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「最後にスキルの説明です。」
ナビィさんに言われ、パネル内のスキルに触れる。
セットスキル
[ーーー][ーーー][ーーー][ーーー][ーーー]
控えスキル
【SP10】
【ランダムボックス】
[スキル習得]
「スキルはSPと呼ばれるスキルポイントを消費し取得する方法と、何らかの報酬として取得する方法があります。スキルにはレベルがあり、使用することでレベルを上げる事が出来ますが、SPを消費してあげる事も出来ますので慎重に考えて消費してくださいね。SPの取得方法はレベルアップ、または特定の報酬として手に入る事があります。取得したスキルですが、セットスキルにあるスキルだけが使用可能です。但し最初は5つまでしかセット出来ないので、入らなかったスキルは控えスキルとなり、発動不可状態となります」
一通りの説明を終えたナビィさんが何か質問はありますか?と尋ねてきた。
「このランダムボックスというのは何ですか?」
「そちらは初回限定のスキルプレゼントシステムです。全プレイヤーに一つだけ、ランダムにスキルをプレゼントしてます。中にはレアスキルやユニークスキルもありますので頑張って当ててください」
「あー、はい」
頑張って当てると言われても…運だしなぁ……。
「では、説明は以上となりますが、何か質問などございますか?」
大丈夫です。と答え、僕はパネルへと視線を落とした。
(さて、どれから手を出すべきか……)
キャラクター作成なんてパパッと済ませてすぐにレベリングの予定だったけど、これは悩むなぁ。
何より選択肢が多すぎてどれが正解なのかも分からない。
「まぁ、まずはランダムボックスを開けて見ようかな」
僕はパネルを操作し、ランダムボックスに触れた。
するとパッパラパー!と音楽が流れ、パネルに『レアスキル[速撃]を入手しました』と表示された。
え?
「おめでとうございます!レアスキルの[速撃]ですね!ユニーク程ではありませんが、なかなか出にくいレア度の高いスキルです!このスキルは攻撃時AGIの一部をSTRに加算するパッシブスキルですね。取得したスキルに触れる事で詳細を見る事が出来ますよ?」
ナビィさんに言われてパネル上の速撃に触れてみる。
[速撃]
レア度★★★★★★
パッシブスキル
攻撃時に自身のAGIの1/4をSTRに加算する。
レベルアップ時AGIの上昇率+2
おぉ、結構有力なんじゃないかな?
でもこれでレアスキルか……ユニークスキルはいったいどれほど強力だろう?
「ナビィさん因みにユニークスキルてどんな効果があるのですか?」
「そうですね……詳細については話せませんが、ユニークスキルはこのゲーム内においてその1人にしか手にする事が出来ないスキルです。その為大変強力なスキルになっています。とだけ言っておきましょうか」
えぇ!一人だけのスキル?
そんなスキルがあるなんて…よっぽど強力なスキルなんだろうなぁ!
うーん、そうなってくるとユニークスキルを持っている人がトッププレイヤーになるのは確定?
そんな人達と肩を並べる為に必要なのは、人とは違ったユニークスキルにも負けない自分だけのプレイスタイル……かな?
僕はナビィに感謝を告げ、再びパネルと向き合った。
まずは種族を決めようと、それぞれの特性を見ていく。
(ん?これって僕のスキルと相性がいいよな……普通なら選べない種族だけど、僕のスキルなら寧ろプラスになる。それなら身長はこうした方がいいな……あぁ、でも此れだと長剣の双剣使いは厳しいかも……えぇい!トッププレイヤーになる為ならこのプレイスタイルでも我慢するさ!……うーん、こらなら女キャラの方がいいよなぁ。男キャラにしてもすぐに初期ステータスが死んじゃうし……どうせなら自分が好きになれるキャラクターにしよう!こうなったらステータスはこれ一択だよね!スキルもあれが有れば………あったあった!これをこうして…と)
「……出来た!」
目の前の真っ白なマネキンだった物を見る。
すっかり姿を変えたそれは身長100㎝(最低値)程の幼女だった。
お尻まである真っ白な髪の毛と、日に当たったことが無いのでは?と思うほどの白い肌、大きくパッチリと開いた目の奥には真っ赤な宝石のような瞳。そして、頭にはピョンと重力に逆らう兎耳。
どこからどう見ても可愛らしい、虫も殺した事の無さそうな幼女である。
「ほ、本当にこれでよろしいのですか?」
ナビィさんが若干戸惑いながら聞いてきたのに対し、力強く頷いた。
「そうですか……それでは最後にキャラクターネームを教えて下さい」
名前は作っている最中に決まっていた。
「ユキ。でお願いします」
僕の名前を略しただけ、でも真っ白な見た目のこの子にピッタリな名前だと思った。
「了解です!では…」
ナビィさんがコホンと一つ咳をする。
「改めましてユキ様!ニューワールドをお楽しみください!」
ナビィさんの台詞がキーとなったのか、僕の足元に如何にもな魔法陣が現れた。
「ありがとうナビィさん!目一杯楽しんでくる!」
それだけ言うと、僕の視界がパッと瞬時に変化し、ゲームなどでもよく見る中世ヨーロッパ風の街並みが視界いっぱいに広がっていた。
身長が低くなった事で周りの建物が大きく見えて、これから始まる冒険に心臓がバクバクと脈打つ。
逸る気持ちを抑える事ができず、僕は取り敢えず前にと足を踏み出した。
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「……行っちゃいました」
真っ白の空間で異色を放つ魔方陣に向け、少女の声が人知れず呟かれた。
「いやー、面白半分で作ったあの種族を選ぶプレイヤーが居たとわねぇ〜」
否、その呟きは1人の男に聞かれていた。
このゲームにおいて『神』と言っても過言では無い、その男に。
「マスター……」
少女にマスターと呼ばれたこの男こそ、NWOの創作者にして、GMである。
男は少女に呼ばれたにも関わらず、手元のパネルを弄りながらも口の端を上げていき、最終的にはニヤニヤと気味の悪い顔でパネルを弄る。
「クフフ……成る程成る程。此れならトッププレイヤーにだってなれる可能性もあるな。誰にもは出来ない。あの子だけのプレイスタイルだ。」
「マスター……」
「後はこのステータスを使いきれるプレイヤースキルがあるかどうか……おっと、どうやらユニークスキルを当てた者が現れたみたいだ。」
そう言った次の瞬間には、男の姿が消えており少女だけとなっていた。
「…………ありがとう、か…へんなの」
今度こそ、人知れず呟かれた少女の声は、真っ白の空間に消えていった。