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本音

「えっと……タク、説明してくれる?」


 この手の話が苦手そうなユナが、俺に説明を丸投げしてきた。

 元はと言えば、俺がこのレンジャー、アクトを『王女にとって、最も幸せになれる結婚相手』として占ったのだ、確かに説明責任は俺にありそうだった。


 俺は頷くと、眼光鋭い彼に向かって、


「アクトさん……ソフィア姫の事を、知っていますか」


 と切り出した。

 それに対して、彼は


「アクトでいい……ユナも俺のことをそう呼んでいるしな……」


 と前置きした上で、


「最近、公の場に姿を現していないことは知っている。その理由も、噂ではな……」


「……では、その問題解決の為に、国王陛下が各地の領主に指示を出したことは……」


「知っている……医師に占術師……なるほど、あんた等もそれに絡んでいるって事か……」


 さすがにレンジャーだけあって、情報通のようだ。

 逆に言えば、ここまでの話だけなら公然の秘密、というか、結構知っている人は多いということになる。


「……では、そこにデルモベート先生の指示があったことは?」


「……いや、それは初耳だが、そうであったとしても別におかしくはないな……」


 やはり彼は、デルモベート老公の存在と、彼がどういう活動をしているか把握しているようだ。


「……先生は言いました。俺こそが、ソフィア姫を救う術を見いだせる、唯一の占術師だと……そこで直接、眠れる王女の元に赴き、俺は占った……そして手掛かりと見えたのが、貴方の存在だったのです……」


 話がややこしくなりそうだったので、結婚相手云々(うんぬん)の話はせずに、結果だけを伝えたのだが……。


「……待て、話の筋が通らない。どうして俺が手掛かりとなる? ……なにか隠してないか?」


 ……やはり、通用しなかった。

 俺は観念し、全て話すことにした。


「実は、俺の占い……自称・神から与えられたのは、究極縁結能力者(アルティメイト・キュービッド)というもので……一言で言えば、『最高に幸せになれる結婚相手を見つけ出す能力』なのです」


「……はあ? なんだそれは……じゃあ、ひょっとして眠っているお姫様を占った結果、まさか理想の結婚相手として俺が見えた、なんてことを言うんじゃないだろうな?」


 なんかこの人、勘が鋭すぎる……。


「その通りです」


 と、俺が真剣な眼差しでそう言うと、彼は大笑いした。


「これは傑作だ! 眠ったまま起きない姫様に対して呑気に恋占いなんかをして、その結果を伝えに、わざわざこれだけの人数で俺に会いに来たってか?」


「……もう、アクト、真面目に聞いて! タクはこれまで二百人近く理想の結婚相手を占ってきて、これまで一度も外したことがないのよ!」


 ユナの怒りに、アクトも多少、真面目になった。


「……いや、真剣に言っているのならすまなかった。あまりに馬鹿馬鹿しい話だったからな……話を戻すと……ふむ、その、タクヤ君の占いで、ソフィア姫の結婚相手を占った結果、なぜか俺が見えた……うん、まあ、ここまでは分かった。誰かがそう吹き込んだ可能性もあるからな……」


「……吹き込んだ?」


「いや、こっちの話だ……それでどうして、俺が彼女を救う手掛かりを持っていることになるんだ?」


「結婚相手が見える、ということは、結婚ができる……つまり、回復するから、と言うことになります……あと、俺の事はタクヤでいいです」


 俺はあくまで真剣に答えた。


「ふむ……いい目だ……分かった、これからは本音で話そう。俺とお前は対等だ、まずはそこを前提にしよう。敬語なんかも使わなくていい。もう一度言うが、本音で話そう」


 アクトも、真剣になったようだ。


「……分かりました……いや、分かった……じゃあ、本音で言うと、俺は本気で貴方がソフィア姫が最も幸せになれる結婚相手だと思って……いや、そうだと知っている。そして、貴方が彼女を救う鍵を握っていることも知っている」


