くっせえんだよ!!ばか!!
精一杯いきてます!
精一杯生きています!
精一杯生きています!
へにょこは笑わない。しゃべらない。おならもしない。
夕方になると、ぼくの家に来たり来なかったりする。
僕は笑ったり怒ったり泣いたりする。
でも、へにょこがいるときはトイレでおならをする。
別に誰に何を言われたわけでもないし、なんでトイレでするのかもわからないし、恥ずかしいのかもわからない。でも、絶対にトイレでするようにしてる。
だからぼくは知りたくなった。ハテナが頭の中を埋め尽くし、あたまがおかしくなりそうだ。
僕は初めて、へにょこがうちにくるのを心待ちにした。
そわそわそわそわ、ただただそわそわそわそわと、たばこをすったり、窓を開けたり閉めたり、座ったり立ったり、午後からはずっと意味のない行動ばかりしていた。
そうこうするうちに、へにょこがやってきた。
ドアを開け、ドアを閉め、洗面所に入り、洗面所から出てきて、スーパーの弁当と、缶ビールと缶チューハイを机に置き、テレビをつけ、座った。
ぼくがその動作を、食い入るように見つめていたら、へにょこは何も言わず、僕の腹を殴り、テレビの方を向いた。
ブーーーー
完璧なタイミングだった。
音も臭いも完璧、おなららしいおならがでて、僕はにんまりした。
へにょこはぼくをにらみつけた。はじめてだった。こんな怖い顔をするのは。
喜びが、二秒後に怒りに変わった。
「そんなめでみるんじゃねえ!!!!!」
「こっちみんじゃねえ!!!ばかやろう!!!!」
昼に食べたハムタマゴロールのせいか、腐卵臭のするおならがでて、部屋は煙草の煙と腐卵臭で満たされ、とっても臭かった。
人の前でおならをしないのは、臭いからというすごく単純なことにきづいたのはずっと後のことで、その時のぼくは、へにょこのそのきたないものをみるような蔑んだまなざしに、ブチギレ、我を忘れていた。
バチンと、ぼくはへにょこのほほをたたいた。
バチンと、へにょこはぼくのほほをたたいた。
バチンと、ぼくはへにょこのほほをたたいた。
バチンと、へにょこはぼくのほほをたたいた。
バチンと、ぼくはへにょこのほほをたたいた。
バチンと、へにょこはぼくのほほをたたいた。
バチンと、ぼくはへにょこのほほをたたいた。
バチンと、へにょこはぼくのほほをたたいた。
バチンと、ぼくはへにょこのほほをたたいた。
バチンと、へにょこはぼくのほほをたたいた。
じんじんと、手がしびれて、ぼくはへたり込んだ。
へにょこは、いつもの位置に座り、テレビの方を向いた。
そして、いつものようにごはんをたべ、おさけをのんで、まぐわった。
へにょこが寝たころ、僕はまだ眠れずにいて、震えていた。
はじめて、ひとをたたいた。悪臭のする部屋で、一定のリズムで手と頬に痛みが走る感覚、ただひたすら、何も考えず、一定のリズムで、一定のリズムを刻む、初めてのビート、音楽の体現、動物、ぼくは、動物で、どうしようもなく、野蛮な動物だった。
しばらくすると、ミルク色の朝が来て、白い光を部屋がつつむんだけど、
今日は虚無がこなくって、本当の孤独を感じた。
今までで一番長い朝、震えがとまらない。
ぼくの体中にあいた穴からは、毎日くそがでて、その黒い穴にそこはなく、毎日毎日生きてる限り、臭くて汚いものがでてくる。
そんな醜い動物を、太陽から生まれた白濁のベールはやさしく包んで、鳥たちは美しいうたを奏でる。
このまま浮遊して、宇宙まで連れて行ってくれと、ぼくはお願いした。
だれにかはわからない。だれでもないだれか、ぼく以外の誰か。
いままで、なにげなくトイレでうんこやらしっこやらげろやらをぶちまかしていたぼくは、なんでそんなことをするのかわからないけど、わからないから、当たり前だと思っていたけれど、なんとなく、わかったきがした。説明はできないけど。
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