第4話 親の会談
目が覚めるとそこは魔王の城だった。つーか俺、棺桶の中に入ってんだけど。俺死んだと思われてんの?
「ふぁぁあ。っと、まだ少し痛むな」
俺は棺桶から出て体を動かす。まだ少々痛むが生活に支障は無さそうだ。するとこの部屋の唯一の出入り口っぽい扉からフォールノが入ってきた。
「ええ!?死んだんじゃなかったの!?」
「おい、俺があんなので死なねぇのわかってんだろうが」
「えっ、でもお父様がそう言うから…」
あの魔王め、なんで娘を悲しませるようなこと言うんだよ。
「フォールノ、早速で悪いんだが」
「わかってる、モノノフ町でしょ?」
さすが!っと心のなかで言ってみる。
「いやぁそれほどでもないですけどぉ」
「んじゃ、転移してくれ」
フォールノは「アイアイサー」と言い、転移の穴を作る。俺は出来ると同時にくぐり、すぐさま国宮殿に向かった。
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「よく戻ったな廻夢」
「はい。アセフ王、あなた様に言わなければいけないことがあります」
「言わずともわかる、お主が魔王側についたことだろう?」
「?、俺は魔王側にはついていませんが?」
「じゃあ何故お前は魔王軍の領地内に居たんだ?そして何故核を防いだ?」
「そりゃ、結婚する相手の故郷は守らんといけないでしょう?」
「なんだと?結婚?どういうことだ」
「俺、結婚するんですよ。次期魔王と謳われたフォールノ、アンファシ・メニケ・フォールノと」
一同が騒然としていた。しかし、アセフ王だけは冷静だった。
「そうか、ならその結婚相手と親に会わせてくれないか?俺はお前の親みたいなものだからな」
「は、はあ。いいですよ。聞いてるか?フォールノ」
「あいあーい、その王さまと一緒にこっちに転移させればいいの?」
フォールノの声にまた一同が騒然とした。
「すまないが少し待ってくれないか?少々こちらにも用事があるのでね」
「はーい、何分ぐらい?」
「おいフォールノ、図々し―」
「構わんよ。そうだな、10分程度待っていただけないだろうか」
「あいよ!」
アセフ王は用意を始めた。
だが、五分ぐらいたったとき、
「うおおおお!俺の兄貴の恨みぃぃぃぃ!」
と王に使える騎士の一人が俺に突っ込んできた。まあこうなることは予想できていた。フォールノは次期魔王として暴れていたからな。恨みをかっていたんだろう。騎士は槍で突き刺しにきた。しかし、俺は槍を片手で掴み、止めた。
「すまんな、少々眠れ。呀蓮流拳法其の八、刃陣灸拳」
俺は騎士の両肩、両膝、腹に刀で突くような早さで殴る。
「ガハッ」
俺に向かってきた騎士は唾液を垂らしながら倒れた。するとすぐさま医療魔法使いが来た。後は任せよう。さてそろそろ10分だな。アセフ王は時間厳守だからもうすぐ来るだろう。
「待たせたな」
「いえいえ、ところで何ですか?その沢山の袋は」
アセフ王は両手で合わせて12個ぐらいの袋を持っている。
「ははは、秘密だよ。さて、転移させてもらえないかね」
「わかりました。おいフォールノ、聞いてたか?」
「勿論聞いてるとも、んじゃあ行くよー。魔法、転移!」
そう言うと二人分の穴が発生した。俺とアセフ王はそれの前に来る。
「では行こうか」
「王様、お待ちください!」
そう言うのは王の補佐官(名前忘れた)だった。
「王よ、いくらあなたが可愛がっていた子が結婚するからと言っても、あなたが行くのは魔王軍本拠地ですよ?仮にあなたがそこで殺されたとしたら民は混乱し、その隙に私たちは攻め滅ぼされることもあるんですよ?そこをわかっているのですか?」
「ああ、重々承知している」
「だったら何故!」
