僕の最期
最期の話をしよう
あの時、ああしていればという言葉が大嫌いだ。
決してやり直す事の出来ない事象を、決して消す事の出来ない事象を
有限の時の中で思い返す余地などありはしないだろう。
自分の意思で覚悟をもって挑んだ結果に難癖などつけたくはない。
あまりにも大きな夢を持ち、この手に余る結果を得ようとした。
この命は代償ではない。夢を見た時から既に支払っていたのだから。
思い返せば本当にたくさんの笑顔を見る事が出来た。
思い返せば本当にたくさんの笑い声を聞く事が出来た。
手を差し伸べた人達の全ての結果が十全では無かったけれど、
彼等の味方になった事に何一つ後悔等あろうはずもない。
この言葉を口にするのは、もう何度目になるだろうか
僕は彼女に出会えて本当に良かった。
あの時、彼女に差し伸べられた手を僕は今でも忘れていない。
それは救われない僕に救えるものしか救わない君が差し伸べた最初で最後の間違い。
今だから言える
その時の彼女の手があまりにも眩しかったから、
僕は間違いと気づきながらも、救われないものに手を差し伸べる道を歩むと決めたんだ。
彼女は以前、僕を断罪した。僕の進む道は歪んで狂っている。とても正気ではいられないはずだと。
でもね、この道を最初に僕に示してくれたのは他ならぬ君なんだよ。
彼女生涯唯一の間違いに僕は憧れてしまったんだ。
一言だけ誤解が無いように言っておくと、
別に本来の彼女の行動や歩みに反対するつもりも否定するつもりもない。
ただ大切なものの優先順位が異なっただけ。
ただそれだけで歩む道が異なっただけ。
ただそれだけの事で戦う事になったまで。
だから、きっと彼女は僕に出会わない方が良かったんだろう。
彼女にとっての唯一の間違いを具現化した存在が僕なのだから。
彼女の信念にのっとるなら間違いは正されるべきだ。間違えたままではいられない。
だから彼女はいつの日か僕を失くすだろうとは想像していたんだ。
僕は消える事が惜しかった訳ではない。
僕は消される事が怖かった訳ではない。
もとよりこの体は彼女に与えられたといっても過言ではないのだから。
ただ、僕の欠落が優しすぎる彼女に傷を残さぬように願っていた。
ただ、僕の欠落で優しすぎる彼女が歩みを止めてしまわぬように願っていた。
例え彼女の生き方が仮初に過ぎないとしても
例え彼女の生き方が偶像された姿だとしても
僕は彼女に感謝しているんだ。
これが最期だというのに、感謝の言葉さえ上手く紡げない。
これが最期だというのに、いつまでも僕の言葉は彼女に届かない。
僕は本当に幸せだったよ
ありがとう