僕という存在
僕は全てを救えるだなんて大それた事を考えている訳ではない。
極端な話、明日、知らない国の知らない人が死んでもなんとも思わない
僕にとってはこの手の届く限りの世界にしか興味がないんだ。
ただ、この世界の中では何があろうとも手を差し伸べる。
守れなくても守ろうとする。間違えていようと間違えたまま共に歩く。
これは救世主でもなく、勇者でもない、ましてや栄誉ある人間とは程遠い
あえて言葉にするなら独善者という存在の話だ。
大切なモノを守ろうとする為に多くの嘘をついてきた。多くの毒を飲んだ。多くの夢を潰した。
その度に敵が増えた。この世界の仕組みは実にシンプルだ。誰かの見方になれば必ず誰かが敵になる。
そこにはいつも善悪の概念はなく、僕は意思のみをもって戦いに挑む。
ひとつだけ決めたこと、この小さな世界を必ず守ってみせる。
断崖されれば心は折れそうになる。神経は摩耗し、体が徐々に言う事をきかなくなる。
それでもこの世界を守ると決めたのだから、膝をつくわけにはいかなかった。
震える心も、軋む体も、意志の力でねじ伏せた。
僕はこの世界の皆に会うまでは何も持っていなかったから、恥ずかしい話だが僕を認めてくれたこの世界の事が大好きだった。この世界を守る為なら、命を削る事さえも惜しくなかった。
いや・・・それすら嬉しく思っていたんだ。
僕の存在意義は確かにここにあると感じる事が出来たのだから。
前置きが長くなってすまない。
どうしても自分の心を落ち着かせる必要があったんだ。
振り返り、噛み締める時間がどうしても欲しかった。
今、僕はこの世界を守る為に戦わなければならない。
僕の目の前にいるのは、かつての恩人であり、最愛の恋人だった人
「救えるものを救う君」と「救われないものに手を差し伸べる僕」
あの日、背中を向けた彼女といまこうして正面から対峙している。
頭の中ではこうなる事を予感していた。
頭の中ではそうならないようにずっと願っていた。
君じゃなければ良かったんだ。例え敵対するのが肉親であろうと、血を分けた兄弟であろうと構わなかった。
僕の世界を否定する世界と僕の世界が否定する世界
君の世界を否定する世界と君の世界が否定する世界
僕の我侭な世界と君の優しい世界
だから、これからの会話は第三者には何の意味も持たないだろう。
ただの心情の吐露だ。
でも、血が流れぬ程度に唇を噛み締め語ろうと思う。
たくさん話したい事があるんだ