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どうやら話は終わったみたいで、2人が此方に歩いてくるのを確認した僕は、うさ耳から手を離した。


「すまない、待たせた」


「そんな、全然大丈夫です!それで……話は纏まりましたか?」


矛盾さんが頭を下げて謝るのを慌てて止め、話し合いの結果について聞いてみた。

ミミさんの表情を見れば分かりきった事だったけど……。


「あぁ、俺たちはこの後少し行きたい所があるから、折角来てもらったのに申し訳ないが、此処で解散させてもらっても良いだろうか?」


……やっぱり。

ミミさんが先ほどまでとは別人のように真剣な顔をしているから、なんと無く何方の意見が通ったのかは分かっていた。


僕は彼女が其処までやる気になった理由が知りたくて、2人にこの後何処に行くのか聞いてみる事にしてみた。


「お二人は此れから何方に向かうのですか?」


「ん……君の戦いを見て、スキルを見直そうかと思ってね。ここ王都にはスキルをSPへと還元してくれる所があるから、其処に向かうつもりだ」


ぼ、僕の戦いって……速さでモノ言わせてるだけなんですが……。


まぁ、そうゆうことならしょうがないか…。

彼らについて行っても良いけど、あまり面識のない僕が付いてくと気を遣わせてしまうかもしれないし……。


「分かりました!それではまた連絡待ってますね」


僕は軽く挨拶を済ませると、ナビィと一緒に公園の出入り口へと向かい歩き出す。


「ユキさん!」


ミミさんから呼びかけられ、進めていた足を止める。

振り返ると同時にミミさんは今日一番の大声でーーー


「絶対っ!絶対追いついてみせますっ!!」


ーーーと宣言した。


思わず、口の端がクイっと上がり「待ってるよ」と返してしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ユキ様ぁ、何だか今日のユキ様楽しそうですねっ!」


街中を歩いていると、此方に身体を向けて僕の前方を飛んでいるナビィにそんな事を言われた。


「え?……そうかな?」


「はい!とても可愛らしく笑っておられますっ!」


僕は惚けて返してみたけど、自分でも分かってしまうほど今の僕はニヤニヤと笑っているだろう。

…って可愛く?そんな風に見えてたの?


僕はキリッと表情を引き締めてみたが、中々上手くいかず、ナビィに笑われてしまった。


「ふふふ、そんなにあの方達を気に入られたのですか?」


「んー?そうだねぇ……いつか一緒に最前線で活躍出来ればいいなぁ…って」


そうなるのも近い将来なのかもしれない…。

最後に振り返った時、彼らの瞳を見てそう感じたのだ。


(僕もうかうかなんてしてらんないなぁ。あの2人の隣に胸を張って立てられる様に、もっと頑張らないと……でも、ただレベルを上げるだけで良いのかなぁ……?)


そんな事を考えながら、ナビィと2人で王都の大通りをのんびり歩いていると、なにやらイベント臭漂う巨大な建物が見えてきた。


「ナビィ、あれって……?」


「…へ?……あ、あぁ。あれは訓練場ですね!」


(…?なんだか今、答えるまでに少し間があったけど……考え事かな…?)


少し疑問に思ったけど、訓練場という言葉に興味を惹かれ「この大きな建物で何をするの?」と、僕は再び質問をした。


「えーと、この建物では様々な訓練を行う事が出来るのです!」


……様々な訓練?


「例えば、この世界において”モンスターを狩る”というのは当たり前のことですが、ユキ様達の現実世界ではモンスターはおろか、動物だって狩る事など無いですよね?」


「そうだね……僕ら一般人は狩る以前に武器の所持すら………あー、成る程……つまり此処はそういった初心者達を訓練してくれる所なんだね?」


「そうですっ!剣、槍、弓、杖、盾等様々な武器の扱い方を教えて貰えたり、如何したら効率よく狩りをする事が出来るか、パーティーを組んだ時の立ち回り方等、中には料理の訓練などもあります!」


へぇ〜、それはすごい。

僕は素直に感心すると同時に、この訓練場という建物に凄く興味を持った。

と言うのも……僕も勿論の事だが、現実世界では短剣などの武器など、持った事がなく、喧嘩なんてした事のない僕にとって戦う術など学校の授業で習う柔道もどき位しか思いつかない。

自分が他人を投げる姿なんて想像出来ないし、受け身すら綺麗にとることなど不可能に近いだろう。

このゲームを始めてから常々思っていたのだ……僕の攻撃なんてモンスターに近づいて斬る。攻撃されれば逃げて、また近づいては斬るの繰り返しだった。

その動作には技術など皆無で、ただ速度に頼って偶々此処まで来れたにすぎない。

誰にだって出来ることをしていただけだったのだ。


もし……アニメの主人公のように、格好良く武器を振るえたなら…。


「ユキ様、そろそろお昼ですので一旦休まれては如何ですか?」


ナビィの呼びかけに、妄想の世界から脱出する。


「う、うん。そうだね、一旦落ちてご飯食べてくるよ」


「分かりました!早く戻って来てくださいね!」


「ん、りょーかい」


メニューウィンドウを操作しログアウトすると、現実世界の身体へと意識がもどってきた。

ヘルメット型のゲーム機を外し、枕の横に置く。

現実の身体は酷く重くて、まるで自分の身体では無いように感じた。


(現実世界では諦めていたけど、ゲームであるあの世界なら彼等(しゅじんこう)の様になれるのかな?)


そんな事を考えながらベットから降りると、一階にあるキッチンへと足を運び、冷蔵庫の中を覗いてみた。


「う〜〜ん、オムライスでも作ろうかなぁ」


残念ながら鶏肉は無かったけど、お中元で頂いたと思われるハムが残っていたので、卵、玉ねぎ、ケチャップ、昨日の晩御飯の余りである冷やご飯を冷蔵庫から取り出した。

ハムと玉ねぎを刻みフライパンで熱しながら塩コショウで味付けをする。冷やご飯とケチャップを入れササッとチキンライス擬きを作ると茶碗に移しておき、再び熱したフライパンにバターを入れ半分溶けたら、といた卵を半熟になるまで熱する。

テフロン加工されたフライパンは、傾けるだけで半熟焼きされた卵を滑らせて、フライパンの淵に寄せる事で出来た窪みにチキンライス擬きを乗せると、そのまま滑らせてお皿へと乗せる。

綺麗なラグビーボールの様な形に出来上がり、上にケチャップをかける。

グラスにお茶を入れてその中にスプーンを入れるとグラスとお皿を片手づつに持ちテーブルへと移動した。


「いただきまーす」


パクリと一口……。

うん、じょーできっ!

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