菊田ひろみの取り巻き
休日のショッピングモール。
みんな幸せそうな顔で行き来している。
ここにいる人達は本当に幸福なのだろうか?
エスカレーター横から下を歩いている人達を見て深く息を吐いた。
ただ当たり前に生きている事、それが幸福と言うのなら、一昨日までの私は幸せだったのだろうか?
あと6日で誰かを殺さなければならない。
誰かを殺さなければ私自身の命が無くなる。
え?冷静に考えて何その設定?
そんな馬鹿らしい事ある?
いや、何が冷静に考えてだ。
そもそも私は自殺しようとしてたんじゃない。
このまま6日間何もしなければ普通に死ねるならそれは本望なんじゃないかと考えが元に戻ってしまう。
さっきこの毛玉に言われたじゃない。
あの憎い菊田ひろみがいなくなれば私は今まで通り普通に日常を過ごせる事ができる、そしたら一石二鳥って言われたじゃない。
「あれー、桜良じゃない?」
不意に声を掛けられた。
視線の先には、誰が見てもキラキラしてる、私とは対照的な一人の女子がいた。
ハイブランドで身を固め、リア充空気が溢れている。
完璧なメイク、完全な今風ファッション。
私はこの女を知ってる。
この女、鳥海美智は菊田ひろみの取り巻きの一人だ。
「桜良、変わってないからすぐ分かった、一人?」
言葉だけ拾えば親しい感じの挨拶だが、目が気持ちを表していない。
私を見下げる冷たいその目。
菊田ひろみほどではないが、私はこの女も嫌いだ。
この女も菊田ひろみのように私の事を見下している。
「う…うん」
「そっか、そりゃそうだよね、桜良は一人が好きだもんねー」
「…」
一人が好きな訳ない。
本当に一人が好きな人なんている訳ない。
休み時間も給食も…。一人でいると寂しい。
一番辛いのはペアを組んで何かをする授業。
お互いの顔を描く美術の授業だったり、そんな時、誰も組んでくれる人がいない気持ち、この女には分からない。
教室と言う小さな世界。
そこが全てで生きてる中での孤独は辛い。
「あれー?何も言わないのー?あ、昔からあんた口数少なかったもんねー」
クククっと口元に手を置くその姿を見て、一瞬の殺意。
私がこの手を伸ばし、あの毛玉をこの女に埋め込めば、こいつは私が受けた苦しみを背負いながら死んでゆく。
その姿を想像すると、今までモヤモヤと考えてた気持ちが無くなる。
そーっと手を伸ばすのと、美智が口を開くのは同時だった。
「私、ひろみと待ち合わせなんだけどあんたも来る?」
菊田ひろみ、あの女がここに来る?
私は伸ばした手を引っ込めた。




