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欠落  作者: 紫木
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彼女の代償

 いつからだろうか、守る為に殺さなくてはならないようになったのは

 いつからだろうか、守る為に犠牲が必要になったのは


こんな結末は望んでいなかった。

こんな最期の為に、私はあの日手を差し伸べた訳じゃない。


どうして私が勝利した?

どうして私は立っている?

どうしてアイツが倒れている?


なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、

命をかけるに値しない争いだった筈だ。


なのに、この手はなんでアイツの命を摘み取った?


一寸前の会話が思い出せない。

私はアイツとどんな話をした?

大切な事だった筈なのに、大切な言葉だった筈なのに・・・・


 いつからだろうか、守る為に殺す事が必要だと感じ始めたのは

 いつからだろうか、守る度に犠牲になるものが大きくなったのは


 いつからだろうか夢に喰われてしまったのは


あの日、日溜りの道を歩むこの世界を守ると決めた。

私は自分の意志で覚悟をもってこの道を選んだ。


 覚悟は強迫観念に変わった

 夢は私を束縛して離れない存在になった

 多くの人に賞賛を浴びる度に、体は鎖で縛られた

 体は自然と勝利を求めた

 この世界を守るためには必要な事だったから


あぁ、私の覚悟はなんて浅かったのだろうか・・・


夢は叶ったと思い込んでいた。それは素晴らしいものだと信じて疑わなかった。

夢が心を侵食することなんて想像もしていなかった。

やっと会えたのに、やっと話ができたのに、

やっともう一つの夢が叶うと思ったのに、


私は後悔している。私は泣いている。私は恨んでいる。

こんな夢など、見なければよかった。

こんな夢など、叶えなければよかった。


そうすれば、こんな最期にはならなかっただろうに。

あまつさえ、私の手で奪い取る事もなかったのに。


本当は気付いていた。アイツに差し伸べた手が間違いなんかじゃなかった事に

本当は気付いていた。アイツに差し伸べた手が私の原点だった事に

思い出した。私はアイツと出会うまで、今のアイツと同じ道を歩んでいた事に


失敗したくなくて、幻滅されたくなくて、だから間違いない道を選んだ。

必ず救えると判断した時のみ手を差し伸べるようになった。

全てはアイツの気を惹きたかっただけだ。

全てはアイツの憧れた存在を演じた偶像だ。


だから私がこの道を選んだ覚悟に代償なんてありはしない。

在るのはアイツの憧れた存在を穢した罪

在るのはアイツを失くすという代償


また私は多くの賞賛を浴びる事になるだろう。

勇者だと、救世主だと、英雄だと。


それでも私の夢はここで終わりだ。

気付いてしまったから、もう歩けない。


現実は理想と遠く、私はいつまでもこの場所に立ち止まる。




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