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雪の華  作者: 遊々
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04 ユーゴという人と小さな失恋

 ユーゴとは4歳のときに初めて出会った。ユーゴが母親に連れられ、我が家にやって来たのである。

 私の母と彼の母は仲が良く、どうやら自分の子供たちを婚約させたいようだった。実際婚約していた。残念ながら元、になってしまったが。


「はじめまして、ユーゴ・ド・ロレーヌといいます。あなたのおなまえは?」

「はじめまして!わたしはカミーユ・ラ・オルレアンです!」

「よろしくね、カミーユ」

「よろしく、ユーゴ!」


 初対面の彼は4歳だとは思えぬほどの言葉遣いと紳士っぷりを発揮していた。兄たちがあんな感じだから僕もああなったんだよ、と後にユーゴは教えてくれた。それにしてもとんでもない4歳児である。


 そして美しい天使のような姿。フワッとした猫毛の美しい艶を持つ肩まである黒髪に、琥珀色の瞳は蜂蜜のように甘さを含んでいた。整った顔はまるでいつか見た絵画の天使のよう。母に「男の子が遊びに来るんだよ」と教えてもらっていなかったら女の子だと疑いもしなかっただろう。


 初めて彼に会った時の印象はこの紳士っぷりと天使のような容姿で埋め尽くされた。最早それ以外を覚えていない。それくらいの衝撃を彼は私に与えた。

 後に精霊と契約して髪と目の色が変わっても、天使っぷりに磨きがかかったのは言うまでもない。


 そんな彼は、三兄弟の一番下だったからだろう。自分の方が少し早く生まれたから自分も兄のようになる、と言ってお兄さんらしい振る舞いをしていた。私は一人っ子だったのでそれに甘えて妹のように過ごした。

 彼とは本当に兄弟のように育ったのだ。


 そんな彼に私は気付かぬうちに異性としても惹かれていたようだ。自分でも分からぬ程に、少しずつ。

 夢で見ていたあの降り積もる雪は、きっとこの気持ちだったのだろう。


 思えば私は中性的な美しい人が好きだ。リアムと契約した時に気付いたが、その原点は今思えばユーゴだったのだと思う。彼は美しい。今でも彼の容姿はとても魅力的だと思うし、眺めていたいくらいだ。この気持ちは異性としての好き、なのだと思う。


 私は今気付くばかりで婚約している時には気付かなかったが、ちゃんと彼を好きだったのだ。

 こうして一つ一つ確認しなければ気付かないくらいにささやかな「好き」。

 それでも想いは確かにあったのだ。

 あの黄色い花が咲かなかったのは、私が気付かなかったから。雪が降り積もっても何とも思わなかったのは当たり前に享受していたから。

 きっと、今あの黄色い花が蕾をつけていた頃の夢を見たらその蕾の中身を見ることが出来たのだろう。

 そして優しく「恋」が花開いたのだろう。


 そうか、そうだったのか。

 私は今、失恋したのか。とても小さな恋ではあったが、確かに叶わなくなったのだ。でも不思議と悲しくはない。寧ろなんだかスッキリしている。とても心が晴れやかだ。

 空が暗かったのは、モヤモヤとした思いが胸の内にあったから。きっと次に見る夢の中の空は晴れ渡っているだろう。

 失ったものはもう戻らない。


 新しい恋をしよう。



 さて、白い花は誰への想いなのだろうか?



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