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王子を不幸にしかしない婚約破棄

王子が不幸になる婚約破棄~王子は勇者に恋をした 編~

『王子が不幸になる婚約破棄~ ○×編~』と似たようなタイトルがありますが、それぞれが別の話になっています。


続きはありません。

魔王の脅威も去り、魔王を倒した異世界の勇者様を労うパーティーで、

「アシュリー、君との婚約を破棄する!俺には、本当に愛する人ができた。君には何の落ち度もない。だがしかし、俺は自分の心に嘘をつけないんだ!どうか、俺を許して欲しい。そして、これからも俺の側にいてくれ」


ただいま、この国の王子ジョン・コンフェクショナリー様から婚約破棄をされたアシュリー・アイスです。

魔王討伐の旅では、『聖女』という役割をしていました。

そして、王子様の婚約者『でした』。

魔王討伐の旅は、異世界から勇者様となられる年齢の子どもを拉致監禁誘拐するところから始まります。

そして、この世界より比較的平和で平和ボケした異世界のとある国『日本』から年頃の子どもを誘拐して生命を脅かす旅に強制的に連行するのです。

断れば、死あるのみ。

はじめから、断るという選択肢をさせない。許さない。

なんて酷い国なのでしょうね、ここは!

さて、異世界召喚じゃなかった...異世界を跨いだ拉致監禁誘拐は、人為的にはできません。

この世界の神様が何の考えもなしに、神の力を私利私欲に利用して無関係の異世界の子どもを拉致監禁誘拐をするのです。

異世界召喚と言うのは、こちらに都合のいい言い方です。

正確には、『拉致監禁誘拐』です。

それ以外の何物でもありません。

さて、私は『聖女』なんて大層な名称で呼ばれていますが、正確には教会で働く魔術のスペシャリストでごく普通のシスターです。

ごく普通のシスターごときが、異世界から拉致監禁誘拐される勇者様の旅に参加するのはまずいということで、便宜上、聖女ということになっています。

では、なぜ王子様の『婚約者』の肩書を持っていたかと言うと、貴族の肉食系お嬢様から逃れるために、王子様が聖女の肩書を持つ私に婚約者と言う大変迷惑な生贄にするために白羽の矢を当てたからです。

聖女の役目を持つ者なら、肉食系お嬢様が自分のことを諦めるだろうと。

この王子様、私が王子様に恋心を持って婚約者になったとなぜか脳内で変換されているようです。

聖女なんだから王子と婚約させておこうと安易に考えた国の上層部の決定で、完全なる政略婚約ですよ。

愛情なんて、一切存在いたしません!

どこにあるのでしょう、そんな愛情モノ


「俺は、魔王討伐の間に勇者ナナ・マッシロを愛してしまった。彼女のひたむきさ、気高い精神、その向日葵のような笑顔、すべてを愛してしまったんだ!そんな彼女を俺が、選ばないはずがない!」

王子様は、パーティー会場の空気を無視してすべて言い切ったという満足気なお顔をしています。

私の側にいるナナ様の引き攣った顔を無視して。

異世界から、世界を跨いで拉致監禁誘拐された勇者ナナ様。

魔王討伐の旅の仲間たち(もちろん、私以外)から、様々な求愛がされています。

もちろん、ナナ様はそんな馬鹿たちを相手にしていませんけど。

ここで、お約束なバラし。

私、転生者なのです。

何の捻りも事実もないですね、ゴメンなさい。

前世は、ナナ様がいる時代の日本。

チートを求めていたわけじゃないけれど、教会の下っ端信者でお金持ちに馬鹿にされてキレた私が、彼を見返すために魔術学院に実力で入学して首席卒業したのです。

前世の私が、ちょい厨二病を患っていてよかった。

おかげで、魔術学院の授業は簡単に頭に入って来るし、イジメは千倍返しでやり返したし。

その後は、なぜか下僕たちが増えたけど。ケンカを買うたびに、増殖していったけれど。

そして街に帰って、ごく普通のシスターとなったわけです。

勇者ナナ様はというと、ごく普通の超絶美少女です。

元の世界には、ものすごく性格がイケメンな恋人がいるそうです。

そんな超極上の恋人がいるのに、顔だけがよくて自分の気持ちだけを押し付け相手を思いやらない野郎どもに惚れるわけないでしょう?

