読まれているにも関わらず、です。しかし、なぜでしょう? なぜ以前に、こういった事件が起きたときにも、おそらく、そこまで事態は進んだはずなのに、現実には次の段階 (秘密を奪った人たちの末路)は現れなかったわけです。映像のフィルムが途中で切れてしまっている。いいですか? まず、私から暴力的に秘密を奪った、あなた方のようなギャングたちが、自らの大手柄に狂喜乱舞して、その次の日には、ざわめく心を押しとどめることが出来ずに、早くも古い隠れ家から動き出し、その秘密をネタに、この国の中枢にいる人々をゆすろうとする。おそらく、一般的な思考では想像もできぬほどの大金を要求するわけです。私のような細腕から、首尾良くネタを奪えたなら、そのくらいの事は、三日と経たずとも、すぐにでも実現できそうではないですか。しかしですね、今のところ、そういった不測の事態は、一度たりとも起きていないわけです。少なくとも、私はこれまで、上役からはそういった不穏な事例については、何も聞かされていない。国政や行政は、今日も平穏に業務の遂行が為されている。政治家や官僚は記者団の前に晴れやかな笑顔で現れて、穏やかな表情のままで国政を語り、周囲に冷や汗を流している者は誰もいない。国家の秘密が他へ漏洩してしまったことを、まったく恐れていないわけです。つまり、次の段階がないんですよ。国家最大の秘密が漏れ出してしまったこの後に、破滅的な事態が訪れるわけでなく、なぜでしょう、また新しい平穏な朝がやってくるんです。私がマスコミや近所のうるさいおばさんたちに尖った視線で睨まれながら、人混みを何とかかき分け、渋々と会社に向かうという朝がね。前にも同じことが起きているのだとするならば、秘密はいったいどうしたんでしょう? 何に使われたというのでしょう? 人々の生活を見る限り、この国の社会システムに異変が起きたようには見えません。街の雑踏にも、別段、変化は感じられません。では、以前に秘密を奪ったはずの悪者たちは、何も得ることはなく、いったい、どこへ消えてしまったのでしょう?」


 私はもう半ば狂乱してそう叫んだ。自分でも自分の言っていることが、ほとんど理解できなかった。自分が本当に言おうとしているのが何かを正確には説明できていなかった。しかし、秘密はとうに漏洩しているはずなのに、それを手にした人間は結局どこにもいない。マスコミは真実を報道をしていない。道を行く庶民は誰も知らないフリをしている。それがこれまで延々と続いている、もっとも残酷な現実だった。


「うるせえ! おまえの言っていることは、初めから終わりまで目茶苦茶だ! 恐怖に脅えて錯乱しているだけだ! 今さら、適当なことを並びたてて、俺達を動揺させようったって、そうはいかねえ。さっさと秘密の隠し場所に案内しろ! どこだ、秘密はどこなんだ? 言っておくが、こっちの世界じゃ、知らねえって言葉は存在しねえぞ!」


 ギャングは私の胸倉を掴み、倉庫のシャッターに後頭部を何度も押し付けた。尖ったナイフが私の眼前で陽光を反射しながらちらつかされた。殺気を持った銀の刃が、いつ私の胸を裂いてもおかしくはない状況だった。倉庫の入り口を塞ぐ青いシャッターには、私の身体が何度となく勢いよく当たって、ガンガンという音が辺りに響き渡った。確かにこれは恐怖といえるが、この感触はこれで何度目なのだろう? ふと、そんな思いが脳裡をよぎった。以前に起きたとき、この状況から抜け出せているのであれば、今回も無事に助けられる可能性はある。しかし、冷酷な現実は根拠のない憶測を吹き飛ばすものである。今回だけは、もはや、無事に済みそうにはない。諦めの境地だった。


「ですから、ここが秘密なんですよ。裏通りにあるこの倉庫が、まさに秘密の現場なんです。だから、私は何度も言っているんです。今まさにこの瞬間が、秘密が明かされた瞬間なんです。私以外の人間が秘密に触れてしまった、という取り返しのつかない瞬間なんです!」


