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生命反応コンパスが指し示す方向へ歩いてしばらく。
「きゃあぁ!」
「くそ!数が多い!」
何でしょうか。
人の焦った声がします。
かさり
木の影から様子をうかがうと……。
「グギャギャ!」
「グギャー!」
そこにいたのは緑色をした小人型のモンスター。
おそらくゴブリンとよばれるものでしょうか。
とりあえずゴブリン(仮)としておきましょう。
そのゴブリン(仮)がおよそ50匹以上で馬車を襲っているところでした。
応戦していたのは若い男性二人、馬車の中で身を寄せ合っているのは妙齢の女性と男性。
応戦している男性達はものすごく苦戦していますね。
助太刀いたしましょうか。
「トルネードアクア!」
スドドド
ありえないほどの勢いで水の弾丸が五つほど打ち出される。
命中したと思われるゴブリン(仮)は地に沈んだ。
「なっ!」
応戦していた男性から驚きの声が上がる。
ちょっとびっくりさせていまいましたかね。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけながら、木の影から出る。
まだまだゴブリン(仮)は数が多くいるため油断はしない。
「バーストアロー!」
今度は炎の矢を五つほど打ち出す。
数多く打ち出すと威力が落ちていくのですが、多数をあいてにしているので仕方がありません。
一応当たれば倒せているみたいなので問題はないでしょう。
「すげぇ……」
あれ?
私が使っているのはそんなに高位魔法ではないはず。
……あぁ、レベルが高いからですかね?
「助太刀しますよ!一緒に戦いましょう!」
そう言って私は次の魔法を放ちます。
「フラワーストーム!」
とりあえず一定距離を保てるように花びらの刃で牽制。
切り刻まれていくゴブリン(仮)が緑色の体液撒き散らす様はなかなかえぐいのですが、文句も言っていられません。
「とりあえず数を減らして行きましょう!」
「あ、お、おう!!」
二人の男性のうち一人が返事をしてくれました。
もう一人は黙々と一匹ずつ確実に討伐していました。
それにしても多すぎる。
……そうだ!
「『召喚』」
ぱふん
そんなまぬけな音とともに出てきたのは黒いぷるぷるしたもの。
『エンペラーボックス(闇)』です。
エンペラーボックス:スライム最上位種。四角くなったことにより安定性が上がり驚くべき進化を遂げた。属性により色が変わる。
「黒ごま豆腐ちゃん、いきますよ!」
ぷるるるるん
返事をするかのように震える黒ごま豆腐ちゃん。
そして黒ごま豆腐ちゃんの前に黒い球体が三つほど作り出される。
ぷるるるん!
そして球体はゴブリン(仮)の元へ飛んでいった。
しゅわぁぁ
着弾したゴブリン(仮)は身体中全ての水分が抜けたかのように干からびて倒れた。
あれはもう生きてはいないでしょう。
それにしても……
「なかなかえげつない攻撃しますね、黒ごま豆腐ちゃん」
(すごい?ごしゅじんさま)
するとどこから幼い声が聞こえました。
もしかして黒ごま豆腐ちゃんかな?
「喋ったの?」
(わぁ、つたわったぁ!)
「と、とりあえず後でお話しようね!今はゴブリン(仮)を倒さなきゃ!」
(はぁい!)
そのまま魔法攻撃によりなんとかゴブリン(仮)を退けることができました。
召喚獣:『召喚士』が使役するモンスターのこと。モンスターには一匹につき三つまでスキルが付与できる。育成することでつよくなる。