だって、ナナ様は『本物』をすでに選んで愛しているのですから。

彼女にだけは、私がかつて日本に住んでいた転生者であることを言っています。

そんなわけで、ナナ様とはかなり打ち解けた関係になり、旅の間は頼りにされました。


「あの、ジョン王子様。私、そんなことを言われても困るわ。だって、私は元の世界に戻ることが一番の願いだもの」

「そんなこと関係ない!俺が、ナナ、君を愛しているんだぞ!」

それを聞いたナナ様と私は同時に王子様を殴り飛ばしました。

「私は、元の世界に戻りたいって言ってるでしょ!どうして、聞いてくれないの!どうして、私の意思を無視するの!」

「ナナ、君はこの国にいれば」

私は、とりあえずこれ以上王子様が何か言ってナナ様を傷つけないように王子様の顔を踏みつけしゃべれないようにしました。

「ナナ様、この世界に拉致監禁誘拐された時間にその瞬間に元の世界にお戻しいたします。ですので、この世界の神様が約束させた『対価』を言って下さい」

「アシュリー...」

実は、この世界に異世界から拉致監禁誘拐された過去の勇者様方は元の世界に戻れるだけで、対価を神様からもらうことはないんですよね。

ナナ様、いえ勇者様がこの世界に拉致監禁誘拐されることを知った私が神様に話をつけてボコリ、対価を支払うよう徹底的にオハナシしたんです。

正直なところ私、中級神までなら確実に殺れる自信があるんです。

この世界に無関係の子どもを拉致監禁誘拐するぐらいなのだから、彼はきっと低級神でしょう。

それ以外、考えられません。

「なんでもいいの?」

「もちろんです」

「なら、私、元凶とストレスの原因を徹底的に殺りたい!ボコリたい!」

さて、ここで私を知る人物がいたなら「お前の影響だろ!」と言われそうです。

あの低級神にできることなんて限られているし、ならストレスの原因とかこの世界に拉致監禁した元凶とかに殺り返してはどうか?と魔王討伐の旅の間に提案して見たのですよ。

そして五十分後、私はあの低級神とナナ様のストレスの原因たちを縄と鎖で縛り付けてナナ様の前に置きました。

ちなみに、私では到底運びきれないので下僕たちにも手伝ってもらいました。

下僕たちは私がお願いしたら、快く手伝ってくれました。

もちろん、人間相手にする各種武器も揃えてあります。

ナナ様は、彼らを数時間ボコリ続けました。休憩なしで。

よほど、ストレスが溜まっていたんですね。

やっと、ナナ様を元の世界に戻せる安心感から涙が出ました。

「アシュリー、ありがとう。これ、あなたが対価を約束させたんだよね」

「はい。対価なしで強制労働させるのはどうかと思いまして。それでは、ナナ様。元の世界に戻しますね。お元気で」

「アシュリーもね!」

私が元の世界に戻す魔方陣を発動させると、ナナ様は笑顔で元の世界に戻って行きました。


「親友、アシュリーを教会に返してもらうぞ!彼女は、教会に必要な人材だからな!」

感動的な空気を無視して教会の神父様が叫びました。

神父様は国王様の学生時代からの親友なのです。

国王様は学生時代、大変な問題児だったそうで、先生方は成績以外にも優秀な神父様に相談して、問題解決に当たっていたそうです。

そしてあまりにもキレた神父様と先生方一同が、話し合って国王様に『奴隷契約の魔術』をかけたそうです。超絶大な魔力を持つ、神父様が。

国の上層部たちが、今でも奴隷契約の魔術を解かないように神父様に土下座していたのを見たこともあります。なぜかは、知りませんけれど。

「何を言っているんだっ!?アシュリーは、俺の婚約者だぞ!」

ついさっき、私との婚約を破棄すると大勢の前で発表されたのは、どなたでしょうね?、王子様。あなた様ですよ。

勇者に振られたからと言って、貴族でもない私に対して一度破棄した婚約の有効性があると思わないことですよ?

