命の重さ
「ちょ、ちょ、全く意味が分からないんだけど……」
『僕はね、人の負の感情が大好きなんだ。誰かを憎んで誰かの足を引っ張る、誰かの不幸を心から喜ぶ。そんな人の負の感情が大好き。だいたい人間だけでしょう?そんな感情持ってるのは……僕は地球に来て、そんな負の感情を集めて回ってるんだ』
笑顔?
さすがに動物的なその顔には笑顔は作れないようだったけど、口調からして、今のコイツの顔は間違いなく笑顔だ。
『だから、君みたいに死にたがりの人間大好きさ。君みたい人間が死んだところで世界は何も変わらないのに、一人前に死ぬことにたいして悩み初めてさ。いいかい?君が今死んだとします。一体何人の人が悲しみますか?多分君が思ってるほどの人間は悲しまないよ。しかも、自殺とか迷惑な死に方してと言う人間もいるかもしれない。それなら、いっそうのことテロとか、膨大な事故で亡くなった方が死亡者リストに君の名前が載る。そんなんで死んだ方が君の名前は広く知れ渡るってことだよ。どう?』
どうと言われても……。
昔、数学の教師が言ってたことがあるのを思い出した。
宝くじが当たる確率はそんな風な大事故で命を亡くす確率より低いと。
確率的には宝くじより当たりやすいけど、難しいと言うことだ。
『だけど、まぁ、それも一時のこと。君の名前なんてすぐに忘れ去られる。ならば、逆に犯罪者になってたくさんの汚名を受けとり死んでいくのはどう?それなら後々名前が残ること間違いないよ』
「別に、私名前を残したい訳じゃない」
そう言うとその生物は面白く無さそうに舌打ちをした。
『今のは全部、君一つの命が亡くなったところで、何も変わらないってことを説明してあげてたの。だから、死ぬことにそんなに悩まないで死ぬなら死ぬ、それだけ』
「私が死のうが生きようがあなたには何の関係も無いんじゃないの?」
『いや。それが大アリさ。僕は趣味で自殺者の魂を集めているのさ。僕たちのグループで誰が一番自殺者の魂を集められるかって。しかも、死ぬなら死ぬで一番面白い自殺をした人間の魂がポイント高いって訳だ』
言ってることがよく分からない……。
『誰かを憎めば憎むほど魂は汚れていく。そして、記憶を失えば失うほど、魂は透明に近付いてく。汚れた魂も透明の魂も集めてぐじゃぐしゃに混ぜてしまえば、それはそれはキレイな色の魂になり、高く売りさばけるってことだ』
汚れた魂がキレイ?
何か矛盾を感じる。
『さぁ、お前にも憎い人間いるだろう?その人間にさっきの苦しみを味合わせてあげないか?』