「……そう言われても、心当たりがないがな……あと一つ、教えてくれ。お前は、俺とソフィア姫の関係を、どこまで知っている?」


「……従兄弟同士であることは聞かされた。でも、それは占った後の話だ」


 アクトは、俺の言葉を聞いて、他のメンバーを見渡した。

 皆、無言だったが、それで、みんなそれは知っていると気付いたようだ。


「……なるほど、おまえも勘がいいな……事前にその事を聞かされていたならば、こじつけで俺の名前を出したんじゃ無いかと思ったがな……まあ、それは信じよう。それで、俺と姫の共通の知り合いであるユナも連れてきたって訳か……」


「そう。ただし、ユナや、ここにいるみんなが俺の占いに立ち会い、そしてここまで一緒に来たのは、デルモベート先生の導きによるところが大きいけれど」


「……そうだろうな、そうでなくては、話がうますぎる……」


 アクトは大きく頷いた。


「だが、さっきも言ったように、姫を救う方法を俺に聞かれたって、まるで心当たりがない。俺が何かして、それで彼女が助かり、そして王国が危機から救われるっていうのなら、それは協力もするだろうがな……」


「だったら一つ、協力してほしい……貴方が一番幸せになれる結婚相手を占わせてほしいんだ……俺の占いが正しいならば、それはソフィア姫ということになる」


「……ふうん、相思相愛って奴か? 言っておくが、俺はソフィア姫と会ったことはないぞ?」


「それは構わない……では……」


 俺は、彼の気が変わらないうちに、占いに入りたかった。


「おいおい、早速かよ……」


 と、アクトは苦笑いしながら、俺がかざす右手を受け入れてくれた。


「……ずっと眠り続ける女性の姿が見える……そのベッドの側で嘆き、悲しんでいるのは国王陛下と、王妃様だ……間違いない、やはり、貴方の運命の相手は、ソフィア姫だ」


「……これはまた、あっさりと結果がでたものだな……」


 アクトはやはり、半信半疑だが、そう見えた物は仕方がない。

 そして彼の運命(フォーチューン)(ライン)も、うっすらとながら見ることができた。


「あと、俺には、貴方とソフィア姫を繋ぐ(ライン)が見える……」


「ほう、俗に言う『運命の糸』ってやつか? 面白い、それが姫君とつながっているというのならば、それはどっちの方向に伸びている?」


 俺はその言葉を聞いて、即座に部屋の一方向を指差した。

 それを見て、アクトはまた大笑いをした。


「はははっ、遂にボロが出たな……。こいつを見ろ」


 彼はそう言って、懐から小さな道具……方位磁石を取り出した。


「ここから王都は、南東の方向だ。けど、お前が今指差したのは、西の方角だった……姫様は王都にいるんじゃないのか?」


 ……確かに、彼の言うとおり、運命(フォーチューン)(ライン)が二人を直結させているのであれば、矛盾が生じる。


「……いや、運命(フォーチューン)(ライン)は真っ直ぐ二人を結んでいるとは限らない。それはユナも、そしてジル先生も知っている……俺達が洞窟の入り口を真竜に塞がれた時、先生の(ライン)は、別の出口を指し示し、幾度も折れ曲がりながら俺達を導いてくれた……つまり、問題を解決するために、あえて別の方向に導く、ということがあり得るんだ……」


「……ほう、真竜……おまえらも結構、冒険しているんだな……まあ、それは置いといて……ならば今の話で、西に行けば何か解決方法があって、そこに俺は導かれているっていうんだな? しかし、あっちは山と、遺跡群があるだけだ。そんな馬鹿な話が……」


 と、ここで突然、アクトの表情が変わった。


「……ユナ、ソフィア姫は、『呪い』を受けて眠り続けているので間違いないな?」


「ええ、そうよ。確か、『錠の呪怨札』とかいう、二百年以上前の呪いの札を使われたっていう話だったけど……」


「古い呪怨札……西、遺跡群……まさか……」


 アクトは、何かに気付いたようだった。

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