 私がさらに声のトーンを上げて、そう叫んだ瞬間、倉庫のシャッターが内側から、ガンガンと叩かれ、ぐらぐらと乱暴に揺らされ、その内部からは、この世のものとは思えない、耳をつんざくような叫び声が聞こえてきたのだ。そう、それは明らかに地上の生物の雄叫びではなかった。ライオンやタイガーの咆哮ともまったく異なっている。ジャングルなどない都会の片隅で、まさか、こんな内臓を震わせる絶叫が聞こえるとは……。巨大な倉庫の屋根までが、ギシギシと揺らされ、足元のアスファルトには、その恐るべき衝撃によって、瞬時に十文字の亀裂が走っていった。この破壊力は明らかに人知を超えたパワーによるものであった。倉庫の中では、野獣などでは有り得ぬ何かが暴れているのだ。


「な、なんだ、この中に何かいるのか?」


「兄貴、やばいです、倉庫の壁に亀裂が入って、何かでかいものが出てきます!」


 ギャングたちはその怪物の声に脅えて、一歩二歩と後ずさりし始めた。やがて、メキメキという鉄が折れ曲がるような物凄い音がして、倉庫のシャッターは内部からぐにゃぐにゃに壊されて、道路の向こう側にまで弾き飛ばされてしまった。そのまま、屋根を吹き飛ばす勢いで、巨大な狼の顔かたちをした二本足の化け物が飛び出してきた。その鋭い牙は50センチほどの長さがあり、大剣のように鋭く、悪魔のような尖った上向きの耳がついていた。全身に生えている黄金色の体毛は、天に向かって逆立っていた。隠れ家を抜け出したその猛獣は、我々人間に対して、あらゆる殺気を込めて睨みつけると、その目が真っ赤に光っていることが確認できた。まるで、これまでの陰惨な事情を知っているかの様に敵意を剥き出しにしてきた。私はその時になって、ようやく、これまで何度か秘密が狙われたときのことを思い出した。おそらく、今までも、この倉庫付近において、これと全く同じ現象が起きていたのだ。何らかの特別な理由により、私がそれを忘れていただけで……。


「てめえ! 自分の身を守るために、こんなものを隠してやがったな!」


 ギャングたちはすっかり激昂して、懐から拳銃を取り出し、それをこちらに向けた。この時、私はすでに死を覚悟していた。ただ、自分がどのような最期を迎えるかは想像できなかった。しかし、すっかり知性を蘇らせた猛獣が、こちらに向けて、尋常ではない速度で駆け出してきたため、ギャングたちは恐怖の余り、そちらに向けて拳銃を数発発射した。私はすでに真っ当な判断のできぬ状態であったが、こんな街中であっても、平然と殺傷能力のある凶器を扱えるとは、さすがギャングだなと思ったものだ。しかし、その猛獣の顔面に拳銃の弾は命中していたものの、それは奴の勢いを止めることにはならなかった。それどころか、まったく効いていない様子に見えた。何発の銃弾を胴体の急所に受けても、猛獣はケロッとした顔だった。拳銃の発砲という行為は、威嚇にさえも、なっていなかった。次の瞬間、猛獣がけたたましい叫び声とともに突進してきて、その鋭い爪のついた右腕を一振りすると、ギャングの一人は身体を真っ二つに切り裂かれ、大量の鮮血にまみれて、地面に倒れ伏した。猛獣はその上に馬乗りになり、人間の身体を、まるで神戸牛のステーキでも平らげるように、むしゃぶりつくと、その鋭い牙で、あっという間にバラバラにしてしまった。ギャングのもう一人はすでに生きた心地もしなかった様子で、一目散に逃げ出していった。猛獣はもう一度二本足に戻ると、再び凄い速度で、その後を追いかけていった。多分、この場にいる誰もが助かる術を持っていないのだろう。ギャングたちの完全なる命の停止が確認されれば、次に襲われるのは私だ。すでに、物陰まで駆けていき、そこに隠れる気力も無い。


『なるほど、秘密を守れなかった者の最後とはこんなものか……』


 私は自分が処分されることの余りの恐ろしさに意識が遠ざかり、その場で気を失ってしまった。朦朧とする意識の中で、数回ほど、遠くの方から、聞き覚えのある、涙を誘うような哀れな叫び声が聴こえてきたような気がする。しかし、一方的な戦いが終わると、辺りは再び静寂に戻り、私の身体は全ての感覚を失った。自分の身にその後で何が起こったのかは、まったく覚えていない。


ここまで読んで下さってありがとうございました。2021年夏に書き直しています。

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