第3話 人類の最高戦力
「へ?」
「何度でも言おうか?俺はお前と結婚するよ」
フォールノは驚きすぎて椅子から倒れてしまった。
「おい大丈夫か?!」
「大丈夫じゃないよ。こんなに嬉しいことないもん」
そう言うと泣き始めた。もともとこいつが誘ってきたんだけどな。
「それでさ、お前の両親に会わせてほしいんだけど」
その言葉を言った瞬間、泣いていたフォールノが泣き止んだ。
「え?」
「だから両親に会わせてくれないかって」
「いや、いいんだけどさ。いいの?私の父親、魔王だよ?」
――――――――――――――――――
どうしてこうなった。何で魔王さんと二人きりなんだよ。なんだよ「気を利かして出ていきます」みたいな雰囲気出しやがって。気まずいだけじゃねぇか。仮にも俺勇者だぞ?何で倒すべき魔王と喋ってんだよ。むしろ喋ってねぇよ。どっちも気まずくて固まってるよ。
「名前、なんと言ったかのう」
「あ、ああ、つなやみ、かいむと言います。漢字だと綱闇、廻夢と書きます」
「そうか、じゃあ廻夢君、君は本当に娘を愛してくれるのかい?」
「はい、そりゃもち――――」
「伝令!魔王殿!人間が何か飛行物体を飛ばしてきまし…ってええ?!何でここに人間がいるんですか!?」
「その件はまた今度話す。人間が飛行物体を送って来たんだな?いつも通り迎撃しろ」
「上からですまないが魔王、それは止めておけ」
「何故だ」
「人間にはとある兵器がある。その兵器をおそらく搭載しているのでむやみに迎撃してはいけない」
「ほう?それではどうしろと言うのだね?」
「ここは俺に任せてくれ」
そう言って俺は外に出る。無駄な犠牲を嫌うアセフ王のことだ。多分迎撃せねば中心部まで送ってくるに違いない。俺は剣を構えじっと待つ。すると飛行物体及び飛空船はここまで、魔王軍中心部まで来た。
「魔法、魔術壁『絶』!」
フォールノはそう唱え、空に魔法の壁を作った。
「おーい、降りてこーい」
「なんでさ!」
「そんなんじゃそれは防げねぇからだよ」
「これは私の使える最強の防御魔法だよ?」
「魔法なんかじゃ防ぎようがないんだ。とりあえず降りてきてくれ」
フォールノはすーっと降りてくる。
「それで?私の魔法が弱いとでも言いたいの?」
「いや、お前の魔法は完璧だよ。ただな、あれは防御魔法、いや、魔法では防ぎきれないんだ。放射線と言ってな、あれが爆発すると降り注ぐんだが、魔法じゃ防ぎようがない。すでに実験済みだ」
「何?あれ知ってるの?」
「ああ、あれは―――」
「伝令!飛行物体が何か落とそうとしています!」
「くそ、説明してるひまがねぇ!フォールノ、俺に身体強化魔法かけれるか?」
「あ、うん、出来るけど」
「なるべく強めなやつをかけてくれ!」
「は、はい。魔法、限界突破。対象、えーっと」
「廻夢だ!綱闇 廻夢!結婚する相手の名前ぐらい知っとけ!」
「は、はいぃ!対象、綱闇廻夢!」
俺の力が向上していくのがわかる、こんなもんか。さて、そろそろ魔術壁に当たって爆発するな。カウントダウン、3………2………1………0。
ドカーン!!!!
「な、何あれ」
魔王とフォールノはキノコのような雲を見て驚いている、しかし俺はそんなことに構っている余裕はない。
「零神流剣術、全切断×超斬撃!」
俺は発生する放射線を超速、超力の剣術による斬撃で広がるのを食い止める。
………………ふう、初期放射線は防ぎきった。後は、
「龍脈式魔術、空間封じ!」
残留放射線が発生して、蔓延する前に空間ごと封印っと。あの空間はこの世界から隔離されたので大丈夫だろう。
グギィ、バキボキ
「グァァァァ」
くそ、来やがった。全切断と超斬撃の併用による代償が。痛い痛い痛いぃ!!ああ、ダメだ意識が遠のく。なんか聞こえるな、「大丈夫!?大丈夫?!」って。はは、アセフ王への弁解は…また…今度…だな…。
――――――――――――――――――
「あいつ、魔王側についていたのかっ!」
くそ、人類最大の戦力を失っては人類は戦争に勝てないじゃないか!あれは今の科学力と資材では連発が不可能な代物だ。もう一発作るのに半年はかかる。私が命をかけてあの魔法を使ったのも台無しじゃないか!
いや、彼は天才だ。何か考えがあるのだろう。あの爆弾を防ぎきれるのは、構造を知るあいつだけだ。剣術の併用で2、3日は動けないだろうな。気長に待つとしよう。彼が私に報告しに来るのを。