3.流れ星の噂
スーパーで肉を買った僕は、先ほどフライパンを使って焼き上げた。その際何がダメだったのか、焼き上がりと同時に大きな爆発を起こしてしまった。
当然火は近くの物に燃え移り、瞬く間にアパートは火事になる。
と思われていたが、咄嗟にシールドを発動した僕。火は飛び散らず、何事もなかったかのように火は消えてしまったのだ。
「危なかった。初めての料理とはいえ、まさか爆発を起こすなんて考えもしなかった」
隣に住んでいる女性が何事かと驚きの声を上げている。僕は弁解の気持ちで「躓いただけです」と大きな声で答えた。
それにしても、爆発を抑えられるなんて。もしかしたら人の役に立てる能力なのかもしれない。
改めて、シールドに感激した。
「おはよう有紀」
「あ、おはよう椋夜」
次の日の月曜日。クラスに入ると幼馴染の椋夜に声をかけられた。
僕とは真逆の高身長。すらっとしたモデル体型にグレーかかった髪。頼れるお兄さんのような風貌はまさにイケメンの一言に尽きる。彼とは唯一の幼馴染であり、いつも一緒に遊ぶ仲だ。
「ついに昨日から一人暮らしだな!昨日はさぞ寂しかったろ?泣いてなかったか?」
僕はそこまで弱くない。その程度で泣いていては男として恥ずかしいだろう。
「おいおい、そんなに寂しかったのかよ……そんなに涙をこぼさなくてもいいだろ」
僕は自然と涙をこぼしていた。はは、情けない奴だ。
……椋夜になら、白い球の事を話してもいいだろうか。なにか使い方を導いてくれるかもしれない。
昼休みにでも相談してみることにしよう。
昼休みになるなり、僕は食堂で椋夜とともに食事をする。
「今日の昼食はカレーパンだ」
「あれ、先週の月曜日もカレーパンじゃなかったっけ?」
「よく覚えていたな。この色がうんこみたいで俺は好きなんだ」
カレーパンを片手に下品なことを言う椋夜。この辺がイケメンを台無しにするのだなと心の中で思ってしまう。
僕は苦笑いを浮かべながら、同じカレーパンを頬張る。
「確かにうんこみたいな味がするね」
「お前……うんこ食ったことあるのかよ……」
椋夜にドン引きされてしまった。ちなみにもちろん食べたことなどない。
「それはそうと、最近不思議な現象がこの町で起きているのを知っているか?」
「不思議な現象?」
「ああ、この町に何度か流れ星のようなものが落ちてきているらしいんだ」
「流れ星?」
ふと、僕の元へと降りてきた白い球が頭を過ぎる。
「その流れ星なんだが、町に落ちても被害は一切なく、またその痕跡も残されていないそうだ。何かが落ちたところを見たという人が大勢いるにもかかわらずその正体は不明らしい」
それはとても興味深い。話を聞く限りそれが白い球だとすると、他の誰かも手に取り誰にも話していないということになる。
それに、僕が最初に手にしたとき電子文字には≪5/12≫と映し出されていた。もしこれが人数ならば、僕は5番目に力を得たことになる。ということは残り7人しか力を得られないんだろうか。期限日という可能性もあるから怖いな。
「そこでだ、俺たちもその謎の正体を突き止めてみないか?」
「……え?」
椋夜の急な提案に驚きを隠せなかった。
「今夜、お前のアパート前に集合だ!ついでに俺は泊まる!」
などと勝手なことを言われたが、面白そうだから乗ってしまおう。ついでに料理を教えてもらおう。
椋夜の言っている流れ星が白い球の事なのか、これは白い球について知ることができる良い機会だと思った。