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「えっと、大丈夫ですか?」
男性二人と協力してゴブリン(仮)は退けることができたものの、皆疲弊してぐったりしています。
「あ、ああ」
「たいした怪我はない」
「こちらも大丈夫ですわ」
「ええ、本当にたすかりました」
四人が各々答えてくれました。
「それは良かったです。私はカエデといいます、貴方達はどうしてこんなところに?」
この場所はまだまだ森の中で、鬱蒼と木々が茂っています。
妙齢の女性と付き添いの男性は身綺麗なので、場違いな感じが否めません。
「あー、それはだな……っと。先に自己紹介しておくか。俺はディーン、ギルド所属の冒険者だ」
「ゼストだ」
「おいおい……。あー、ゼストも俺と同じ冒険者だな。パーティを組んでる。それでこの方達の護衛をしてたんだ」
そう言ってチラリと男女のほうに視線を向ける。
「私はラモット、商人です。彼女はリア。私の妻です」
「え!」
どう考えてもラモットさんよりリアさんすごく若いんですが。
年の差婚というやつですか。
「ふふ、あなたったら、彼女がおどろいてますわ」
「ははっ、仕方ないではないか。リアが美人だからだろう」
イチャイチャしだしました。
突っ込んだら負け、突っ込んだら負け。
こういうのは下手に踏み込むと長くなるって私知ってます。
「それで品物の仕入れの帰りなんだよ。近道のつもりでここを通ったらこのざまだ」
なるほど、予想外の多勢に無勢だったということですかね。
「とにもかくにも助かりましたよカエデさん。街に着けばお礼もしたいのですが馬車がねぇ……」
ラモットさんの言葉に馬車の方へ目を向けると、荷台はほぼ無事だったが馬はゴブリン(仮)にやられたのか、多量の血を流して事切れていた。
うわぁ、動物はそこそこ好きなので心が抉られますね。
グロ耐性はあるので、体調不良にはなりませんが。
「ゴブリンがいるのは知っていたが、ここまで多く出現するとは思わなかったぜ」
「怖かったですわ……」
「商品は無事ですが、これでは運べませんねぇ。参りました……」
馬かぁ。
(ごしゅじんさまー、ぼくもうつかれたよぅ)
あ、そういえば黒ごま豆腐ちゃんを出しっぱなしにしてました!
「あの、少し時間をもらいますね」
「ん?ああ。こっちもどうにもならねぇしな、ゆっくりしてくれ」
「ありがとうございます」
そう言って少し離れた場所に行く。
黒ごま豆腐ちゃんの声はおそらく私にしか聞こえていないみたいなので、人前で話すと不審に思われてしまいかねません。
おそらくアーリーさんがくれた言語能力によるものなのでしょう。
「待たせてごめんね黒ごま豆腐ちゃん。……長いね、名前」
今まで画面の中での話だったから気にしてなかったけれど、今は私にとっての現実です。
由々しき問題が発覚しました。
(んー?すきによんでぇ)
ということなのでお言葉にあまえましょう。
「なら黒ごまちゃんでいいかな?正式な名前はそのままだけと略称ってことで」
(いいよぅ、ぼくくろごまー!)
「ふふ、あ、そういえば馬車の引き手が必要なんだけど……黒ごまちゃんはダメですよねぇ」
どうしましょうか。
(ぼくじゃむりだよぅ。つかれてるし……あ!よしおくんはぁ?)
「それです!!」