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返り討ち

「魔具ね~……。ってことは、手練れだってことかい。とりあえず、早いところ縛るよ」

「へい! 今朝はよくもやってくれたな~。こいつらが起きたときが楽しみだぜ! 」


 俺たちが寝たふりをしていることも知らずに二人はだんだんと近づいてくる。


「そうは、いかんのぅ。縛られるのはおぬし等の方じゃ」

「そうです! 両手を頭の上にあげて投降しなさい」


 爺とルーデルがそう言って立ち上がった気配がしたので、俺とティリアは起き上がった。

 起き上がって、件の人物を見てみると、リリスとリリスの場所まで案内させた細目の男が顔に驚愕を張り付けながらこっちを見ていた。

 リリスはその右手に鞭のようなものを持っている。おそらく先ほど言っていた魔具なのだろう。

 あんなに清楚でお淑やかだったリリスがこんな性格だったことにショックを受けるが、こいつは魔具を使えるようだし俺たちの陣営に加えるのはいいかもしれない。


「2対4ではそちらに勝機はないだろう。おとなしく投降して、俺の部下にならないか? 」

「何言ってんだい? いくら魔具使いがいるって言ったって、そこのガキだけだろ。こんなガキにあたしが負けるわけないだろ? 」


 どうやら、リリスはルーデルのみが魔具使いだと勘違いしているようだ。確かに、細目の男を追い詰めていたのはルーデルなので、勘違いしてもおかしくはないだろう。

 リリスと細目の男は、俺が黙っているのを肯定と受け取ったのか、ニヤニヤとしながら見ている。


「姐さん! あそこの女はもらっていいですか!? あのデカい胸を揉み解してやりたいとおもってたんですよ! 」

「程ほどにするんだよ! 商品価値が無くなっちゃ意味ないからね! 」

「あ、あんたたち! 何言ってんのよ! 私はあんた達なんかに捕まらないわよ! 」


 どこの山賊も同じ考えを持つのか、ティリアは今回も目をつけられたようだ。まぁ、かわいい顔立ちに大きな胸だから狙われても仕方ないのかもしれないが、俺の部下を自分の者のように語られるのは不快だ。


「ルーデル、一人でもリリスを倒せるか? 」

「ご命令とあらば! 」

「よし、リリスはお前が逆らえなくなるくらいに潰せ。あの男は、ティリア、お前がやるんだ」

「あたしが!? まぁ、いいけどね」


 相手はルーデルの事を心底なめているようなので、ルーデルにリリスを潰させ、ティリアの力を見るために、雑魚そうな細目の男をあてがう。

 ルーデルはいつも通りナイフを大剣へと変え構えた。それに対しリリスは鞭を持ちながら何かを呟くと、鞭の周りをバチバチと黄色いものが飛び散りだす。


「あたしに一人でかかってくるのは構わないけどねぇ。あたしの鞭は一手でも当たったら体が動かなくなるすぐれもんなんだよ! アンタみたいなガキがあたしに挑んだことを公開させてあげるよ」

「戯言は私に勝手から行ってくれますか? 」


 ルーデルの言葉にイラついたのかリリスが顔を少し赤くしながらルーデルにとびかかり鞭を撓らせる。黄色い閃光が飛び散る鞭がルーデルの体に当たりかけるが、剣を盾にすることによって防ぐ。


「グアアアアァァァァ! 」

「アッハハハハハ。剣なんかで防げないんだよ!あたしの鞭は! 」


 防いだと思ったが、なぜかルーデルが膝を屈した。その様子をリリスは嗤いながら見ている。


「ルーデル……。爺と交代するか? 」

「いえ! この程度でジーク様に仕えることは出来ませぬ! もう少し、私に任せてください! 」


 リリスはルーデルがやせ我慢していると思っているのか、さらに大きく嗤いだすが、ルーデルは大剣地面に刺すとさらに拡大する。どんどんと大剣が大きくなり、ルーデルの体が持ち上がっていくが、さらに大きくしていく。


「何してんだい? 」


 リリスもその様子を見てさすがに嗤いを伏せ、唖然とした様子で呟く。しかし、まだルーデルは大剣を大きくしていく。

 最終的には50mは上にルーデルが昇っただろうかというところで、止まった。


「リリス! 今なら、降参を聞き届けてあげますがどうしますか? 」

「どうもこうも、ただ剣を大きくしただけで何をいきがってるんだい! 寝言は寝ていいな! そもそも、今の状態だったらあんたのご主人様をねらい放題だよ! 」


 リリスはそういうと、俺を舌なめずりしながら見てくる。すかさず爺が俺の前に出て庇う動きをする。


「ルーデル、いいからやれ」


 俺が、ルーデルに指示を出すと、ルーデルが勢いよくリリスの方へ倒れていった。剣が地面に突き刺さっているとはいえ、巨大化した剣には耐えられず、リリスの方へと50メートルはある大剣が倒れていく。


「え? なにこれ……。た、たすけて。降参だよ! もう、あんたらを狙わない! いや、部下にでもなんでもなるから止めて! 」


 かなりの質量がある物が上から落ちてくる恐怖にリリスは地面に腰を抜かしている。気のせいか少し股間の部分が濡れているような気すらする。

 それでも、ルーデルの大剣は止まらない。確実に、リリスの体を両断……いや、圧殺しようと落ちていく。


「ルーデル! 止めろ! 」


 俺は、丁度いいかなと思いルーデルに止めるよう指示を出す。それを聞いたルーデルは剣を瞬時に縮めることで、大剣を止めた。


「リリス、俺の下につくんだな? 裏切ったら、お前の首をはねて体をミンチにしてやるから覚えておけよ? 」

「わ、わかったよ……」


 リリスに近づいていき話しかけると、震えながら首を振る。リリスはやはり、少し漏らしていたようで、股間部分が濡れているが、気にしないでやろう。


「そういえば、ティリア達はどうなったんだ? 」

「あんた、私にあの男を倒すよう言っておいて見てなかったの!? もうとっくにやったわよ」


 ティリアを見てみると、少し頬を膨らませて拗ねていた。ティリアの横では、ロープでグルグル巻きにされた細目の山賊が項垂れている。

 ティリアの実力を見ようと思っていたのに、またしても見損なってしまった……。まぁ、簡単に男を倒していることから、それなりに腕は立つようだ。


「ごめんごめん。ティリアの相手は雑魚だったから、ティリアなら簡単に倒すだろうって信じてたから見てなかったんだ」

「え? 信じてくれてたんならいいわよ……。って、ルーデルがこっちを睨んできてるんだけど、何とかしてよ! 」

「ふぉっふぉっふぉ。ルーデルはジーク様を取られて拗ねとるだけじゃ、気にするな」

「誰が!? 」


 あっちを立てればこっちが立たず。ティリアに一方的なライバル心を抱いているルーデルには後で、構ってやるとしよう。


 リリスと細目の男を見ていてわかったが、やはり一ッ目とは関係なさそうだ。もし、関係があるんだったら、新たに出してきても可笑しくないし、リリス自身がこんなに弱いわけもない。

 化け物について、調べるために暗黒の大陸まで急がないといけないなと思いつつ、今日はリリスと細目の山賊を縛って眠ることにした。

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