「もちろん、分かっているぞ。親友よ。馬鹿息子が一度でもアシュリー嬢に対して『婚約破棄』を口にすれば、二度と修復不可能ということはな。それに、アシュリー嬢は前途有望な少女だ。馬鹿息子が、他の貴族令嬢たちの盾となることを強要しなければ、本当はよかった。教会内部でも、優秀な少女を馬鹿息子の婚約者になることは反対していたのだろう?」

「当り前だ、親友。教会内部だけじゃない。信者たちもこぞって大反対しているぞ。あんな馬鹿王子に、家の娘を渡せるかとな!かく言う私もそう思っている。当然のことだ」

王様は、神父様とパーティー会場内にいる人たちに向かって言いました。

「息子ジョン・コンフェクショナリーでの要望でアシュリー嬢との婚約をしていたのだが、奴の我がままでこのたび正式にアシュリー嬢との婚約を破棄する!」

「父上、それは!」

「くどい!貴族令嬢なら、無理やりにでも再びお前と婚約をさせることが可能だが、あいにくアシュリー嬢は貴族ではないし教会にとって重要な人材だ!また、お前の我がままにつき合わせるわけにもいかん!」

「親友。アシュリーの代わりに王子の婚約者たちを連れてきているぞ。自分の我がままでアシュリーを振り回すような奴だ。婚約者をこちらで用意すれば文句はあるまい」

「さすがだな、親友よ。そんな酔狂なお嬢さんはどちらにいる?」

「ふっ、どれだけ学生時代にお前の尻拭いをしていると思っている。このぐらい、簡単に予想できる」

そうして、神父様が連れてきた色とりどりの美少女たちは色々なパーティーなどで王子様に色目を使っている肉食系お嬢様。

顔を引き攣らせ、抵抗しようと王子様が口を開く前に私が言葉を口にしました。

「神父様、こちらに居られるきれいなお嬢様方は全員王子様の婚約者ということでよろしいのでしょうか?」

「当然だろう。彼女たちは、他にも兄弟姉妹がいるからな。各家より、彼女たちが全員王子に嫁ぐことは何の問題もないと言っている。王家と繋がりを持てることだしな。それに、これだけの美少女達がいれば王子も満足なはずだ」

「羨ましすぎます!むしろ、私が代わりたい!」

「そうだろう、そうだろう。旅の最中に、王子は勇者様に毎日夜這いをしかけていたそうだからな。これだけの数の美少女がいれば、さぞ満足できるに違いない」

「勇者様に纏わりつく男どもが夜這いを仕掛けるのを私が毎度潰していましたしね」

「よくやった、アシュリー。勇者様の貞操を無事にお守り出来たのだな」

「はい、神父様」

「歴代の勇者様は、魔王を討伐する旅の仲間たちから貞操を守るのに苦労されたようだからな。魔王より、旅の仲間たちが厄介だとは嘆かわしいことだ」

「イヤですねー、性欲しか頭にない馬鹿どもは」

「そうだな。だからこそ、勇者様に惚れられなかったと分かるはずだ!」

「あのー、親友?そこまでにしてもらえぬか?」

なぜか、王子様よりもその親である国王様の精神が抉られているようです。

「それなら、親友。この美少女たちを王子の正式な妻にしてもらえるか。もちろん、全員」

「そうだな。その美少女達の中には、才媛もいる。愚息だけでは心配な政治面でも、しっかり活躍してくれるだろう。一ヶ月後に、美少女たち全員と王子の結婚式をする。騎士団長、愚息をそれまで例の部屋に監禁しろ!」

「分かりました。国王様。全員、王子を例の部屋まで連行するぞ!」

「「「「「「「「「「オウ!」」」」」」」」」」

軟弱王子様は、抵抗する間もなく屈強な騎士団の連中に例の部屋という所まで連れて行かれました。



一ヶ月後、王子様は絶対確実かつ永久的に解除できない妻たちと『結婚における契約』を私と神父様による魔術で、結ぶことになりました。

私と神父様を知っている者たちは、ある意味それは呪いと言ったという...

読んでくださり、ありがとうございました。

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