「私の生死は置いといて、少々彼女の親に言わなければいけないことがあるのでな」
「なんですかそれは!」
「ここでは言えんことだ。カヌメルト、私の留守は任せたぞ」
そう言ってアセフ王はくぐる。わーきゃー騒いでいるのが五月蝿いので俺もさっさとくぐった。
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「君が廻夢の結婚相手かい?」
「はい!アンファシ・メニケ・フォールノ。次期魔王と謳われていた魔王軍の兵士だった者です」
「だった?今は違うのか?」
「廻夢君と結婚するならそんな称号なんていりませんから」
アセフ王は一瞬キョトンとした。そして
「アーッハッハッハ、良い女性じゃないか」
と俺の肩をバシバシ叩く。久々に見た、アセフ王から誰かを誉めるのを。そんなことを考えていると、
「ところで、その袋はなんなんですか?」
「ああ、これかい?これはお土産だよ、口に合うかわからないけどね」
そう言って12個の袋の内、4個の袋を開けた。そこには人間の世界でとても有名な食べ物がたくさん出てきた。数えると20個ぐらいある。どんだけ持ってきてんだよ。
「こ、これ全部貰って良いんですか?」
「ああ、勿論だ。あと、君たち二人で家事したりするだろうから」
そう言って3つの袋を開ける。中にはとても高級な調理器具やらなんやらが入っていた。
「こ、こんなにいただけるなんて、本当にありがとうございます!」
そう言って頭を下げる。「元」次期魔王が頭下げるなんて…
「頭を上げてくれ。それより君の親に会わせてくれないか?」
「は、はい。良いですけど、私の父親魔王ですよ?」
「ああ問題ない」
そう言ったのを聞くとフォールノは転移の穴を三つ作った。しかし、
「言い忘れていたが私一人で行かせもらう。君たち二人は仲良くお話でもしといてくれ」
そう言ってアセフ王は穴をくぐる。
「大丈夫?あの人」
「ああ、問題ないさ。それより…」
そう言って俺はアセフ王の持ってきた物を指す。
「これ、どうする?」
「えーっと、とりあえず保存しとかないと」
そう言ってフォールノが持ってきた物に手を掛けると
「うわぁ!!」
テーブルの上に洗剤一式が出てきた。
「なに?これ」
「ん?これひょっとして」
俺は持ってきた物の中を探っていると、
「あった!これだ!」
そう言ってちょっと大きめな立方体(一辺5㎝ぐらい)の箱を2つ取り出す。
「なにに使うの?それ」
「これはな、ここに置いてっと」
そう言ってそれをキッチンの空きスペースに置いた。そして
「これに少しの魔力を送ると」
するとそこにあった立方体が開き、冷蔵庫が出てきた。
「は、はえー、凄いなぁ。でもそれって何に使うの?」
「これはな、冷蔵庫って言うんだ。食料とかを冷やして保存する道具だ。ただ電気と言うものがいるんでな、もう一個の方も開けて、コンセントを繋いで。フォールノ、少しの風をここで回転するように発生させてくれないか?」
「うん、いいけど」
そう言うと、言った通りに風が発生した。
「んじゃあ、龍脈式魔術 力固定。ふうっ、やっぱ結構魔力使うな。あっ、もう魔力送らなくていいぞ?」
「なんで?」
そう言って魔力を送るのを止めると、風がずっと発生していて回転している。
「なんで魔力送ってないのに発生してるの?」
「俺が風がそこを回転するという力を固定させたからだ。これのお陰でもう魔力を送らないで良い」
「へぇー、便利だねその魔術。私にも教えてよ」
「良いぞ、ただこれを使えるようになるには―」
「仲良く話してるところすまんな、少し言うことができた」
「魔王さんか、なんでしょう?」
「廻夢君とフォールノの婚姻だが、アセフ王と話し合った結果、今は認めないことになった」
へ?今…なんて言った?