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さてさてここは何処でしょうか。
真っ白です。
何もありません。
上も下も真っ白なのでどこが地面なのかすらもわかりません。
困りましたね……。
記憶の限りでは自室でオンラインRPGに勤しんでいたはずなのですが、いつの間にこんな所に。
寝落ちしてしまったのでしょうか?
確かパーティは組んでいなかったはずなので誰かに迷惑をかけていないだろう事は救いですかね。
でも、イベクエのタイムアタック中だったはずなのできっと時間オーバーになってますね。
残念……。
起きたら再度トライしなきゃいけませんね。
それにしてもこのように意識がはっきりしている夢というのは珍しいですね、明晰夢というやつでしょうか。
「あの……もし」
うむむ、確かイベクエは回数制限もあったはず。
一回分無駄にしてしまったのは手痛いですね。
「あの!!」
「はひぃっ!」
急に声をかけられてしまったので驚きのあまり変な声が出てしまいました。
声の方に振り返るとそこに居たのは、とても綺麗な土下座をする少女でした。
ーーーーー
「まことに申し訳ありませぬ秋道殿。我の不注意によりこのような事になってしまい、詫びのしようもありませぬ」
そして、ずっとこの調子なので私は大変困惑しております。
見た目にそぐわない古風過ぎる物言いも困惑の一端をになっていますがね。
あ、ちなみに秋道というのは私の名字です、名前は楓ですね。
名字と名前の一体感はけっこう気に入ってたりします。
どうでもいいですね。
それよりこの状況を打破しなくては!
「あの、私も状況が掴めていないのでただ謝られていても困るというか……、説明お願いできますか?」
「はっ!そうであった!我としたことが焦りのあまり……」
そう言って顔を上げた少女はものすごい美少女でした。
ギャップとはまさにこの事なのでしょう。
「そのな、事の発端は秋道殿の部屋というかパソコンの裏に出来た空間の歪みなのだ」
すごい、空間の歪みとかファンタジーみたい。
「それでの、我はその歪みを修復しようと思ったのじゃが……」
「上手くいかなかったんですか?」
それで私が歪みに巻き込まれてここに?
「いや、歪みの修復自体はうまくいったんじゃが我の力が少しはみ出てしもうての……」
少女の顔が真っ青になる。
「?」
「その、はみ出てしもうた力に秋道殿が当たってしもうて……バーンと」
最後の方はすごく小さな声になって聞き取るのがギリギリになってしまいました。
「バーンと?」
「うむ。秋道殿がバーンとなってしもうたのだ……」
「は?え?」
いやいやいや、どういう事ですか?
理解が追いつかないのですが。
「本当に申し訳なく思っておる!それゆえ肉体が消えてしもうた秋道殿を慌てて魂を我の空間に連れてきたのだ」
「それって私が死んだということなんでしょうか。」
困ります、ものすごく困ります。
イベントクリアまだしてないんですもん。
いや、そういうことじゃありませんね。
「死んだ、という訳ではない。いや、肉体はなくなってしもうたが魂はそのままなのでな、死んだとは言い切れぬのだ」
「じゃあ戻れるんですか?」
「いや、それもできん。本当に申し訳なく思うておる。しかし予定にない魂の受け入れは輪廻担当者にも出来んと言われてな。八方塞がりなのだ」
え、じゃあどうすればよいのですかね?
私このままですか?
「そこでだ、今まで秋道殿が存在していた世界に戻す事はできぬのだが他の世界になら、新しい身体を作って移動させることができるらしいのだ」
さらにファンタジー感が強くなりましたね。
「そうですか」
「まこと身勝手で申し訳なく思うのだが受け入れてはくれぬか?」
受け入れるというより、それしか道がないんでしょう?
日本に未練はありまくりですけど、人間関係は希薄もいいところでしたし。
私が居なくなって困る人もいません。
ありまくりと言った未練もネトゲの事のみ、それならば……。
「わかりました。受け入れます」