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第6話 愛する者との今後の生活

「うっ、うっ」

「無理に泣き止まなくて良いぞ。存分に泣いてくれ」

「うっ。でも、やっぱり嫌でも泣き止むよ。何てったって元魔王候補だからね」


そう言うとフォールノは俺の胸元から離れる。


「そ、そうか?なら良いんだけど」

「で、この後どうする?」

「この後?」


思わず聞き返す。この後ってどういうことだ?


「下手に結婚式挙げて神様に結婚したって思われたら天変地異が起きるでしょ?」

「ま、まあ」

「だけど新居でずっとお父さんが手を打てるようになるまで過ごすのもどうかと思うからどうする?って」

「なるほどな」


えー、新居で夫婦(仮)で仲良く暮らしてちゃダメかなぁ。そう思ったけど、よく考えると退屈にだろうな。


「そう、だね。えーっと、何する?」

「それを聞いてんでしょうが」

「うーん。農業する?酪農する?」

「新居で過ごすことになるじゃん」

「うえぇ。じゃあいっそフォールノが人間に化けて人間の世界と魔族の世界を冒険するってのはどうだ?」

「それいいね!」


そう肯定したが、フォールノは考え込む。20秒ほど考えて、口を開いた。


「よくよく考えてみたら、私は良いんだけど」

「だけど?」

「お父さんが許してくれるかなぁって。魔族が人間に化けて人間の世界にいるバレたら殺されるし、そもそもさっき王宮殿内で次期魔王のフォールノと結婚するって言っちゃってたからあなたが人間の世界に行ったらなんか色々ヤバくないかなって」


ああ、そういやそれ言って騎士に殺されそうになったんだったな。


「それなら大丈夫だぞ」

「?なんで?」


首をかしげ、頭の上にクエスチョンマークを浮かばせるフォールノ。


「龍脈式魔術でその記憶を消すことができるからだよ」

「ほんとにできるの?」

「ああ。一応人類史上トップクラスの魔術だからな」

「じゃ、それは大丈夫だね。後は…」

「魔王様に直談判だな。ちょっとボケてるけどまだまだ現役の魔王だからなぁ。許可してもらえるかなぁ」


――――――――――――――――――


「ん?良いぞそれぐらい」


かるっ!!!一応命の危険をがあるのに何でこんな軽いんだ!?思わずタメになって聞く。


「何で命の危険があるのに許可するんだよ」

「ちょっ、廻夢君!」

「よいよい。何故そんなに簡単に人間の世界へ行くのを許可するのかだったな。答えは簡単じゃ。わしの娘が人間に遅れをとるわけが無かろう」


わお、フォールノが人間に負けるわけないと確信していらっしゃる。人ってそこまで弱くはないと思うんだけどなぁ。束になればフォールノだって負けることあるかも知れないのに。


「それに万が一娘に危険が迫っても、廻夢君、お主が守ってくれるじゃろう?」


…嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか、魔王さんよぉ。でも魔王さん、フォールノが負けるときは俺も負けると思うけど。


「お主、自分が我が娘フォールノより弱いと思っておるな」


!?魔王、あんた俺の心読めるのか。親子揃って読心術持ってるのかよ。さすがだね。


「そうでしょう?次期魔王と謳われていたフォールノには負けますよ」

「わしがお主の本当の力を見極めれぬと思っておるのか?」


びっくりして硬直する。…やっぱり魔王さんにはバレてるよな。


「え?アセフ王も言ってたけどさ、廻夢君は力を隠しているの?」

「ああ、そうだ我が娘よ。どういう理由か知らんが彼は力を隠してるのじゃ」


俺は俯く。フォールノは首をかしげ、唇に指を当てて疑問を浮かべた顔をつくる。その状態の俺たちに魔王は助言をするかのように呟く。


「…結婚するのなら隠し事は無くしといた方がよいぞ」


――――――――――――――――――


さっきまでいた花畑に戻った。魔王の部屋からそこまで行く間、俺たちは終始無言だった。どちらかといえば俺がずっと俯いたままなのでフォールノが喋れなかっただけだが。俺とフォールノはベンチに座っていた。もうそろそろ日が暮れる。家に戻る前には言っておかないと。


「なあ、フォールノ」

「どうしたの?」

「お前は俺がどんな人間でも愛してくれるんだよな?」


フォールノは一瞬キョトンとして、笑顔を作って俺にキスをした。


「!?!?」

「ぷはぁ!もちろんだよ。結婚するって誓ったんだからどんな人であれ、愛せるという自信があるってことだからね」


嬉しい。その笑顔に甘えてずっと、ずっとこの事を言いたくない。それでも俺は言わなければならない。重い唇を開き、喋りだす。


「ありがとう。それじゃあ俺の話を黙って聞いてくれないか?」

「…うん」


そうして俺は、力を隠す理由を語り始める。

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