相反する存在
「気の利いた挨拶も出来ないな。ごめん、言葉が上手く紡げない」
「私はとても嬉しくて、とても悲しいわ。あなたが出会った頃のままのクズならこんな気持ちにはならなかったでしょうね」
「それでも君には感謝しきれない。おかげで僕には守るべき世界ができた」
「その世界は貴方を優しく包んでくれたの?」
「僕のいる世界に優しさなんてないよ、全てを肯定し、全てを受け入れる。いつかの君の言葉を借りるなら、とても甘いだけの世界だ。」
「そうね、あなたはあの日から何も変わっていない。優しさの意味をはき違えたまま。日向の道を他人に譲り日陰の道に取り込まれる。必要のない重みを背負い必要のない痛みを刻まれる。狂っているほど甘い」
「もとより僕は日陰を歩いていた。君が連れ出してくれた日向の道があまりにも暖かくて、心地よくて、だから今度は僕がこの手を差し伸べようと誓っただけさ。今はこの体にある重みも痛みも僕という存在を形作る大切なものだ。今更捨てることなんて出来ないし、僕自身投げ出すつもりもない」
「痛みには慣れた?」
「慣れるものじゃないよ」
「傷は癒えた?」
「癒す暇もないよ」
「もう一度、もう一度だけ考えて欲しい」
「答えは変わらないよ」
「それでも確かめたかったのよ、察しなさい」
「ごめん、、、」
「私は貴方を愛している」
「あぁ、僕も君を愛しているよ」
「やっぱり私は貴方を救えなかった」
「それでも僕は君に救われた」