第3話
1時間ほど経った。
今の所その場で合格を告げられたものは3人だけであった。
「次、レン・アストガールとカルロス・クロス。なかに入れ。」
レンは最悪だ、と告げてから演習場内へと入った。
「ようやく、俺の出番か。平民よ!この俺の踏み台になってくれて感謝するぞ!」
金髪の男性が指を差しながら言ってきた。
クロス家はレスト皇国の伯爵位を賜わる家柄だ。
そして今回、レンの相手となるカルロス・クロスはそのクロス家の三男である。
基本的にはだがやはり貴族は傲慢である者が多い。
あくまでだが。
ただカルロス・クロスは言動とその格好を見る限りあきらかに上記に当てはまる人であるとレンは判断した。
格好、、、カルロスは金ピカの鎧を纏っていた。
さらに、それは防具かと聞きたくなるような装飾まで施してある。
「はぁ、僕はなんて運が悪いんだ。」
レンは相手に聞こえないほど小さい声で呟いた。
審判はカルロスの性分を知っていたのか少し困った程度の顔であった。
「それでは決闘を開始します、、、始め!!」
審判はそういい決闘は開始された。
カルロスは両刃の片手剣を抜いた。
対するレンは片刃の剣を抜いた。
「なんだその脆そうな剣は!そんなものでこの俺を倒せるとでも思っているのか!」
カルロスは構えと言えるものも取らずに突進してきた。
レンは剣を左手に持ち、峰の切っ先の方を肩に当て右手はぶら下げた構えで突進を待ち受けた。
「俺の固有能力はBランクの『剛腕力』だ!一撃で終わらせてやる!」
カルロスは片手剣を両手で持ち、レン目掛けて振り下ろした。
レンはため息をつきながら、右足を下げて腰を下ろした。
「ムラサメ流刀術初伝ニノ型『紅桜』」
レンはカルロスが振り下ろした剣に合わせて、剣を腰の高さから振り上げた。
ガキーーン!!
2人の武器がぶつかった瞬間、カルロスの剣のみが砕け散りレンは刀を完全に振り上げた状態から固まったカルロスの首筋に刀を当てた。
「しょ、勝負あり。勝者、レン・アストガール!」
審判は少し目を丸くしながら判定を告げた。
「ば、ばかな。俺の固有能力より高い威力なんて出せるわけがない!!」
カルロスは砕け散った剣を見ながら怒りの声を上げた。
「そうだ、こいつはズルしたに決まっている。そうでなければこの俺が!!」
カルロスは怒りに身を任せ、レンに掴みかかってきた。
「そこまでだ。」
いつの間にかクリストファー・シルバーがレンたちの横へと来ていた。
「カルロス・クロス、お前は今の負けの理由を理解できん時点で不合格だ。」
「なっ!!?」
カルロスはクリストファーの言葉を聞き絶句した。
「な、なぜだ!俺はクロス家三男のカルロス・クロスだぞ!!」
「つまみだせ。騎士団は家柄ではなく実力を重んじるものだ。」
クリストファーの声に合わせて待機していた騎士団員がでてきてカルロスを連れて行った。
観客席で見ていた入団希望者も声ひとつあげることができずにいた。
「とはいえこのままではこの者の実力を測ることはできるまい。」
クリストファーはそういって手を前にかざした。
「アウェイク。共にいくぞ《グラム》!」
クリストファーの言霊とともに2mはあるであろう大剣が手に握られた。
「あれが魔剣。」
「まさかこんなところでみれるとはな。」
入団希望者も感動の声を上げた。
魔剣、それはレスト皇国にある最上級武具ーSランクの武器である。
クリストファーが皇帝から授けられる伝説の武器である。
Sランクの武具は武具自身が持ち主を決めるため持てるだけで奇跡と呼べるものであり、強き武人の証である。
「さぁこの俺自身が見極めてやるこい!」
クリストファーは《グラム》を構え、レンに対峙した。
「この威圧感、師匠たちと遜色ないな。まさかこんなに早く強い奴と戦えるとは、、、やはり王都へきて正解だ!!」
レンは刀を構え直し、クリストファーへと挑んだ。